午前0時、都内某所コンビニにて 品出し作業が捗る深夜、店内に響きわたった自動ドアのチャイムに意識が向いた。顔をあげると、ひとりの若い男が入店するところだった。ひどく見覚えがある。「いらっしゃいませ」の挨拶も忘れ、ポカンと口を開けたまま固まる。絶対にどこかで会ったことがあるはずだ。でも誰だか思い出せない。、彼はこちらには見向きもせず、真っ直ぐ目当ての棚に向かって歩いていく。その後ろ姿に目をやりながら首を傾げ、立ち上がった。しばらく屈んで作業していたせいか、立ちくらみによろけ、雑誌ラックにぶつかる。その拍子に乱れた雑誌を直すために手を伸ばして、「え」とも「あ」ともつかない声が漏れた。手にした『月刊プロテニス』の表紙からこちらを見ていたのは、先ほどの客と瓜二つの男だった。
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