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    koshikundaisuki

    @koshikundaisuki

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    koshikundaisuki

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    高3の影山くんに熱愛が発覚する話
    モブ視点の影菅ですが二人はほぼ出てきません

    ・当て馬みたいな意地の悪い感じの女の子が出ます
    ・モブのクセが強め
    ・影山くんが悪口言われるような描写があります

    #影菅
    kagesuga

    浮き名俺が通う高校には、影山飛雄という校内でもトップクラスのモテ男がいる。
    モテ男というと少し語弊があるかもしれない。別に影山飛雄は笑顔で話しやすいとか、女性に対しての物腰が柔らかいとか、会話がうまいとかチャラいとか、そういうタイプの高校生ではない。
    香水の匂いもせず、髪にワックスがつけられていることもなく、制服の着こなしだってオシャレなわけではない。
    山積みのプリントを持って廊下を歩いている女の子に「代わりに持つよ」と微笑む優男を想像しているのなら、それはちょっと待ってほしい。そういうんじゃない。
    休み時間に机に座りながら、ガムとかミンティアとか差し出して「食べる?」って言ってくるクラスのムードメーカー的な人種でもない。たぶん。教室での彼の知らないが、おそらくはそういうタイプじゃない。


    でも廊下を歩けば一日に何人かは影山飛雄の話をしながらキャッキャしてて、リアルに手紙っぽいものを下駄箱に入れる女の子の姿も目撃されてて、影山飛雄直々にアドレス聞きに行く猛者もいて、放課後には校門の前とか駅の近くで待ち伏せしている他校の女の子がいる。これ、このペースだとバレンタインとかどうなっちゃうんだろって密かにドキドキしてる。俺、関係ないけど。



    俺が知っている影山飛雄の情報はあまり多くない。何故かというと2年上の先輩だからだ。
    影山飛雄はすっごく不愛想で口下手。あと勉強ができないそうだ。そして授業中に居眠りをするまいと、眠気と格闘している顔がやばいって聞いた。


    直接知ってる情報は、背が高く、スタイルがいいこと。顔も正直めちゃくちゃ綺麗だってこと。そしてバレーボール部に所属しており、めちゃくちゃ上手いらしいってこと。
    ちなみに烏野の男子バレー部は全国にも行ってる強豪チームだ。影山飛雄をモテ男と称するのはここが主にこの点に尽きる。
    2年前、まだ影山飛雄が俺と同じ1年生だったときのこと。影山飛雄は新入生でありながらあっという間にレギュラー入りし、あれよあれよと落ち目だったバレー部を春高まで導いた立役者だったのだ。春高の試合はテレビでも放送され、「うちの学校が出てるらしい」とミーハー心に見た生徒は多かったとか。そこに映っていた影山飛雄はおそらく、学校で見る彼とは別人のようだったのだろう。そのあと何が起こったのか、高校受験で四苦八苦していた俺には想像もできない。


    でも噂で聞くには影山飛雄が2年に上がるころ、非公式にファンクラブ的なものが創設されたらしい。どこに申し込めば入れるのかはわからない。っていうかファンクラブって何?


    つまり、恋人になってほしいという好意を寄せる人間はもちろんいるのだろうが、「こんな田舎の過疎地に、何やらすごい男の子がいるらしい」「顔もいいじゃん」「お近づきになりた~い」みたいなミーハーが群れを成しているだけにすぎないのだ。
    ……口が悪かっただろうか。申し訳ない。俺だってこんなにつんけんしたくないのだ。
    でもちょっと気になっていたクラスメイトが、最近ちょっといい感じだった気がする初音さんが、待ち受け写真を見せてくれたのだ。影山飛雄がサーブを打つ瞬間の写真だった。空中に高く飛びながら、ちっとも顔の造形が崩れていない。ユニフォームから覗く肢体の筋肉の造形の美しさ。サラサラの黒髪は、ふわりと浮かび上がって汗と共に輝いていた。画質は悪いが、とある地方の宗教画なんですよ、と言われたら素直に納得してしまいそうだったし、「これが影山飛雄です」と言われれば「それはまあモテるでしょうね」と返さざるを得ないベストショットだった。


    何を言われずとも、さすがに初音さんがそれを待ち受けにしている意味は理解できた。理解できたのに、非情にも彼女は追い打ちをかける。
    「見て、すっごい格好良くない?私、中学から影山先輩のファンなの」
    ノーガードのところを強く叩き込まれたような衝撃に、思わず今朝食べたパンを吐き出しそうになった。知りたくなかった。
    「あ、そうなんだ……」
    「これも本当はファンクラブに入らないともらえないんだけど、人にお願いしてね、やっと送ってもらえたの」
    嬉しそうに携帯を胸に抱いて笑顔を見せる初音さんは、こんな状態の俺にも可愛く見えた。こんなに幸せそうにしている人に水を差すことなんてできない。
    何と返すか迷いながら、口からは勝手に「ファンクラブって本当にあるんだ?」とこぼれていた。
    彼女は苦笑する。
    「うん、影山先輩のファンの人たちが勝手にサークルみたいに活動してるだけなんだけどね」
    「初音さんは入ってないの?」
    「うーん、回ってくる情報はそんなに大差ないし。ああいうファンクラブってさ、お互いを牽制するみたいな意味が強いんだよね。抜け駆け禁止みたいな」
    「あー……」
    「私、影山先輩の連絡先知りたいし、そういうのはちょっとね」
    「んー……」
    うなり声しか出なくなった俺に気付いていないのか無視をしているのか、初音さんはずい、と椅子を寄せて近づいた。
    「でさ、もし影山先輩に関する情報とか、もし写真とかあったら協力してほしいなって」
    「どうして俺が!?」
    影山飛雄との接点があるわけでもない俺にどうして。予想もしていなかった展開に驚いていると、初音さんはコトンと小首を傾げた。
    ふわりと巻いた長い髪が揺れる。同時に、彼女がつけている香水なのかシャンプーなのか、ふわりと甘い匂いが鼻腔をくすぐった。頭がくらりとする。
    この感じに覚えがある。息をするように甘えることができる人間が身近にいるのだが、同じ空気が流れている気がする。
    「だって一番仲いいし。優しいからお願いしやすいんだもん……」
    ほらー、と思った。ほらー、すぐにこういうこと言うじゃん。ここまで来て望みなんかないって嫌というほど思い知らされてるのに、断る退路さえ断たれた。
    「ダメかな」
    「いいよ……できることは協力するね」
    押しに弱い俺はそう返すことしかできないのだった。









    しかし、情報通でもなく顔が広いわけでもない。一応友人たちに影山飛雄の話を振ってはみたものの、真新しい情報は手に入らなかった。当然写真も回ってこない。
    そうなると何となく気まずくて、初音さんを避けがちになる。地道に詰めた距離がまた勢いよく広がっていくのを寂しく感じるようになったある時期、ひとつの噂が烏野高校を駆け巡った。


    影山飛雄に、彼女がいるらしい。


    噂なので、情報元がわからない。
    しかし、はじめは恐る恐る情報のすり合わせをしていた学生たちが、午後にはセンセーショナルなニュースに大騒ぎをはじめた。


    「土曜日に、部活帰りの影山先輩を車で迎えに来てたのを見た奴がいるんだって」
    「まさかの大学生……どこで知り合ったのかな。向こうからのナンパとか?」
    「年上好きだとはなぁ。意外なような、そうでもないような」
    「え~、でもさぁ、なんか高校生と付き合ってる女子大生ってあんまりいい印象なくない?」
    「たしかに~。なんでわざわざ高校生狙うの?別に妬んでるとかじゃないけどさぁ、手のひらで転がしてるっていうか」
    「しかも彼女、なんかめっちゃ可愛いらしいよ!」
    「へ~。影山先輩って結構顔で選ぶタイプなんだ?」


    あちらからもこちらからも、影山飛雄の話題が絶えない。
    純粋に驚く声もあったが、やっかみや嫉妬、失望の感情がにじみ出ている発言も多かった。硬派でストイックなイメージだった彼の恋人が女子大生だったことに対するショックが大きいようだった。

    「わかんねぇな。女子大生が相手ってそんなにダメかねぇ」
    友人のひとりがヘラヘラと笑う。そいつもまた、年上と付き合っている男だった。何でもバイト先で知り合ったらしい。
    「だめっつぅかぁ。やっぱ女子大生って大人だし、なんかちょっとエロい感じするよな」
    別の友人に話を振られ、俺は苦笑する。
    「変わんねぇよ。3年の差なんて大したことないっしょ。エッチなことなんて同級生とだってする奴はするだろ」
    「うわぁ、年上彼女に限定のスニーカー買ってもらってたやつがなんか言ってる」
    「そうだそうだ、お前みたいなやつが女子大生と付き合ってる男の株を下げるんだ」
    「影山先輩に謝れ」
    好き勝手言われても彼女持ちの余裕なのか、男は軽くあしらうばかりだった。

    改めて影山飛雄の人気を再確認しながら、俺はちらりと初音さんの様子を見る。
    彼女はいつも一緒にいるグループの輪の中で、憮然とした表情を浮かべたまま校庭を見下ろしていた。







    翌日にはさすがに落ち着いているかと思いきや、
    「車はメルセデスベンツCクラスの赤だった」
    「彼女は仙台NO1の夜の女王で、一晩で1000万売り上げたらしい」
    「彼女は影山のことをペットとして飼っているそうだ」
    など、「それはいくら何でも尾ひれがビロンビロンに付きすぎてるだろ」ってくらいに話が膨らんでいた。
    そのせいか「将来性を見込んで早めに唾を付けておいているらしい」という話には逆に信憑性があるようにも聞こえた。


    影山飛雄はこの事態をどう捉えているのだろうか。音楽の移動教室の際、あえて遠回りして、3年の教室をちらりと覗いた。
    影山飛雄は眠っていた。教科書が積まれた机に頭を乗せ、窓の方に顔を向けている。しばらくすると体勢が辛くなったのか、もぞもぞと動いてこちらを向いた。
    学校で仮眠をとっているときは寝汚いと聞いていたが、人形のように綺麗で、喜怒哀楽の読み取れない寝顔だった。


    廊下を再び歩き出す。生徒たちの雑談で反響する廊下に、「影山、様子どう?」という声が聞こえた。ふとその声がする方向を見る。
    背の高い男子生徒が二人(そのうちの金髪の男は教室の扉に突っかかるんじゃないかってくらいデカい)と、目が覚めるような橙色の髪をした男子生徒が廊下の壁に寄りかかりながら話をしているようだった。橙色の男の手にはノートがあり、それを見て「また谷地さんに借りたの」と金髪の男があきれ顔をしている。元々集まっていたというよりは、背の高い二人が話しているところに、橙色の男がたまたま通りかかったようにみえた。
    「全ッ然、いつも通り。もしかしたら噂されてんの気付いてないかも」
    「日向、影山のこと馬鹿にしすぎ」
    金髪の男の隣にいたそばかすの男が苦笑する。
    「いま影山は東テレの町野アナと付き合ってることになってるらしいよ」
    日向と呼ばれた男が「もう女子大生ですらねぇじゃん!」と叫ぶ。
    「影山も一言否定すればいいのにね……でもまあキリがないからかな」

    影山飛雄に詳しそうな口ぶりが気になった。立ち止まり、もうとっくに通り過ぎた三人の姿を振り返る。
    どこかで見たことがあると思ったが、影山飛雄と同じバレー部の3年生だった。
    特にやたら背の高い金髪は月島蛍という、影山飛雄に並んで人気の高い男子生徒だった。
    立ち止まって見ていた俺の存在を不審に思ったのか、日向という男がこちらを振り向いた。それにつられるように他の二人とも目が合い、慌ててその場を立ち去る。
    何か言われたらどうしよう、と内心ヒヤヒヤしていたが、「なあ、今の子ってさ──」という声が背後から聞こえた気がして、思わず廊下を走り去ったのだった。



    日向(先輩)のいう通り、どれだけ尾鰭がついた噂が流れようと、自動販売機で飲み物を買っているときに背後で意地の悪い集団が陰口を叩こうと、影山飛雄はまったく意に介さない様子だった。

    俺たちの間では体育館の扉から練習を覗く女子が明らかに減ったことが話題にあがったが、「でも全然気にしてないっぽい」「そもそも練習見られてるの気付いてないっぽいかった」「むしろなんか調子よさそう」とやはり影山飛雄のメンタルの強さに得体のしれない不気味さすら覚えていた。
    女子大生と付き合ってる、と聞いたあの瞬間が一番、影山飛雄という存在を身近に感じていた気もする。

    「でもさぁ、やっぱ俺だったらしんどいと思うな。好きな人と付き合ってるだけでこんなに言われんの」
    「仕方なくねぇ?有名税ってやつじゃん」
    「有名税ってそもそも何よ?影山先輩はただバレーやってるだけだし、好きで有名になったわけじゃないんだろ」
    「いやまぁ、そうだけどさぁ……」
    「そりゃ愛想のいい感じの人じゃねぇから見てて面白くない人間はいるだろうけど、なんか俺は気に要らないな、この状況」
    友人たちのやりとりを聞きながら、俺も同じことを思った。
    元々影山飛雄のことを好きではなかった俺だが、さすがに同情の気持ちが日に日に強くなっていく。色々嗅ぎまわっている俺も同罪ではないのか?そう問われると答えに窮するのだが。

    「ところで頼みがあるんだけど、誰か掃除当番代わってくんない?しばらく試験期間に入るからさ、今日彼女とデートしよっかって話してんだよね」
    飄々としたセリフに、この場の空気がガラリと変わる。
    この、たわけが!そんな理由で誰が掃除当番なんぞ代わるか。案の定、奴は「雑巾の臭いを漂わせたまま会いに行け」「試験期間舐めてんじゃねーぞ」「いいこと言ったっぽい後にそういうことを言うからお前はダメなんだ」「影山先輩に謝れ」と仲間たちから非難轟々だった。

    俺もこれ見よがしにさっさと帰ってやろうと思ったが、ふと掃除当番表を見て気が変わった。
    奴と初音さんは同じチームだったのだ。








    2週間ぶりに話す初音さんは少し素っ気ない。というか、このところずっと上の空だった。
    さすがに影山飛雄への気持ちが離れたのではないか、と思いながら話を振ると、彼女は「似合わないよね」とにっこり笑った。
    いつものふんわりした笑い方はどこへいっなのか、固く、不自然な笑顔だった。

    ”似合わない”という言葉の意図について聞くと、「影山先輩ってあんな性格だし、尽くすより尽くされる方が合ってると思うの。これからバレーでもっと忙しくなるだろうから、ちゃんと支えられる子の方がいいと思わない?」と箒を動かしながら首を傾げてみせる。
    影山飛雄の”あんな性格”も、”支えられる子の方がお似合い”という意味も俺にはよくわからなかったが、同意を求められていることだけはわかったので、俺は塵取りを絶妙な角度に調節しながら「そうかもしれない」と頷く。
    「年上の人って今は自分の知らないことばかりで新鮮かもしれないけど、高校卒業したらマンネリしちゃうかもね」
    「うーん、なるほど……」
    俺はここでようやく「自分こそが影山飛雄の彼女にふさわしい」と言っているのだと気付いて、「わぁ、こりゃすごいこと聞いちゃったぞ……」と思った。
    「……初音さんは、ファン辞めないんだ?」
    「やめないよ?彼女いるくらいで嫌いになる人って所詮それまでの気持ちしかなかったってことだよね。何ならライバル減ってよかった」
    今度はにっこり笑う。それはいつもの笑顔と変わらないはずなのに、めちゃくちゃ怖く感じてしまうのだった。

    「そういえば、影山先輩のこと、何かわかった?」
    集まった塵を袋に入れていた俺は、その言葉を受けてビクリと手元が震え、少しだけ塵をこぼしてしまった。相変わらず俺の手札には強力なカードなど何ひとつないのだが、何か言わないと島流しにでもされるのではないかという恐怖すらあった。バレー部の3年生たちの会話を思い出し「東テレの町野アナと付き合ってる噂は嘘らしいよ」と口走る。
    それに対し、初音さんは今まで聞いたことのない、抑揚のない声で「そんなことはわかってる」と言った。表情も能面のようだったので俺の体は「ブルブル」と震えた。
    「何かわかったらお話しします……」
    子犬のようにか弱く小さくなる俺に、初音さんはふふふ、と微笑んだ。
    「本当はどんな人とお付き合いしてるんだろうね?気になるなぁ」







    俺は影山飛雄の彼女について考えていた。

    いや違うんだ、待ってほしい。お前まだ初音さんに、などと思っているかもしれないがさすがにそういうわけじゃない。
    さすがの俺もあんな目にあってしまえば目が覚める。男のプライドをかけて言わせてもらうが、彼女が怖いわけでもない(これはちょっとだけ嘘。やっぱ怖いは怖い)。

    ただ、初音さんを見ていてふと思った。あんなに強かで、根拠のない自信に満ち溢れていて、何が彼女をそうさせるのだ、と。
    でも逆に、そうでなければ影山飛雄の恋人なんてつとまらないんじゃないかという気がしてきたのだ。

    バレーには詳しくないが、影山飛雄は将来オリンピックに出るらしい。決まっていることなのか、はたまたそれだけの実力があるということなのか、それはわからない。
    けれどいつか世界で活躍するアスリートになるのだ。金メダルをとるのかも知れない。
    それは俺の想像なんかまるで追いつかないことで、将来テレビで影山飛雄を見て「ああ、同じ高校には通ってたけれど別次元の人だったなぁ」なんて切ない気持ちになったりするのかもしれない。
    称賛もバッシングも、それこそこの小さな学校内で起こることの比じゃないくらい浴びることになるのだろう。俺だったらめちゃくちゃ怖い。

    そんな影山飛雄の隣を歩く人間はきっと強かで、物事の機微に鋭く、人を支える力を持った女性でなくてはやっていけないのではないか。
    それが初音さんのような人かどうかは置いておいて、いま影山飛雄を夢中にさせる人間の存在が改めて気になってきたのだった。

    この条件なら、一晩で1000万売り上げた仙台NO1の夜の女王は、そこそこいい線いっている気もした。
    一方ではじめに「迎えに来ていた車に乗り込む影山飛雄を見た」と言い出した人間が「いや、車はN-BOXだったような気がする」と言い出したことが判明したため、実は夜の女王説は消えかけつつあるのだった。軽自動車に乗る女王様という可能性もなくはないが、中流家庭たるわが家と同じ車を乗り回す女王様というのは、あまりにも夢がない。


    試験期間なので部活はないのだが、掃除が終わっても校内にはまだたくさん人が残っていた。
    家だとやる気が出ないというタイプの生徒は、残って勉強をしていくことが多いのだ。俺は静かな場所でないと集中できないため、この様子だと今日は家に帰った方がよさそうだと判断する。その前に頼まれていた本を借りていこうと思い、図書室へ寄った。案の定、図書室は勉強している生徒であふれかえっていた。ひそひそ話をしていたのに会話に夢中になって次第に声の大きくなるグループを、司書の女性が注意している。
    勉強スペースを通りすぎ、奥のコーナーへ向かう。こちらには人の気配がなかった。
    頼まれていたのは英語の参考書だ。控えたタイトルを見返し、棚を探す。指で本の背をなぞりながらゆっくりと移動すると、後ろの棚にいたらしい男子生徒とぶつかりそうになった。

    「ぉっと……サセン」
    「は!?あ、え、いえ、俺の方こそ……」

    たどたどしい謝罪になった。すんでのところで衝突を回避した相手は、影山飛雄だったのだ。
    こんなに近くで見たのははじめてだった。その衝撃で、何故か動物園でライオンを見た幼少期の記憶まで遡った。

    相手はきっと俺のことなんて何も知らないだろうに、変に緊張して背表紙をなぞる指も震える。どうしてこんなところに影山飛雄が。
    さっさと見つけてずらかるぞ、と頭の中の自分が急かしてくる。もしくはさっさとどこかに行ってくれ。そう願うも、影山飛雄も同じ本棚を目で追っているようだった。
    俺と影山飛雄の視線の先が、同じ本に注がれる。そんな予感はしていたのだが、伸ばした指先がぶつかった。

    あ……。
    影山飛雄と目が合う。これ──少女漫画みたいじゃん……。
    気になっていた人物と、この短時間で急接近。初音さん、なんか……ごめんね。
    思わず指を離し、後ずさりする俺に合わせて影山飛雄も本棚から離れる。
    「あの、どうぞ」
    「いや、そっちが先だったから……」
    戸惑った。こちらは所詮外部の人間の頼まれものだ。3年である影山飛雄の手に渡った方が参考書も嬉しかろう。
    「俺は人に頼まれたものなんで、大丈夫です」
    影山飛雄は俺の姿をじっと見た後、「助かる」といって参考書を手に取り、一礼をして去っていった。
    会話をしてしまった。さらには参考書を譲ってしまった。一息つくと、自分の心臓がどきどき高鳴っていることに気付く。
    緊張がほどけたというよりは、高揚感に近かった。きっと芸能人に会ったとき、こんな気持ちになるのだろう。


    カウンターで本を借り終えた影山飛雄が図書室を出るのを少し待ってから、俺も外に出た。何となく鉢合わせるのが気まずかったのだ。
    影山飛雄は肩にかけていたバッグに本をしまいながら3年の下駄箱へ向かい、靴を履き替えていた。タイミングがほぼ同じせいで、まるでストーカーのようになりそうだった。
    少しここで待とうか。
    携帯をいじりながらチラリと影山飛雄の様子を見る。
    まるでそのタイミングに合わせたかのように、影山飛雄は携帯を取り出したのだが、その拍子に何かが地面に落ちた。
    気付かないのか、そのまま校内を出ようとするので思わず飛び出す。
    足が長さに関係があるだろうか。一歩の幅がデカくて速い。俺が何か──なんと家の鍵だった──を拾い顔を上げた瞬間にはもう姿はなかった。しまった、先に声をかけるべきだった。
    上履きのまま走り出し、もう校門のあたりに見える人影に向かって叫ぶ。
    「影山先輩!鍵!落しましたよ!」
    俺の声が悪かったのか名前を呼んだのが悪かったのか、視界に見えるすべての生徒が俺を振り返った。





    「悪い、本当に助かった」
    「いえ、よかったです間に合って」

    鍵を受け取った影山飛雄は、少しばつが悪そうな顔をしていた。
    返した鍵には、ミニーちゃんのキーホルダーがついていた。横向きのミニーちゃんが、目をつぶってキスをしている。
    ハートが半分になったチャームがついているのをみると、カップル用のペアキーチェーンなのだろう。おそらく対になるミッキーがいるはずだ。
    影山飛雄に彼女がいるのは確からしい。でもなぜミニーちゃん。

    坂ノ下でお礼にと奢ってもらった肉まんをかじりながら、駅に向かった。チラリと横を見ると、大口をあけてかぶりついている影山飛雄がいる。頬をハムスターのように膨らませていてもイケメンだった。むしろこんなに無邪気な姿を見せられると、普段とのギャップも相まって心赦されているような気がしてしまい、庇護欲をそそられる。今まで、恋人なんていませんと言わんばかりのストイックな印象だったのに、年上の彼女がいると言われてももう何ら不思議ではなかった。人のイメージなんていい加減ものだなぁと思う。

    「影山先輩は」
    どちらかというと俺は沈黙に耐えられないタイプだった。思わず声に出しながらふと考える。どんな話を持ちかければいいのだ。
    影山飛雄の手にはもう肉まんの姿はなかった。代わりに握りしめられた左手に敷き紙の端が見えた。ちょっと目を離した隙に何が。
    慌てて自分も肉まんを詰め込んだが、「ゆっくり食え」と促される。
    「ありがとうございます……あの、なんでミニーちゃんなんですか」
    勢いで、脳内の【聞きたいことリスト】にある、最新の質問を投げかける。影山飛雄は「ミニーちゃん?」と不思議そうな声を出した。
    「さっき拾った鍵についてるキーホルダー、ミニーちゃんだったので。好きなのかな、と……」
    ああ、と影山飛雄はポケットに入れていた鍵を取り出し、ちらりと一瞥する。まるではじめてキャラクターの名前と姿を一致させたような様子だった。
    「付き合ってる人が、自分はこっちがいいって」
    なるほど、彼女の趣味ってことか。そりゃミッキーが好きな女子もいる。影山飛雄自身には特段こだわりもなさそうだし、彼女が選んだものに文句は言わないタイプなのかもしれない。
    「どんな人ですか、付き合ってる人」
    流れでつい聞いてしまったが、不自然ではないはずだ。でも噂が流れている今だけに、怒られたらどうしようという不安もあった。少しだけ勝ち取ることができた信頼関係を、一気になくすリスクもある。
    ドキドキしながら肉まんをかじる。味がしない。影山飛雄は「どんな……」と呟いたまま黙り込んだ。
    怒っているのではないらしい。おそらくどう答えたものか困っているのだろう。
    「年上って聞いたんですけど、本当ですか?確か大学生って」
    ここで影山飛雄は一瞬、俺を一瞥した。力強い視線だった。噂のことを思い出して警戒したのかもしれない。一瞬間をおいて「そう」とだけ返してくれた。
    「どこで知り合ったんですか?」
    「学校。俺が一年の時、三年の先輩だった」
    あ、と声が漏れた。どうしてその線を今まで考えなかったのだろう。てっきり3年になってから外部の人間と知り合ったのだとばかり思っていたが、元々高校生だった人が大学生になっただけの話だったのだ。目から鱗が落ちたような感覚とともに、自分視野の狭さを恥じた。
    「もしかして在学中から付き合ってたんですか?長いですよね」
    「相手が卒業してからだから……2年とか」
    長い。そして今まで発覚しなかったのがすごい。
    「そんなにずっと付き合ってても、変わらずに好きなものですか」
    これは純粋に疑問に思って聞いてしまったことだった。恥ずかしながら俺は結構惚れやすい性格で、でも成就はしない(相手に大体彼氏がいる)ものだから一途に誰かを想い続けた経験がないのだった。これにはさすがの影山飛雄も嫌な顔をした。何てこと聞くんだこいつ、というような戸惑いの視線。唇を少し噛んでいた。やがて照れと困惑が入り混じった表情で、「……そりゃ、そうだろ」とつぶやかれた言葉は、あやうく近くを通る車のエンジン音にかき消されそうなほど小さかった。即答されたり、変にはきはきと肯定されたりするよりずっと「めっちゃ好きじゃん……」と感じるのだから不思議なものだ。
     
    その後も調子に乗って色々聞いた。噂の真偽も確認した。

    夜の仕事などは一切しておらず、普通の大学生だという。家庭教師のバイトをしながら学校に通っているらしい。
    車で迎えにきてもらったことはあるが、ベンツ?とかではないと思う、と影山飛雄は首を傾げた。
    車には詳しくないそうだが、「軽とか言ってたし、少なくとも赤じゃない」と答えた。
    「顔は可愛い系ですか?美人系ですか?」の問いには、しばし天を仰いだあと、「可愛い系……?」と答えを絞り出してくれた。
    「ギャルってのは本当ですか?」と半ば冗談で聞くと「ギャルってなんだ」と返されて答えに窮する。そういえばギャルの定義ってなんなんだ?
    「あー、例えばですけど、明るくてノリが良くって、社交的で……あと髪の毛とかは明るい感じですよね。意外と仲間想いだったり、情にあつかったり?」
    自分で説明しておいてあれだが、あまり自信がない。
    「じゃあギャル」と影山飛雄が答えた。ギャルなのかよ。
    「黒ギャルですか?」
    影山飛雄はきょとん、としたが何となく意味は伝わったのか「白ギャル」と返した。口には出したものの、しっくりきてない様子だった。


    聞きっぱなしだとさすがに失礼かと思い、俺の話もした。主に気になっていたクラスメイトの話だ。
    影山飛雄は終始静かに聞いていたが、話が終わると「こういう話はよくわかんねぇけど、その女はやめといた方がいい気がする」とコメントをくれた。
    深いところまで話したわけではないのに、なかなか的確なアドバイスだったと言えよう。
     

    行き過ぎた噂を否定しない理由についても聞いた。
    「全部あの人と俺の話であって、他の人間には何も関係のないことだから」
    禅問答のようで一瞬混乱しそうになったものの、何が言いたいのかはすぐにわかった。
    どんな噂が流れていようと、部外者は所詮部外者だ。いくら俺たちが騒ごうと、ふたりの人生には何の影響もない。わざわざ嫌な思いをして、第三者に情報を与えてやる必要などないのだ。
    ここ最近、彼のことを嗅ぎまわっていた俺には、痛すぎる言葉だった。何も言えないでいると、影山飛雄は話を続けた。
    「それにあの人も忙しいから、余計な心配かけたくねぇ」
    「はは……影山先輩ってかっこいいっすね」
    格の違いを見せつけられた気がした。最も彼にはそんなつもりなど毛頭ないのだろう。
    現になぜ褒められたのかわからず、怪訝な顔を浮かべていた。



    影山飛雄とは家が反対方向だったので、駅のホームで最後に写真撮影をお願いした。
    「何に使うんだ」と訝しげな顔をされたので、素直に事情を話す。案の定、呆れた視線が突き刺さった。
    「違うんですよ……」と言ったものの何も違わないので次の言葉が出てこない。携帯を片手に阿呆な顔をぶらさげる俺。影山飛雄は気の毒に思ったのか「ここでいいか?」と言ってくれた。
    彼の背後には「この顔にピンときたら」や「駅員を殴るのは犯罪です」のポスターが貼ってあったので本音を言うと場所を変えたかったのだが、まもなく電車が来ることを考えるとこれ以上時間を奪うことは憚られた。
    「大丈夫です、お願いします」と捲し立て、カメラを起動し、構える。いきまーす、と声を掛けても影山飛雄は直立のまま動かなかった。う……こういうタイプか。
    このままでは指名手配ポスターの前で記念撮影をするシュールな男の写真が撮れてしまう。
    「適当にポーズお願いします、なんか、こう」
    適当に握りこぶしをつくり、ガッツポーズのようなかたちを見せると影山飛雄はその通りにしてくれた。素直にピースサインを見せればよかったなぁ、と後悔しながらシャッターを切った。






    シャワーを浴びながら、すべて自分に都合のいい夢か何かを見ていたのではないかと思った。
    風呂場から出て、タオルで濡れた髪をふきながらソファに寝そべる。携帯を確認したがデータの中に写真は当然のようにあった。1枚は半分目が閉じた影山飛雄。2枚目はぶれて写る影山飛雄。3枚目は「駅員を殴るのは犯罪です」という文字の前でこぶしを構える影山飛雄。
    はっきり言って、全然いい写真ではない。でも見返して確かな満足感があった。俺はこの写真を気に入っている。

    今日一日で、影山飛雄に貼っていたレッテルは、すべて剥がれ落ちていた。嫌な奴だと思っていたけどそうでもないし、クールぶってるのかと思っていたがあれは天然だと気付けた。
    何より、あの影山飛雄が普通に誰かに恋をし、今もめちゃくちゃ好きでいることに対して、他人ながらくすぐったい感情がうまれていた。ギャップ萌えというやつだろうか。
    影山飛雄の恋人は強かでなければならない、なんてこちら側の勝手な押し付けでしかなかった。影山飛雄の口ぶりから相手が意志の強そうな女性であることは感じ取ったが、そうであってもそうでなくても、幸せならいいじゃないか。


    白目をむいた影山飛雄の写真を見返す。これを送ったら初音さんはどんな反応をするだろうか。喜ぶかもしれないが、たぶん普通にキレられるだろう。シャッターチャンスを無駄にするなとかなんとか。
    恋人のことをどう説明するか悩みながら、一番まともに映ってる写真をメールに添付する。

    「携帯見ながらにやにやしてる奴がいる~」

    からかうような声が頭上から響き、俺はゲ、と思う。
    「エッチなサイトは程々にしろよ、高額な請求書が届くぞ」
    帰宅したばかりの兄の顔が俺を覗き込んでいた。
    「見てないよ……あ、頼まれてた本、他の人に借りられてた。ごめん」
    「あー、いいよいいよ。他のルートから手に入ったみたいだから」
    こいつ、二重予約してやがった。弟をこき使いやがって……と思うが、すぐに兄は「わざわざありがとうな~」と笑う。
    そうするともう沸いていた憤りの感情はすっかり消え去っているのだった。「別に……」と言いながらソファから起き上がると腹の上に乗せていた滑り落ち、兄の足元で止まった。

    兄は携帯を拾い、俺に渡そうと手を伸ばしたが驚いた声を上げる。
    「あれ?影山じゃん」
    そう言いながら勝手に画面を覗いている。
    「なんで影山の写真?ファンなのお前。つーかなんだよこのショット」
    兄はおかしそうに笑っている。俺は驚いた。どうして影山飛雄のことを知っているのだ。
    いや待てよ。知っていておかしくない。兄は2年前まで烏野高校に通っていた。影山飛雄とはギリギリ在学期間がかぶっている。そして、本当に今の今まで忘れていたのだが、兄はバレーボール部に所属していたではないか。
    ガツン、と頭が殴られたような衝撃だった。兄が知り合いなら、あんなに周りを嗅ぎまわらなくても、もっと楽な方法があったはずだ。無理して近づこうとしていた日々(まあ言うほど長い期間ではないが)を思い出し、ドッと疲れが出て再びソファに沈み込んだ。

    「なんだよ~ファンならいいもん見せてやろうか」
    脱力する俺に気付いていないのか、兄は呑気にスマートフォンを見せてくる。……くそ、最新式は逆光でも画面が綺麗だ。次第に目が慣れてきて、画面に写るものが何かわかってきた。
    兄と影山飛雄のツーショットだ。
    背景はシンデレラ城の広場で、兄はミッキーのカチューシャを、影山飛雄はリボンのついたミニーのカチューシャをつけている。めちゃくちゃはしゃいでいる兄の笑顔と、少しほころんだ影山飛雄の顔が2人の仲の良さを象徴していた。昔に撮ったもの、ではない。なんだこれ。なんなんだこれ。
    「門外不出だからな」とふざける兄の声はまったく耳に入ってこなかった。
    卒業してからもわざわざ東京(千葉)に遊びに行くって、相当仲いいよな?っていうかこの距離感、なんかおかしくない?影山飛雄もなんか兄の方に頭寄せてるし。ただでさえパーソナルスペース広そうな人なのに、仲のいい先輩後輩にしたってくっつきすぎじゃないか?

    影山飛雄が語る恋人像。鍵についていたミニーちゃんのキーチェーン。同じタイミングで借りていかれた参考書。パズルのピースがカチャカチャ頭の中ではまっていく。まずいってこれは。でも、そう思うってことはもう理解しているのだ、俺は。

    「こ、こうちゃんってさ……もしかして、影山先輩と付き合ってる……?」

    呼吸の仕方を忘れた俺は、息を吸っているのか吐いているのかわからないまま、それだけを口にした。兄は笑って「んなわけないだろうが」と言う。
    そう思っていたのに。

    「あ、バレた?えへ」

    そう言って笑った。めちゃくちゃ軽く肯定されて、俺はまだどこかでいつもの冗談なのだと思っていた。
    「え、だって…気が利いて……甘え上手な大学生って」
    必死な情報収集のすえ、手に入れた影山飛雄の恋人像を思い出す。呆然とする俺に、兄は「俺じゃん」と笑う。
    「え!?だ、だって……色白で可愛いギャルだって……噂だって流れて……」
    「めっちゃ俺じゃん」
    兄は裏返したピースを、ギャルさながらに顔の輪郭に沿うように当てて、ウインクを決めながらポーズをとった。

    風呂に居すぎてのぼせたのか、情報処理が俺の頭では間に合わなかったのか。
    そこから朝までの記憶はなかった。




    翌朝──兄の孝支は、俺より先にテーブルについて朝食のトーストをもりもり食べていた。隣の席に座り、俺も出されたトーストにマーガリンを塗る。思い出したように兄が顔をあげて母に声をかける。
    「あ、母さん、今日俺夕飯いらないから」
    「えーどうして?唐揚げにしようと思ってたのに」
    兄は、唐揚げかぁ~と悔しがりながら「後輩に勉強教える約束してるから、たぶん夕飯もごちそうになると思う」と答えた。

    「彼氏の参考書を弟に借りてこさせるな」
    ぼそりと小声で文句言うと、「自分に彼女ができないからってやっかむなよ♡」と囁かれる。
    「やばい、もう時間ない」
    立ち上がり、通学用のリュックを手に取る兄。そのリュックに光るのは、ミッキーのキーチェーン。隣にいるはずのないミニーちゃんに向かって、キスをしている。
    「行ってきまーす」と元気に駆け出していく兄を見送ることはせずに、俺は携帯を取り出した。食事中に行儀が悪いとわかってはいたが、片手で操作しながら影山飛雄の写真が添付された初音さん宛ての未送信メールを消した。


    今、影山飛雄に対する印象は一周回ってもう何もわからない。
    ただあの兄のことをそんなに好きなのかという困惑と、いつもご迷惑おかけしているんじゃないかという心配と、やっぱり影山飛雄って変わってんな、という納得感で学校に蔓延る噂のことなどもう全部どうでもよくなっていた。

    初音さんには悪いが、諦めた方がいい。相手が兄であるとわかった今、この世に勝てる人間などいないと感じる。
    どうしてって?
    菅原孝支という男を兄に持てば必然とわかるのだ、とだけ言っておきたい。申し訳ないが、こればかりは言語化することはできないのだ。


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