ダンデライオンからの祝福をビュウビュウとストームへイルの吹雪が痛いほど叩きつける。
「相変わらず痛いほど寒い街ですね、ここは」
「仕方ない、ここはそういうものとして受け止めてくれ」
「はいはい」
テメノスの護衛として1年以上側にいるのに硬い表情は相変わらずのオルトに軽口で返す。唯一変わったのは皺の数が最初の頃よりは減ったくらいだろうか。皺が減るくらいには心を許してくれたのだろう。
「…まもなく事件関係者への殉死追悼式を執り行います。テメノス異端審問官、追悼式式辞をお願いします」
「こういう改まったものは自分には向いていないのですがねえ。仕方ありません」
はあ、と仰々しく溜め息をつきオルトにしか聞こえない声でテメノスは愚痴を吐く。
「…では、はじめましょうか」
わざと軽口を叩き会場となっている聖堂機関の広場へと躍り出る。先程までの軽快な顔を潜めて引き締めた真面目な表情を被せれば、普段飄々とした自分の顔も多少は凛々しい顔になっているはずだ。
「聖なる焔にあつまりし信徒の皆様、また神の剣を携えし誇り高き騎士諸君。足元の悪い中お集まり頂きありがとうございます…」
おきまりの式辞の挨拶から始まり粛々と式は遂行されていった。
「ふう…」
「…疲れたか?テメノス。こんなものですまないが、これを…」
式をつつがなく終えた二人は聖堂機関内の客室で漸く休む事が出来た。式の遂行で気をはっていたテメノスにオルトはマグカップに入った温かなスープを差し出す。こういう時にコーヒーや紅茶ではなくスープ、というのがオルトの細やかな気遣いを感じられる。食事をとる気分になれなかったテメノスに、ただ飲むだけのスープは有り難かった。ちょうど良い温度と塩気が疲れた身体に染みていく。
「ありがとうございます、オルト。やっと落ち着きました。あなたのおかげです」
「…いや、自分は大した事はしていない」
謙虚な姿勢も彼らしい。だが少しだけ顔を赤らめているのをテメノスは見逃さない。テメノスから謝礼の言葉を受けたオルトは、まるで普段は怖い狩猟犬が主人にだけ甘える姿を見せるのに似ている。顔は凛々しくしているようで見えない尻尾が左右に揺れているのが見えそうな気さえしてくる。
彼を甘やかしたい気持ちもあるが、今夜はだめだ。
「…オルト、今夜は…」
「…分かってる。俺は…俺は、せめて貴方が良い夢を見れることを願っている。おやすみ、テメノス。良い夢を…」
「っ…、ええ…おやすみなさい、オルト。良い夢を…」
パタン、と扉が閉じ人の気配が遠ざかる。ただ、夜の挨拶を交わしただけなのに不安を感じるのはあの日彼と交わした最後の挨拶を思い出してしまうせいだろうか。
「…ああ、そういえば今日は何十年に一度の、流れ星が沢山落ちる日だとパルテティオがいってましたっけ」
思い出したはいいものの、客室の窓から見えるのは何処までも白が荒れ狂う景色だけだった。星どころか空すらも見えない。
「残念です。滅多に見れない美しい星空の景色を、彼と一緒に見たかったんですがね…せめて何かいい夢でも見れるように祈っておきましょうか」
一人、届くか届かないか分からない願いを呟きテメノスはベッドの中で眠りに落ちていった。
聖火よ、照らしたまえ 我らの心の影を
エルフリックの炎は邪神ヴィーデを焼き尽くしました。厄災は去ったのです。8柱の神々は力尽き長き眠りにつきました。暗闇を遠ざけるため聖火へと姿を変えて……
人間たちは明るく温かに生き続けたのです
聖火の加護と共に……
パチパチパチと、子供たちの可愛らしい手が拍手をする。
「テメノスさま、紙芝居ありがとーございます」
「こちらこそ、聞いてくださりありがとうございます」
「テメノスさまのおはなし、さいしょからさいごまでかっこよかったです」
「これはこれは、お褒め頂き光栄です」
子供たちが口々にテメノスへ紙芝居を称える感想を伝えていく。
「さあ、テメノスの紙芝居は楽しめたかな?聖火の蝋燭ですよ。火を灯し、心の中の思いを打ち明けなさい」
「おや…」
テメノスが読み終えた紙芝居を整理していると長年の親友が子供たちへと蝋燭を配っていた。
「ロイ…」
名前を呼ばれた親友がこちらをみてにこりと笑う。
…ああ、そうか…これは…
「お疲れ様、テメノス」
「……あ、あー…ありがとう……でいいのか?」
「僕の仕事、引き継いでもらって悪かったな」
「ふっ…何を今更。もう…もう終わったことだ…」
「君には苦労をかけた」
「分かってるじゃないか。ほんっっと、迷惑だったなあっ…もう…」
言いたいことは山ほどあるはずだったのに飲み込んでしまう。呑気に笑う親友をどう問い詰めてやろうかと思った所でロイは教会の出口へと歩きだす。
「あ、ちょっと…ロイ!」
「お、そうだ…テメノス、これやるよ」
ほいっ、という掛け声とともに一輪の花が自分の手に降ってきた。
「これは…ダンデライオン?」
「…綺麗だったから君にあげる、なんてのはちょっとクサいか?」
ロイが屈託のない表情で笑う。ああ、そうだった。人を疑わないこの笑顔のために自分は代わりに疑う事を覚えたんだった。
「…ははっ。まったく君らしい…まあ、もらっておいてあげましょう」
「ありがとう、テメノス。…じゃあな。聖火の加護があらんことを!」
満面の笑顔をテメノスへと向けて手を降ったあと、ロイは教会の外へと駆けていった。
ロイの後を追いかけそのまま教会の外にでると一瞬眩しい光が視界を奪う。
「…テメノス」
「え、イェルク教皇…?」
眼の前に和やかに微笑む育ての親がいた。
「なぁーんも、言わなくていい」
「え?」
「知っておる。そなたに背負わせてしまった苦しみも、真実も、過去も未来も」
「そんな、私は…」
「背負わせてすまない、そして…背負ってくれてありがとう」
「…イェルク…教皇…」
教皇の温かな瞳がテメノスを優しく見つめる。
「大切な息子二人が紡いだ未来…。ソリスティアを救ってくれてありがとう」
「…ありがたきお言葉、です…」
全てを包み込むような慈悲の笑顔を向けられてテメノスは何も言えなくなる。
「…可愛い我が息子よ、後を頼むぞ…」
「…はい。お任せ下さい」
「うむ…よい、返事だ。そなたにはこれを贈ろう…ではな、テメノス。聖火の加護があらんことを…」
テメノスの手に一輪の花を贈り、テメノスの頭を優しく撫でながら教皇は去っていった。
「…これもダンデライオン…?」
疑問に思いながら歩いていると急に雪が舞い始める。
二輪のダンデライオンを大事に抱えながら歩いているとこちらに向かって駆け足の音が響いてくる。
「ど、どど……どいてくださーーいっ!!」
ああ、ここまでくれば分かる。やっぱりなと思いながらぶつからないように少し端の方へと場所を寄せた。
ズベッ、ドベシャッ、ドガガガッと盛大な音を大合奏しながらクリックは止まった。
「…こんな勢いでぶつかられてよく無事だったなあ、私」
しみじみ思い返しながらクリックをみていると、うーんと呻きながら勢いよく立ち上がった。
「す、すみません!ぶつかりませんでしたか?!」
「…まあ、なんとかね?君はまた遅刻したんですか?」
「え?!あ、ははっ…いや、今回は間に合ったようです」
「相変わらず騒がしいですね君は。まったく…」
呆れた顔で笑っていれば気まずそうにしながらクリックが苦笑いする。
「…何に、遅れそうだったんですか?まさか朝礼ではないでしょう?」
からかうようにクリックに問えば目を右往左往しながら言い淀んでいる。
「え、えーと貴方に会いに…なんて…はは…」
「おや、それは光栄だ」
「あー…テメノスさん…ここで会えたのも…その…」
「…運命、なんて言いませんよね?」
しばし間を置き二人で目を合わせると、どちらからともなく笑い出す。
「ぷっ…ははっ…!テメノスさんと会えて良かった!…本当に」
「…私も優秀な助手を持てて楽でしたよ?」
「もうっ、楽ってなんですか!力技は全て僕に解決させようとしてたの、気づいてましたからね?」
「おやおや、ばれてましたか」
他愛ない話で小突き、笑い合う。そんなやりとりが今は懐かしかった。
「テメノスさん…」
「はいはい…」
「…僕は、僕の信じたいものへ信念を託しました。ただ、それだけです」
「クリックくん…」
それ以上もそれ以下も語らない、とでもいうようにクリックは笑った。
「…あのですね、テメノスさん」
「なんでしょう、クリックくん」
「…僕は、実は貴方に憧れて…ん、いや憧れてはいないな?……えーと、一人の人間として好きでした」
「なんで、そこは憧れていましたじゃないんですか…ふふっ、まったく」
「ははっ、憧れてはいませんでしたけど…一人の人間として、厳しくも諭すように導く貴方の姿が…好きだった」
「ありがとうございます、クリックくん」
何から伝えようかとクリックの目線が逡巡するように一瞬彷徨う。
「…オルトのこと、ありがとうございました」
「オルト?」
「彼は僕のライバルであり親友です。あの事件の後、世間の風当たりの強い聖堂機関を立て直そうとオルトが奮闘してきたのを知っています。…それをテメノスさんが支えてくれたことも」
「そんな、私の方こそ彼にはお世話になっています」
ふ、と優しげにクリックは笑った。
「オルト、いい奴でしょう?」
「そうですね。少し固くて真面目で君と同じく融通がきかないところもありますが…とても細やかな心配りにはいつも助けられています」
式典のあとに差し出された温かなスープの味を思い出す。いつもさりげなくこちらを気遣ってくれる彼の優しさは、テメノスの心にじんわりと温かな炎を灯す。
「こんな事僕の口からいうのもなんですが…オルトのことを頼みます」
「え?」
「オルトの気持ち、テメノスさんが気づいてないわけないでしょう?」
「…」
人一倍、他人の気持ちに敏感なテメノスだ。オルトから密かに熱い視線を受けていることを気づかない訳がなかった。…テメノスも同じ気持ちでいたから尚更だ。それでも、このままずっとぬるま湯のような関係でいいと思っていた。他人以上恋人未満。そんな曖昧な関係で大きな変化などなくただ穏やかに時間を過ごしていけばいいと、そう思っていた。
「テメノスさん。僕は、オルトにもテメノスさんにも自分の気持ちに正直になって欲しいです」
「クリックくん…」
「僕の大切な人達には、笑顔でいて欲しいんですよ。これから先も、ずっと」
クリックは太陽のような笑顔でテメノスへと笑いかける。その笑顔は燻っていた決断を後押ししてくれるようだった。
「ふふっ、君には敵いませんね…まったく」
「まあ、ライバルにテメノスさんの相棒役を取られてしまったのはちょっと悔しいですが!オルトなら、仕方ありません。…オルトのことよろしくお願いしますね!」
「仕方ありませんね〜」
二人は朗らかに笑いあった。ああ、きっとこれが最後だ。
「…テメノスさん、これを」
クリックから一輪のダンデライオンが手渡される。
「…ありがとうございます、クリックくん」
「テメノスさん、聖火の加護があらんことを!」
大きな声でそう告げた後、クリックはどこかへと走り去ってしまった。あ、とテメノスが思ったときには既に姿はなく手に三輪のダンデライオンと共に一人取り残されていた。
「…皆さん、言いたいことだけ言って行っちゃいましたねぇ」
のんびりと呟きながら手元のダンデライオンを見つめていると、突然一陣の風が強く吹きすさんだ。テメノスは思わず目をつぶってしまう。ダンデライオンが風で飛ばされないよう大事に抱えながら佇んでいると、風はすぐに止んだ。
恐る恐る目を開けると、そこには眩しいほどの晴天が広がっていた。
「おお…清々しいほどの青空だ」
雲一つ無い空に風がそよそよと吹いている。
「おや…?」
ふと、手元をみると三輪のダンデライオンが黄色い花びらではなく柔らかな綿毛へと変わっていた。
「いつのまに…」
ふわふわとした綿毛がテメノスの手元で気持ち良さげに揺れている。
「…たまには童心に帰るのも悪くない、か」
テメノスは、大切なものたちから贈られたダンデライオンをしっかりと持ちながら綿毛の部分を口元へと持っていく。眼の前で柔らかそうな白い綿毛がふわふわと揺れる。そのまま大きく息を吸い込むと一息に綿毛へと風を送った。テメノスの口から吹かれた風に乗り、綿毛が一瞬にして天高く青空へと舞い上がる。
「これは…なんて綺麗な…」
濃いスカイブルーに純白の綿毛が風に乗って飛んでいく。種子を抱えながらふわりふわりと次の土地を求めて彼方へと飛び去っていく。テメノスの手元から飛び立ったダンデライオンの綿毛はひとつ、またひとつと風に身を任せながら空へと吸い込まれ見えなくなっていった。
ふと、手元をみれば抱えていたダンデライオンには種子がもう残されおらず、残すは茎だけとなっていた。
テメノスがゆっくりと手を離すとそれすらも風に吹かれながら何処かへと飛んでいってしまった。
「聖火の加護があらんことを、なんてね…」
テメノスは柔らかな笑みを浮かべながら誰にともなく祈りを捧げた。
朝の光が窓を通して部屋を明るく照らす。
「……ん、朝か?」
眩しさすら感じる朝の光に誘われるようにテメノスは目を覚ました。とても静かな朝だ。普段からごうごうと吹雪の舞うストームへイルでは珍しい。
「おや、吹雪が止んでいる…珍しい」
ふと、窓の外をみてみると殆ど止まない吹雪が今朝は珍しく止んでいた。晴れてはいないものの、めったにない日差しの気配を雲の奥から感じる。
「この街がこんなに明るくみえるとは…ふふ、なにか良いことでもありそうだ」
そう一人呟きながら、テメノスは身支度を整えていく。顔を洗い、髪をとかし、部屋着からきっちりとした法衣へと身を包む。鏡でどこか乱れているところはないか確認していると、ふとなぜだか何処かへ行かなければならないような気持ちに駆られた。なぜだろうか。
誰かが呼んでいるような。
「…まさかね」
支度が済み、外套を羽織るとなんとなく聖堂機関の出入り口から外へと足を向ける。そのまま、やはりなんとなく墓地の方へと歩いていった。このままクリックの墓参りでもしようかと思った矢先、先客がいた。
「おや?あれは…」
「ん?ああ、テメノスか。おはよう」
「おはようございます、オルト」
「テメノス、なぜここに?まだ昨日の疲れが残っているだろう?もっとゆっくり休んでいてかまわないのに…」
ああ、彼のそういう心遣いが本当に心地良い。冷たい身体にスープが染み渡っていくようにじんわりと温かい。
「充分休めたのでお気遣いなく。…それに滅多にない雪のない空を拝むのも、悪くないかと思いまして」
「ああ、そうだな。確かにこんな日は滅多にない…」
二人して空をぼんやりと眺める。
「とても…とても素敵な夢を見たんですよ…」
「ほお。それはどんな夢だ?」
すぐに答えようとして、なんとなくやめた。今は内緒にしておきたい。
「ふふっ、秘密です」
「なんだ、自分から話を振っておいて…」
オルトが苦笑いをする。少し意地悪だっただろうか。
「ただ…ダンデライオンがとても綺麗な夢だった、とだけ」
ダンデライオン、と聞いた時にオルトが何故かハッと一瞬真剣な顔でテメノスを見た。どうかしたのだろうか。
「オルト?」
「あ、いや…なんでもない」
オルトは何か考え込むような素振りをしながらクリックの墓石を見つめた。そして意を決したように、先程までの談笑の笑顔を消し真剣な顔でテメノスへと振り返る。
「テメノス」
「はい、なんでしょう?」
オルトはいつもよりも真剣で、且つ熱い眼差しをテメノスへと向ける。そして大きく深呼吸を一つすると、片膝を折りそのままテメノスの手をとった。
「え、オルト?」
「私、オルト・エッジワーズは騎士として、一人の男として嘘偽りなく貴方へ気持ちを伝えます」
「オルト?い、いったい何を…」
戸惑うテメノスへ熱い視線を向けながら、オルトはそのままテメノスの手の甲へと口づけた。
「?!」
突然の出来事にテメノスは思わず声にならない声を上げる。そして、そんなテメノスへオルトは静かに告げる。
「テメノス、俺はお前が好きだ」
「オ…ルト…っ」
「返事を聞かせてほしい」
じっ、と熱に焦がれた瞳でオルトがテメノスを見つめている。ああ、そんな瞳で見つめないでほしい。
もう、心は決まっているのだから。
「わ…たし、テメノス・ミストラルも嘘偽りなく答えます」
期待に満ちたオルトの瞳がより一層熱を帯びる。
「オルト、私も君が好きです」
お互い、耳まで顔を真っ赤にしている。おかしい、こんな初心な反応を示すほど幼くはないはずなのに。
「テメノス」
オルトが立ち上がり、再び目線が上となる。笑いながら、そして今にも泣きそうになりながらオルトに力強く抱きしめられた。少しだけ痛い。
「テメノス、やっと…俺は…俺は…っ!」
テメノスを抱きしめながら、珍しく感情をむき出しにしている。自分に向けてくれるこの熱い感情が、とても嬉しかった。
「ふふっ、オルト。痛いですよ」
「え!ああ、すまん…嬉しくてつい」
普段感情の起伏の少ない彼のそんな様子を、テメノスは愛おしいと心から思った。
そんな幸福な気持ちに満たされていると、ふと空が明るくなった。
「オルト…見てください…」
「これは…」
明るさにつられて空を見上げれば、普段は見えない青空が広がっていた。ストームヘイルでは一年に数回、見れるか見れないかの美しい青空だ。
そこへふわりと優しく風が吹き、空中を漂っていた雪がキラキラと輝きながら踊っていく。陽の光を反射しながら美しく舞っていた。
「なんて…美しいんでしょう…」
「ああ…こんな美しい光景がここでみれるとは…」
美しい光景に見とれながらふと先程みた夢と少しだけ重なる。
晴れた空に美しく舞う白。
特別な日となった、今日。あの夢とこの光景はきっと一生忘れることはないだろう。願わくば、この美しい思い出を末永く彼と語り合えますように。
「…ふふ、なんてね」
「ん?なにか、いったか?」
「なんでもありませんよ」
なんでもない思い出を、これから彼と共に増やしていきたい。美しい青と白に魅入られながら、そう願った。
「ねえ、オルト」
「なんだ?」
「私、お腹すいちゃいました」
「テメノスは昨日もあまり食べていないからな。一緒に朝食でも食べに行こう。温かいスープと焼き立てのパンを出す俺のお気に入りの店があるんだ。そこに行こう。その店の自家製ソーセージがハーブが効いてて美味いんだ。オススメだぞ」
「おや、いいですね。聞いただけで美味しそうだ」
オルトの話す朝食のメニューに、食欲をそそられる。自然と笑みが零れ、テメノスはオルトの手を取った。
「さあ、朝食デートと行きましょうか」
「え、デート?!」
デートという単語にオルトはまた顔を赤くしている。テメノスは可愛くて愛しい恋人の手を優しく握りながら歩き出した。
また、新しい一日がはじまる。