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    lemon_miuchi

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    lemon_miuchi

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    軍パロ 柑橘組の過去捏造

    柑橘組のお話暖かい太陽の光を反射する海、その色を移したように広がる青空、髪をなびかせる風は、小さい頃から覚えている潮の匂い。後ろを振り向けば木々に実った果物と村の人の活気のある声。幼馴染のみかんちゃんと一緒に手を繋いで、この木々の間を駆けた事を思い出す。
    当たり前の光景があんなにも容易く、脆いものだと思い知ったのは、今でも忘れないあの襲撃の時だ。

    いつもと何も変わりない日。何の予告もなく、武装した兵士達が村を蹂躙していった。恐怖から逃げ出す人、戦う為に武器を持った人、村人を守ろうとした村長も、近所の友達も、みんな殺された。
    私とみかんちゃんは農園の茂みの中で息を潜めていた。なんでこんな事になったんだろう。ただ普通に、みんなと楽しく過ごしてきただけなのに。どうしてこんな事に…。今にも泣き出してしまいそうなみかんちゃんの手を握って、じっ、と音を立てないように息を殺した。
    「一体この村が何をしたっていうんだ!?」
    突如響いた凛々しいその声に涙が溢れた。

    「これは総統からの命令です。この村を排除しろと、そう言伝を預かっております。なので私達はそれを実行するのみです。理由などありませんよ。」
    茂みの隙間から見えたのは、ハルバードを構えたお父さんと、自作の兵器を持ったみかんちゃんのおじいさん。
    「させるものか。貴様らはここで食い止めてみせるわい!」
    その言葉を最後に、戦いの火蓋は切り落とされた。
    明らかに不利だった。敵の数は三十程いるのに大して、村の人で戦っているのはお父さんとみかんちゃんのおじいさんだけだ。
    背中合わせになって敵を倒していく二人は、まるで物語の主人公みたいでとってもかっこよくて…。
    でもどうしても神様はそれでは満足しないらしい。敵を切り伏せているお父さんの間合いに入った兵士が、お父さんの腕を切り落とした。ハルバードは宙を舞って、私達が隠れている茂みの近くに突き刺さった。
    遠くでお父さんの叫び声が聞こえる。まるで群がる獣のように立ちはだかった兵士達から攻撃を受けるお父さんを見てはいられなかった。みかんちゃんのおじいさんも重症を負っていて、敵から一方的に攻撃を受けていた。涙を流しながらその光景を見つめるみかんちゃんの目を手で覆って、目をつぶった。もうこんな悪夢は見たくない。
    「報告しておきますよ。この村で唯一立ち上がり、総統の命令に抗った無様で愚かな人間がいたってね。」

    壊れたびっくり箱みたいに笑い声を繰り返している奴らに、ふつふつと心の奥底から湧き上がるものを感じた。強く握りすぎた拳は真っ白になっていた。
    「そこの森の方も見ておけ。まだ残っている奴らがいるかもしれないからな。」
    リーダーと思わしき人が二人の兵士に命じた。そして二人の兵士がゆっくりとこちらの方に歩みを進めてきた。
    今しかない。この衝動を、今逃したらもう次はない。最後にみかんちゃんの手を強く握って茂みから駆け出した。地面に突き刺さっているハルバードを素早く抜き取って、一人の兵士に向かって振り下ろした。
    肉を裂く、切る感覚が腕に振動となって伝わってくる。切り落とした箇所からは血が吹き出して、私ともう一人の兵士に雨のように降り注いだ。
    「貴様ァ!!」
    兵士は剣を抜き取って私に向かって構えた。私も急いでハルバードを構えようとしたけど、さっきの出来事が脳裏に蘇って持ち上げられなかった。
    「れもんちゃん!」
    必死に叫ぶみかんちゃんの声を聞いて彼女の方に目を向けた。そして手に持っているものを確認して、彼女の元に走り出した。
    「逃がすか!」
    私の後を追いかけてくる兵士の足元に、コロンと橙色の果実が転がった。
    「こんなもので誤魔化そうとしても無駄だ、っ!?」
    その瞬間兵士は爆弾に巻き込まれた。まさか転がってきたみかんが爆弾だとは思わなかったのだろう。

    「危なかった〜、死ぬかと思ったよ。」
    「もう、いきなり走り出すから心配したんですよ!」
    持ってきてて良かったです、と呟くみかんちゃんを見て安心した。だけどいつまでも安心していられない。
    「みかんちゃん、ここから逃げよう!」
    彼女の返事を聞く前に手を取って走り出した。爆発音を聞いた兵士の話し声が後から聞こえて、足を早めた。
    開けた場所に出たものの、あるのは見晴らしのいい崖。高さはそれ程ないのかもしれないが、飛び降りるには勇気がいる高さだ。
    頭では飛び降りろと思っているのに足が動かない。そんな時、この場に似合わない声が響いた。
    「ねえ、復讐したい?」
    声のする方に目を向けると、漆黒の髪に海のような深い瞳をしている少女がそこに立っていた。
    「だ、誰ですか?」
    みかんちゃんが恐る恐る声をかけた。
    「私は叶、現総統の娘。クソ親父のやってる事が気に食わなくて、ぶっ壊そうと思ってるの。」
    現総統の娘と言ったその子は、嫌悪感を隠さずに私達に言葉を返した。その堂々たる姿は現総統にそっくりだ。まあ、そんなこと言ったらとんでもない仕打ちを受けそうだが。
    横に立つみかんちゃんに目を向けると、一瞬目を伏せたが、すぐに視線を戻して頷いた。
    「君の言ってることが本当なら、是非とも参加したい。信じてもいいのかな?」
    「もちろん、今ちょうど人手を集めているところなんよ。」
    途端にふわっと優しい笑顔になった彼女に驚きながらも、表情を崩さないように先を促す。
    「あの兵士達の相手は任せてよ。君達はこの崖から飛び降りて下にある洞窟に隠れていてね。」
    グイグイと私とみかんちゃんの背中を押す彼女の言葉に思わず耳を疑った。
    「今、飛び降りろって言った!?」
    「そ、そんな、こんな崖から!?」
    「大丈夫だよ。ここの崖、幸いな事にそこまで高くないし。落ちても全然平気だよ。」
    でも、と反論する私達を諸共せず、彼女は容赦なく崖から突き落とした。
    「行ってらっしゃい!」
    途端に内臓が浮いている感覚と風を切る感覚、握っているみかんちゃんの手の暖かさとハルバードの冷たさを鮮明に感じながら海水に包まれた。もちろん叫び声はあげたとも。
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