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    きじと ら

    @lh0_w3のきじとら。です。細々とこっちに文をあげるかも

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    きじと ら

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    🐍☀️
    某漫画パロ。死んだ☀️の記憶を🐍が見る話。
    そのうち続きを書くかもしれない

    死後の脳を取り出しスキャンをする事で死の直前に何が起きたか、その人物の視覚を通してみることができる。

    良い技術だと、今まではそう思っていた。正確には目の前の彼の遺体を目にするまでは。
    昨日まで元気に動いていた彼は今、保存庫の中で眠ったように死んでいる。死因が分からないため脳をスキャンする事を当主が決めてしまったのだ。

    生き返るかもしれないと、そう思えるほど彼の遺体は綺麗で美しかった。キスのひとつでもすれば彼は再び目を覚ますんじゃないかと、そう思うほどに。
    「嫌だ!絶対に嫌だ」
    遺体に覆い被さり子供のように泣きながら駄々をこねる。
    「ジャミル」
    「コイツの体に傷なんかつけたくない。もう散々痛い目にあったんだ。やめてくれ」
    バシンと力任せに父の手を振り払うと、周囲から啜り泣く声が聞こえてきた。
    「死んでまで苦しめなくてもいいだろ!?」
    「ジャミル、これも当主様が決めた事なんだ。お前だって本当は分かっているんだろう?どうしてカリム様が殺されなければならなかったのか、犯人は誰なのか突き止めなければならない。これはアジーム家の為なんだ。カリム様も分かってくれる」
    父が言っている事は正論なのだろう。カリムだってアジーム家のためだと言えば快諾するはずだ。
    でも、だからと言ってそれが何なのだろうか?
    生前は誘拐され、毒を盛られ、最後には呪い殺された。
    そんな彼が死んでまで痛い思いをしていいはずがない。
    魔法でも何でも駆使して犯人を探せば良い。その為の努力なら俺は惜しまない。
    それなのに、だ。
    俺に課された任務は彼の脳の情報を研究員と一緒に見る事だった。大半を一緒に過ごした俺なら気がつくこともあるだろうと言う、なんとも言えない理由だ。

    「嫌だ!ダメだ!カリムは」

    俺が日々整え続けた傷みのないパールグレーの髪を切り落とし、形の良い頭に鋸を入れるなんて悍ましい。そんな事あってはいけない。

    「死んだ人はもう戻らないんだ!お前がしないなら他の者がするだけだ。帰れ」

    痺れを切らした父の一言に奥歯をぎりっと噛み締める。俺以外の誰かが彼の記憶に触れるのも許せない。
    俺たちはアジーム家の枠組みの中でしか生きることができない その現実に改めて嫌気がさした。
    枠組みの中で生きなければいけないなら、その中でマシな方を選ぶしかない。
    そろりと彼の柔らかな頬に指を這わせる。

    「やれば……いいんだろ」

    薄い唇が開いて呼吸をする事も、馬鹿みたいに笑って俺の名前を呼ぶ事ももうない。
    彼に課された最後の役割は「どうして死んだのか」アジーム家の次の跡取りに知らせることだけだ。
    そして俺はそれを伝えなければならない。

    傷のない彼の額にキスを落とす。きっと次に会う時はこの額に線が入っているのだろう。
    いや、それとも丸坊主にされているのだろうか?

    どちらにせよ【いつも通りの姿】のカリムとはもう会えないだろう。

    「ごめんな」

    最後の最後まで守ってやれなくて。そんな言葉を人前で言えるはずもない。二度とガーネットようにキラキラしたあの瞳が俺を見ることもないのだ。

    もう一度彼の体を抱きしめるように覆い被さったが、いつものような暖かさはない。

    彼は死んだのだ。それも何者かの手によって。

    そして何があったか知るために死後も体を痛めつけられるのだ。その一端を自分が担わなければならないのが耐えられないが、誰かにその役割を取られる方が耐え難いのだから仕方ない。

    そっと体を離して彼の体をもう一度見る。

    どうか、死んだ彼に痛みが届きませんように。俺が最後に出来る事は、ただそう願う事だけだった。
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    きじと ら

    MAIKING🐍☀️
    某漫画パロ。死んだ☀️の記憶を🐍が見る話。
    そのうち続きを書くかもしれない
    死後の脳を取り出しスキャンをする事で死の直前に何が起きたか、その人物の視覚を通してみることができる。

    良い技術だと、今まではそう思っていた。正確には目の前の彼の遺体を目にするまでは。
    昨日まで元気に動いていた彼は今、保存庫の中で眠ったように死んでいる。死因が分からないため脳をスキャンする事を当主が決めてしまったのだ。

    生き返るかもしれないと、そう思えるほど彼の遺体は綺麗で美しかった。キスのひとつでもすれば彼は再び目を覚ますんじゃないかと、そう思うほどに。
    「嫌だ!絶対に嫌だ」
    遺体に覆い被さり子供のように泣きながら駄々をこねる。
    「ジャミル」
    「コイツの体に傷なんかつけたくない。もう散々痛い目にあったんだ。やめてくれ」
    バシンと力任せに父の手を振り払うと、周囲から啜り泣く声が聞こえてきた。
    「死んでまで苦しめなくてもいいだろ!?」
    「ジャミル、これも当主様が決めた事なんだ。お前だって本当は分かっているんだろう?どうしてカリム様が殺されなければならなかったのか、犯人は誰なのか突き止めなければならない。これはアジーム家の為なんだ。カリム様も分かってくれる」
    父が言っている事は正論なのだ 1500

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