pktw大嫌いだ。
ふわりと足に擦り寄ってきたそのイーブイは悪くない。
ただ、アイツとお揃いなのが嫌なだけだ。
「ジャミルとお揃いだ!」
屈託なく笑うカリムの笑顔に腹が立つ。もっと小さい頃にこのポケモンが貰えたら、俺もカリムのように喜べたのかもしれない。
俺の元から離れてカリムのイーブイと駆け回り始めた俺のイーブイをうんざりと眺める。
まるで「お前たちもこうであれ」と諭されているようだ。もちろんコイツらに他意がないのは分かっている。だけどそう思えてしまうのだ。
最初のポケモンはどれにしようか、ずっと夢見ていた。別にイーブイでも構わない。
ただ[カリムとお揃いにするために用意された]イーブイが嫌なんだ。
「このイーブイは複数の進化系があります。だから、カリム様やジャミル次第でこの子たちの将来が決まるんですよ」
見透かしたような、ただの説明のような商人の言葉が脳にこびりつく。唯一の救いはそこなのかもしれない。
「イーブイ!よろしくな!」
ギュッとイーブイを抱きしめるカリムの頭のてっぺんを見下ろす。
俺が育てたらブラッキーになるのだろうな。そしてカリムが育てたらエーフィかニンフィアだろう。別にブラッキーが悪いわけではないけど、そんな気がする。実際、コイツに構ってやれるのは夜が多くなるだろうし。ピンク色のニンフィアを連れて歩くよりはブラッキーが良い。
いや、イーブイの進化系で考えればブラッキーが一番[俺]っぽいだろう。砂漠の月夜を思わせるあの模様は美しくて好きだ。
だからブラッキーに不満があるわけではない。目に見えない決まったレールに乗ることが嫌なだけだ。
そこまで考えてため息をつく。そもそもカリムが[お揃い]に拘って進化の石を持って来たら、それ以前の問題になってしまう。
「お前は何になるんだろうなぁ。楽しみだな!」
今はカリムはそう言っているが、いつ気が変わるかも分からない。グッと奥歯を噛み締めると足元にふわりとした何かが触れた。
「ブイ?」
心配そうに俺を見上げているイーブイにハッとする。不満ばかりでコイツのことを考えられなかった。
「あぁ、すまない。考え事をしていた」
別に謝る必要もないのかもしれない。だけど、否応なしにここに連れて来られたコイツが俺と重なってしまった。
「名前、どうしようかな?」
イーブイを抱き上げると、彼は嬉しそうな声を出した。
「俺はもう決めたぜ!」
「もう?」
俺と同じようにイーブイを抱き上げたカリムはニコニコと笑いながら「ソルテだ」と答えた。幸運を意味する言葉をつけるのが、なんだかカリムらしい。
ソルテと被らないような全く違う名前がいい。
進化先も想像できているのだから合わせてもいいかもしれない。じっとイーブイの目を見つめる。
「ヨル なんてどうだ?」
それがブラッキーにうってつけの名前のような気がした。