曦澄④「雲夢の蓮の景色は、どんな絶景にも負けないと魏公子が自慢げに話しているのを聞いて、是非見てみたいと思っていました」
「……そうですか」
「彼はよく雲夢のことを話してくれます。名所や銘菓の話から、幼少期に貴方と二人で壁に描いた落書きの話、師姉殿の作ってくれたスープの話まで……」
「なっ…それは失礼した。アレは非常識なやつだから、話すべきこととそうじゃないのとの区別がつかんのだ」
魏無羨のやつ!と叫び出したくなるのをやっとの事で堪えた。蓮花塢を褒めるのはいいとしても、過去のあれやそれをよりによって藍曦臣に話しているとは。幼き日の話をされる恥ずかしさはもちろんあったが、それ以上に興味のない話でも無碍にすることもできずに聞いたであろう藍曦臣の心情を思えば申し訳なくなった。
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