いらっしゃいませ、と落ち着いた調子の店員の声に促され、江澄と藍曦臣は店の奥へと足を運んだ。店内は鉄板焼きの香ばしい匂いで満ちている。
江澄と藍曦臣が向かい合って席に着くと、すかさず店員が水を持ってやってきた。
「お飲み物をおうかがいいたします」
「地ビールで」
「烏龍茶をお願いします」
「かしこまりました」
店員は注文を受けると、まずテーブルの脇のつまみをひねって鉄板に火を入れた。それから、江澄の前にメニューを置いて去っていった。
「ちゃんちゃん焼きは予約してある。ほかに食べたいものはあるか?」
「そうですね……」
江澄の手からメニューを受け取り、藍曦臣はページをめくった。
鉄板焼きの店である。肉でも、魚介でも、おいしそうではあるけれど、とりあえずは今夜のメインをいただいてからでないと食指が動きそうにない。サラダ、とも考えたが、ちゃんちゃん焼きは野菜もたっぷり入る。
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