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    のかこ

    黒晶 大ネコ マイクー 銀ギィ 右晶

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    のかこ

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    書き終わる気がしないので出しますね

    #黒晶
    blackCrystals

    いつぞやの死ネタの黒曜目線手紙。

    自分の死を自覚した時最初に頭に浮かんだのはいつも隣にいたあいつの存在だった。

    目を覚ますと隣にはすやすやと気持ちよさそうに眠る晶。俺は晶の柔らかい髪を軽くなでる。長年一緒にいたがもうこれが最後なのだと思うと切なさや悲しさとは違った何かが込み上げてくる。名前をつけずにいたそれはもう永遠に名前がつくことは無い。
    静かに布団からでてベランダでタバコを吸う。
    まだ上がりきらない太陽はとても赤くて、まだ藍色の空を派手に染め上げていく。

    準備はもう終わった。あとは俺が晶と決別をして、その日が来るのを待つのみだった。
    空が明るくなっていく。朝日がベッドにも差し込み晶が眩しそうに唸る。俺は晶の方を振り向くが起きる気配は無さそうだ。
    俺は空になったタバコの箱を握りしめ、残りの人生をどうするか、晶が起きるまで考えることにした。

    残り7日。

    今日は最後の出勤を終え、居酒屋へ入る。中には水色の髪をゆらゆらと揺らしながら鼻歌を歌う男がいた。
    「晶、」
    その男の肩をぽんと叩くと晶はふにゃりと笑ってこちらを見る。
    「こくよー、おっそいんだけど!、」
    晶の手には酒があり、もう既に酔い始めているようだった。俺は軽いツマミをいくつか頼み、カウンター席に座る晶の隣に俺も座った。
    晶は会社の愚痴だの、またバンドを始めるだの、色々なことを喋る。俺はそれをただ頷きながら聞いていた。こんな日々ももう終わりを告げようとしてるのだと思うと今までくだらないと思いながら聞いていたりした晶の愚痴すらも心地のいい音色に聞こえた。
    「…黒曜酒の進み悪くない?てか、テンション低くね?」
    顔を赤らめながら晶はこちらを睨む。
    「別に。そうでもねぇよ。で?バンドがどうしたんだよ」
    俺はヘラりと笑って見せた。
    晶はじっとこちらを見る。水色と黄色のグラデーションの瞳に俺の姿が映る。
    「…わすれた。てかなんか黒曜幸せそうに笑うねなに?女?」
    じっと見つめたかと思えばそんなことを言って晶は再びヘラヘラと笑った。

    居酒屋からでて、晶の家へと向かう。いつもの流れだ。いつものごとく晶はフラフラと歩く。
    危なかっかしい。俺は晶の手を取った。
    「こくよう?」
    晶は目を丸くしてこちらを見る。
    「たまにはいーじゃねぇか」
    俺も大分酒がまわっていた。大声で笑いながら晶の手を握りしめた。
    「なんか、今日の黒曜おかしいんじゃない?」
    先程までフラフラと歩き陽気に歌を歌っていた晶大人しくなり、優しく俺の手を握り返した。

    それから晶の家に着くまで、俺たちは珍しく無言だった。いつもならお互いベロベロに酔って騒ぎ立てたり、片方が酔って酔ってない方が必死に止めたり、俺たちは騒がしかった。
    いつもと空気が違ったのだ。
    きっと晶は俺が、普段とは違うことに気づいているのだろう。
    「おい。晶、着いたぞ」
    晶の方を振り向けば晶は俯いていた。
    「…黒曜、。」
    酒のせいなのか、晶の潤んだ瞳が、少し伸びた前髪からちらりと覗いている。
    「晶?」
    「…黒曜は、その、…。あのさ、オレたちの、」
    晶の顔がみるみる赤くなっていく。
    あー、今日に限ってお前はそんなことを言ってしまうのか。今日に限って、。
    俺は今まで見たことないほど真っ赤になった腐れ縁の体を抱き寄せた。ふわりと香水の匂いと晶の匂いが混ざったものが香る。初めて抱き寄せた晶の体は想像よりも暖かく、どこか愛おしさを感じた。ふわふわの髪を撫でてやれば、最初はビクリとした晶も気持ちよさそうに俺に身を預けた。
    「…晶。俺、」
    俺が言葉を紡ぐ前に晶は俺の体から離れていく。
    「なんか!!今日の黒曜変!!!」
    真っ赤に染まった顔で晶は俺を部屋から追い出した。

    もう真夜中二時をすぎていた。俺は道路をフラフラと歩く。もう晶に会うことはない。なんとも言えぬ最後な気もするしこれはこれでいいのではないかとも思う。最後にあいつのあの顔を見れたのであればまぁ、良かったのかもしれない。
    さてさて、明日からどうしようか。俺は自宅に戻りベッドでそんなことを考えた。

    残り6日

    最初にやることは元々決めていた。俺はスターレスへ足を運ぶ。スターレスにはモクレンが踊っていた。
    「黒曜か。この時間に来るのは珍しいじゃないか。」
    モクレンはふっと笑うとまた踊り出した。相変わらずだななんて思う。俺はスターレスが営業を終えてからもよくここに足を運んでいた。なんだかんだ思い入れがあるというのもあるし、何より自分自身を1番変えてくれた大切な場所だというのが理由だろう。
    「黒曜、お前、私になにか用でもあるのか?」
    モクレンは一通り踊り終わるとこちらを悪そうな笑顔で見た。
    「ぁぁ?別に特にねぇよ」
    「今日のお前はなんだか気持ちが悪い。…どうだ?久しぶりに踊るか?」
    気持ち悪いのと踊るのがどうして繋がったのか分からないが俺はモクレンの誘いを受けることにした。
    「別に踊ってやってもいいぜ。」
    こいつはよく何年も前のダンスを完璧に踊れるなぁと思いながら共にパフォーマンスに深けた。まだここがショーレストランだった頃を思い出す。
    「…」
    モクレンがじっと俺を見つめる。
    「ふっ、やはりお前は晶の歌じゃないと踊りがちぐはぐだ。晶と同じチームで良かったな。」
    「うるせぇ」
    そうやってモクレンと思い出に浸った。
    「モクレン、やっぱり伝言残してもいいか?」
    「やっぱりな」
    モクレンはじとっとこちらを見て言った。そんなに面倒くさがらなくてもいいだろう

    俺はモクレンに伝言を頼むとスターレスを出た。

    残り5日
    俺はなんの計画も立てず街をぶらついた。やりたいことはたくさんあったはずなのにいざやろうとするとなかなか思い出すことができなかった。

    「お、黒曜じゃないか」
    久々に聞くその声のする方向を振り向くと、褐色肌に相変わらずオレンジの瞳でニヤニヤとおもちゃを見つけたように俺を見る男がいた。
    「久々だな」

    「ソテツか、久しぶりだな。」
    ソテツは俺が声をかけるなり目を見開いた。
    「お前、眉間のシワどこいったんだよ」
    そしてソテツはげらげらと笑い始めた。
    「お前、俺が話しかけるといっつも眉間にしわ寄せて如何にも話しかけんなオーラ出てたじゃねぇか」
    「そうか?」
    思い出すのはスターレスがまだショーレストランだった頃の記憶。あの頃は人を疑ったり、裏でコソコソやったり今思えば全員が異常な行動ばかりとっていてイライラすることも多々あったなと思った。


    「で?人生最後の1週間ってのはどんな気分だ?」


    ソテツはじろりとこちらを見る。
    口元は相変わらずニヤニヤと笑っていた。

    「はっ。んなもんいつもと変わんねぇ。」
    おおよそ見破られている自覚はあった。だがこいつにそんなしみじみとした話をする気などさらさらない。
    「へいへい。」
    ソテツは呆れてような、つまらなそうな返事をした。そうしてソテツは俺に肩を組んだ。

    「黒曜、久しぶりに飲みにでも行こうぜ」
    ソテツの持ち前の好奇心からくると思われるこの大胆さからなのか、俺は珍しくソテツの誘いを受けた。

    「で、お前はもう人生に満足したってか?」
    アルコールが体に染み渡り、ほどよくふわふわとした頃、ソテツはそんな言葉を俺に投げかけた。
    「さぁな」
    満足したか、そう言われてもよく分からない、というのが本音だ。実際のところ、あと5日で死ぬということ自体実感できていない。
    「…お前、晶とちゃんと話したか?」
    ソテツはこちらをまっすぐ見る。偽りのない真っ直ぐなその瞳はソテツには似合うことがなく、戸惑いすら感じさせた。
    「話すって何を。」
    「何をって、…そりゃねぇだろ。」
    ソテツは目を見開いたかと思えば俯き、額に手を当てていた。

    「お前らまだ会ってんだろ?そしたら最後くらい言ってやってもいいんじゃねぇのか?」
    ソテツはグラスに入ったワインを見つめながら俺に言う。
    「最後だから今まで通りにしたかったんだよ。あいつのシケたツラなんざ見たくもねぇし」
    「…つまり、お前は晶に死ぬことも伝えてねぇってことか?」
    「そうなるな」

    「当たり前…ねぇ。お前がいなくなる時点でお前のいういつもの晶じゃなくなるんじゃねぇの?」




    だっていつも晶の隣にはお前がいたじゃないか。



    店を出て、ソテツと別れたあとも妙にこの言葉が頭から離れなかった。
    あまりにも自分を驚かせる一言だった。晶はいつだって1人でやってのけるし俺に頼ったことなど数える程度でしかない。いつも頼って甘えてばかりだったのは俺の方だった。

    そんなことを考えているうちに夜は明け、いつの間にか残り4日となっていた。

    ベッドでひたすらに横になる。
    頭の中にいるのは晶ばかり。
    晶にとって、俺という存在は一体なんだったのか、意味もないことをひたすら考えては否定しての繰り返しであった。





    本当はわかっていたけれど。
    晶が俺に抱いているであろう気持ちなどとっくの昔から知っていた。
    けれどその気持ちに気づかない振りをしていたのは自分は晶のことをどう思っていたのか分からなかったからだ。
    晶とどうこうしたいというのはない。ただ今の関係がいつまでも続いてしまえばどれだけしあわせだとか、この先へ進むことによる恐怖だとか今思えば自分を守ってばかりでホントの意味では晶をずっと避け続けていたのかもしれない。それでもこんな自分をいまだに好いている晶に優越感を抱いていたのだろう。

    俺にまっすぐとはいえないふざけた曲線を描きながら不器用に好きを伝えては隠してをする晶。
    コロコロと変わる態度が、言葉が、愛しくて
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