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    きじと ら

    @lh0_w3のきじとら。です。細々とこっちに文をあげるかも

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    きじと ら

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    放置子ネタジャミカリ♀ 続き。モチベを上げるために途中であげます。

    あとどれくらい朝が来るのだろうか?
    朝日が差し込む部屋でぼんやりとそんなことを考える。

    彼が私の前から居なくなって何度朝を迎えたか分からない。

    連絡を取らないと決めたは良いが、ふとした時にやっぱり彼の声が聞きたくなる。声を聞くと今度はきっと会いたくなってしまう。

    ギュッと彼からもらったラッコのマスコットを握りしめる。

    今日も彼が居ない一日が始まる。


    ★★

    「あ!見ろよラッコちゃんだ」
    「超可愛いな」
    「せっかく電車が一緒なんだから話しかけてみようかな」

    最近電車に乗っていると「ラッコ」という単語をよく聞く気がする。それが何なのか気にならないと言ったら嘘になるが、いきなり知らない男子校生に話しかけるのも変なので聞き流す。
    朝は電車が混んでいて辟易する。鞄をギュッと握り締めて電車から降りた。

    私は高校3年生になった。
    あれから色々はあったが、何とかやっていけた。
    あれから色々はあったが、何とかやっていけた と思う。母さんはジャミルが引っ越した翌年に子どもができて再婚した。私は邪魔(今に始まった話ではないけど)になったため祖母のお世話になることになり、少し離れた所に引っ越した。その時に一度だけジャミルに電話をかけてしまったが、それっきりしていない。
    今は以前よりは落ち着いた良い生活を送ることができているのでその必要もないと言うのもあるけど。
    幸いジャミルにやめてと言われた時間を売る行為もせずにここまで来れているから上々だろう。

    今の悩みは進学をするか就職をするか だ。祖母は好きにしなさいと言っているが、やはり気が引ける。前世の自分がどれだけ恵まれていたかと何度目か分からない振り返りをしている。

    ジャミルともっと話しておけばよかった。彼が何学部に通っているのか、そんな事も私は知らない。よって今彼が何をしているのかも、分からない。彼がどうしていたが少しでも知っていたら参考にできたかもしれないのに。

    「カリム!おはよー!今日、放課後遊びに行かない?」
    とんと背中を軽く叩かれた。振り返ると友人が快活に笑っている。

    「ごめん、私バイトがあるんだ」
    「またぁ?先生にバレないようにね?」

    友人の忠告に笑顔で答える。金銭的なことを考えると、やっぱり就職だよなぁ。進学はしてみたいけど。

    ―勉強して働けるようになってから払ってくれ。出世払いだー

    ジャミルの言葉を思い出す。きっと彼は返せなんて言わないだろうが、それで良いのか迷っている自分もいる。
    お金を返すと言う名目で彼に会いに行けば、左の薬指に指輪をしているかもしれない。それを見たら彼との距離感も分かるかもしれない。

    「ね、カリム。この前告白されてたのに何でふったの?」
    「あー…」

    友人の質問に少しに悩む。少し間を置いて友人は言いにくそうに口を開いた。
    「前から思ってたんだけどさ、そのラッコのマスコットをくれた人の事が忘れられないとか?」

    少し古くなってきたラッコのマスコットをチラリと見てジャミルの事を思い出す。
    「まぁ…そう。」
    「え!?」

    目を丸くした友人が私を覗き込んできた。そんなに驚くことだろうか?

    「死んだとか!?」
    「縁起でもないこと言うなぁ。多分元気だよ」
    「遠くにいるとか?」
    「んー。どうだろうなぁ」

    興味津々な友人に苦笑いをして歩調を早める。

    「ちょっと詳しく聞きたいんだけど」
    「詳しく…そうだなー。私にとって王子様みたいな存在だな!とにかくかっこよくて…小さい頃に何度も助けてくれたんだ!」
    「それ妄想じゃなくて?写真とかないの?」

    ジャミルほどの人はそうそういないから、妄想と思われても仕方がないかもしれない。あはは と声を出して笑うと友人は不満げに頬を膨らませた。

    「カリム、もったいないよ。今が一番楽しい時期なのに彼氏もつくらないなんて」
    「そういうのピンとこないって言うか…まだ早いかなって」

    正直、男の人と付き合うと言うことがピンとこないし昔の経験を思い出して二の足を踏んでしまう。それに加えてジャミルの顔がチラついてしまいダメなのだ。
    もし、ジャミルと再会して付き合えたら なんて妄想もしたことがある。妄想しただけでも幸せすぎて恥ずくなり、結局考えるのをやめた。

    「一回一緒に会いに行こうよ。手がかりとかないの?」
    「…ラッコの中に連絡先は入ってるけど、良いんだ。もう迷惑はかけたくないし…」
    「なんだと!?宝を持て余すんじゃあない!」

    むぎゅうと友人がラッコを捕まえた。あまり手荒に扱って欲しくないが、やる気に満ちた目を見て諦めた。

    そういえばジャミルはどうしてラッコにしたんだろう?素朴な疑問を今更抱いた。

    「カリムだって本当は会いたいんでしょう!?」
    「年上の人だからもう結婚してるかも」
    「なるほど!じゃあ、こっそり見に行こう!そうしよう!ね!今のままじゃあカリムが先に進めないよ」

    見に行くだけ。それは魅力的な言葉だった。無言で頷くと友人は満足そうに頷いた。

    ★★

    結局その週の日曜日に行くことになった。見に行くだけだと言うのにおめかしをしてしまう自分に矛盾を感じたが、友人はそれで良いと笑った。

    ジャミルは今何をしているのだろうか?私に気がつくだろうか?もう結婚しているのだろうか?何の仕事をしているのだろうか?
    もし彼が私に気がついたら?迷惑だと思われないだろうか?
    電車に乗っている間、いろんな疑問が頭を駆け回った。
    しばらく悩んで自分の事ばかり考えていたことに気がついてため息をつく。彼が元気に楽しくしていれば良いじゃないか。
    前世と違い、私に縛られず好きな仕事を好きなように頑張っていてくれるならそれで良い。

    「カリム、着いたよ!」

    友人に手を引っ張られて電車から降りる。
    彼の家は駅から歩いてすぐだ。タイミングよく会えるとも思えないけど と悪い方に思考が偏っていく。

    「へ?」

    駅を歩いて数分、スマホで電話をしながら歩いている彼が目の前を通り過ぎた。

    急に立ち止まった私に友人が「どうしたの?」と怪訝そうにする。

    「いた…じゃみる」
    「は!?歩いて5分も経ってないのに!?どこどこ!?」

    キョロキョロとする友人に指差して教える。

    「あの人?」

    コクコクと頷いて答える。元気そうで良かった。それに安堵していると、彼は女の人と合流して歩き始めた。
    「あー」
    友人のテンションが一気に下がるのが声で分かった。

    金髪の綺麗な女性だった。ショックじゃなかったと言えば嘘になるけど、彼が幸せそうで良かった。
    これが私の望んでいた事だ。良かったじゃないか。じわりと視界が滲んでいく。

    「カリム…」
    「うん、ありがとう。来てよかった。元気にしているのが見れて安心した…」

    涙が溢れないように下を見ようとした瞬間。

    彼と目があった。

    ヤバい。久しぶりに会うのが泣き顔なんて最悪だ。
    「ごめん!」
    「は!?」
    咄嗟に友人の手を引いてちょうど来ていたバスに飛び乗る。
    「え!?カリム?あの人こっちに来てるよ!?」
    「気のせいだと思う!」

    ジャミルが来る前に扉が閉まる。それに安堵していると再び目があった。


    「………」

    昔と変わらない優しいチャコールグレーの瞳が私を見ている。あぁ、やっぱりダメだ。彼を見るだけで終わるなんてできない。会って話したい。抱きつきたい。昔のように頭を撫でてほしい。
    でも、それはダメだ。彼には彼女がいる。

    咄嗟にバスに乗って正解だった。乗らなかったら、彼女が横にいるジャミルと話さなければならなかった筈だ。そんなのうまくできる自信がない。

    でも、どうして気がついたんだろうか?
    どうして走って来てくれたんだろうか?

    ドアにそっと手を触れて彼を見つめる。

    彼は初めこそ驚いた表情をしていたが、すぐに腕組みをして呆れた表情をした。
    そして何かを指差して口パクで何かを伝えてくる。

    それが何かが気になってジッと見る。指差した先は恐らく行き先表示だ。

    ―待っていろ―

    口の形はこれな気がする。

    「ど、どうしよう!?ジャミルが来ちゃう!」
    「え!?それって悪いの!?」

    理解が追いついていない友だちに「この顔で会いたくない」と言うと、あっさり納得してもらえた。

    「でも、カリム…」

    「何?」

    言いにくそうにしている友人の次の言葉を待つ。

    「次のバス停、すぐなんだ」

    友人がそう言った途端次のバス停を告げるアナウンスが流れ始める。



    都会のバス停の距離はどうやら短いらしかった。
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    Replies from the creator

    きじと ら

    MAIKING🐍☀️
    某漫画パロ。死んだ☀️の記憶を🐍が見る話。
    そのうち続きを書くかもしれない
    死後の脳を取り出しスキャンをする事で死の直前に何が起きたか、その人物の視覚を通してみることができる。

    良い技術だと、今まではそう思っていた。正確には目の前の彼の遺体を目にするまでは。
    昨日まで元気に動いていた彼は今、保存庫の中で眠ったように死んでいる。死因が分からないため脳をスキャンする事を当主が決めてしまったのだ。

    生き返るかもしれないと、そう思えるほど彼の遺体は綺麗で美しかった。キスのひとつでもすれば彼は再び目を覚ますんじゃないかと、そう思うほどに。
    「嫌だ!絶対に嫌だ」
    遺体に覆い被さり子供のように泣きながら駄々をこねる。
    「ジャミル」
    「コイツの体に傷なんかつけたくない。もう散々痛い目にあったんだ。やめてくれ」
    バシンと力任せに父の手を振り払うと、周囲から啜り泣く声が聞こえてきた。
    「死んでまで苦しめなくてもいいだろ!?」
    「ジャミル、これも当主様が決めた事なんだ。お前だって本当は分かっているんだろう?どうしてカリム様が殺されなければならなかったのか、犯人は誰なのか突き止めなければならない。これはアジーム家の為なんだ。カリム様も分かってくれる」
    父が言っている事は正論なのだ 1500