冬 ぱちんときえろ 誰かに気取られたら、それだけでぱちんと音を立ててしゃぼん玉のように消えてしまいそうな。
自分自身の想いを、そんな風に長谷部はとらえていた。
冬のさなかに始まった本丸。人のいい主と、幾振かの刀と。その中に長谷部と燭台切はいた。
燭台切はもともと親しみやすい刀だったし、しばらくして顕現した大倶利伽羅や太鼓鐘といった馴染みが加わってからはいっそう、彼の周囲はいつも笑顔が途切れることがなかった。
ただ、それは自分を除いてのことだ。そう長谷部は感じている。
いつも朗らかな笑顔で皆と接する燭台切が自分に対してだけ、どこかぎこちなくなることに気づかずにはいられなかった。
言葉の歯切れが悪くなる。笑顔も作り物じみている。まるで困っているようだ、そう感じることさえある。
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