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    nicola731

    @nicola731

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    nicola731

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    若顕光殿と道満の捏造小話。多分けものっくす晴道の閑話みたいなもの。顕蘆(顕道)。

    #顕蘆
    dazzlingReeds

    顕光殿の酒癖がこれくらい性質悪かったらイヤだなぁという妄想。顕蘆(顕道) 年若い故なのか、顕光はあまり酒癖が良いほうではない。だから普段から気を付けているのだが、これまで上手くいったことなど一度もない。

     顕光の邸宅で月見の宴を開くことになって当日は多くの客が訪れた。白拍子もやって来て、賑やかで華やかな、大貴族の邸には相応しい宴だった。代替わりして数年経ったばかりの若造が亭主を務めるものであっても客は寛大だった。酒が飲めて歌い踊る女共が見られたら彼等は満足なのだった。
     訪問客に一通り挨拶を済ませた顕光は上座で脇息に体を預けて、酒を飲み出した。白拍子達は誰も彼もが美しく、良い声をしていた。だが彼は些か物足りなかった。柔らかくしなやかな肢体も、張りのある麗しい声も、顕光は既に最上のものを知っている。だから何だか物足りない。元服する前からの知己である法師陰陽師のほうがずっと良い。
     顕光が自分を慰めるかのように酒を舐めていると、近い席にいた公卿が話し掛けてきた。
    「顕光様は気も漫ろなようでいらっしゃる」
     からかうようなその声に顕光は表面上の機嫌を取り繕う。適当に女達を褒める。酒を勧める。取り留めも無い話をする。季節の話をしていたはずがいつの間にか巷の話題へと移っていった。
    「そういえば、顕光様にはお抱えの陰陽師がいるとか。それも大層美しいそうで」
     その言葉に顕光は曖昧に微笑んだ。知己の法師陰陽師は吉祥天のように美しい。そして聡明で才知に満ちている。だが顕光はそんな友人を自分のものであるように見せびらかす趣味は無かった。
     亭主の仄明るい微笑に、公卿は何を勘違いしたのか野卑た言葉を口にした。
    「法師とは名乗っていてもその実は歌比丘尼と大差が無いと。褥にも侍らしているのでしょう? 羨ましい限りです」
     すっかり酔いが回っていたのだと、顕光は思った。気付けば彼は立ち上がっていて、光るような顔に笑みを湛えたままその公卿の膳を思い切り蹴飛ばしていた。乗っていた料理は床に飛び散り、杯は砕けて膳は二間近く飛んでいった。白拍子の舞も歌も止まってしまい、室内には静寂が満ちていた。
    「もう帰って良いぞ」
     顕光の穏やかな声だけが響いた。公卿は呆然と彼を見上げていたので、仕方ないというように顕光は溜息交じりにしゃがむ。それから檜扇で自分の肩を叩きながら気怠げに言った。
    「帰って良いと言ったんだ。舐めた口利きやがって、呆けが」
     公家は知らず知らずの内に自分が犯した失態を理解できないまま屋敷から逃げ帰った。暫く客や白拍子は静まり帰っていたが、顕光が「おい」と女の一人に呼びかければすぐに元通りになった。



     宴も酣となり客は帰り下女達も眠りに就いた頃。顕光はいつ会っても美しく化粧を施している友人を呼び付けた。持たされている呪符に「道満よ」と語りかければ、すぐに法師陰陽師は屋敷へとやって来た。不浄門を飛び越えて、顔に喜色を湛えている道満は「何用で御座いましょう」と恭しく彼に礼をする。家主は道満を室へと上げてやり、飾られている琵琶を示して奏でるように頼んだ。
     てっきり急な依頼かと思っていた道満は一瞬虚を突かれたが、すぐに琵琶を手に取った。顕光は金払いが良いし相手をしていても不愉快な気分にはならない。だから少しばかり贔屓してやっていた。
    「さて、何をお弾き致しましょうか」
    「適当に頼む。今日は酒で失敗してしまってな、慰めてくれるような歌物が良い」
    「でしたら歌などではなく褥にてお慰めを」
    「良い。何か歌ってくれ。それで十分だ」
     ぐったりと頭まで脇息に預けた顕光は長い息を吐く。寝支度も済ませたのに眠れず、道満を呼んだ。情けない自分に嘆息が止まらなかった。道満が静かな調子で弦を弾く。美麗な歌声を顕光だけに聞こえるように、音を押さえて歌う。
     顕光は月と蝋燭の明かりに照らされる道満の姿に見入り、琵琶の音色とその歌に聞き入った。そしてあまりに多くの人間が彼を賞賛しないことに対して憮然とした気持ちになった。
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    にし乃

    REHABILIいんこさんよりアイディアを頂きました、『狭いロッカーに閉じ込められてむらむらむんむんしてしまうまだ付き合っていない五夏♀』です。好みで呪専時代の二人にしてしまいました。むらむらむんむんはしなかったかも知れません、すみません…。
    拙いものですが、いんこさんに捧げます。書いていてとっても楽しかったです、ありがとうございました!
    とても短いので、スナック感覚でどうぞ。
    In the ×××「元はと言えば、君が帳を下ろし忘れたせいじゃないか!何で私までこんな目に!」
    「うるせぇ、今は口より足を動かせ!」

    特級の二人は、呪専の敷地内を並んで激走していた。

    「待て〜!!」
    「待〜て〜!!」

    担任である夜蛾が放った、呪骸の大群から逃れるために。

    「チッ、しつけーなぁ!」

    呪骸達が悟と傑を追いかけくる理由は一つ、彼らの親(?)が大変にお冠だからである。
    事の発端は昨日の、二人の共同任務にあった。現場は三年前に廃業し廃墟となったコンクリート工場であったのだが、悟が帳を下ろし忘れ、彼の手加減なしの『赫』と傑が繰り出した一級呪霊の容赦ない攻撃が営業当時のままにされていた大きなタンクを破壊してしまったのだ。
    住宅街からは離れた場所にあったとは言え、空気が震えるような爆発音に周囲は一時騒然となり、野次馬達や緊急車両の他に、上空には新聞社やテレビ局のヘリコプターなどもやって来る大騒動となった。
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