※王宮パロの忠暦ある国の王宮には王子の夜伽のための召し使いとしてうら若い青年が集められる慣わしがあって、暦もその一人に選ばれる。
召し使いは王宮からの指名制なので全国民が対象になるわけではなく、たいていは貴族が隠し子を差し出すか、年始めの式典で見初められた麗しい男子のもとへ手紙が送られる。
暦は貧民の出であり、式典にも参加していない。自分が呼ばれるなんて何かの間違いだ。ただの雑用の召し使いならともかく、夜伽の相手に選ばれる覚えはない。
反抗的な態度の暦は訓練にも参加せず、問題児として扱われ、とうとう王子の側近・忠が直々に教育係としてあてがわれることになった。
忠は王宮内でも冷酷非道と噂の男だ。どんな手酷い扱いをされるのかと身構えたが、忠は自室に戻るなりベッドに突っ伏してそのまま寝てしまった。
側近の男は朝まで目覚めず、ようやく起きたかと思うと暦に向かって淡々と言い放った。
「使えない召し使いの相手をするくらいなら睡眠時間にあてる」
召し使いは他にもごまんといる。そもそも王子に気に入られる青年は一握りで、こぼれ落ちた者たちは王宮を追い出されるか、一生王宮の床を磨き続けるしか道がない。たった一人使えなかったところで何も問題はなかった。
それなら互いにとって好都合、ということで、暦と忠は対外的には夜伽の訓練をしていることにした。部屋に入ったら忠は爆睡、暦は物珍しい調度品をいじったりして時間を過ごし、次第に秘密を共有する者として穏やかに仲を深めていた。
それでもいつかは王子にお目通りする日がやってくる。避けられないならと覚悟を決めた暦は、忠にゆっくりと夜伽のやり方を教わることになった。
そうして心まで重ねてしまうようになった二人。しかしある日、忠がやや固い表情で部屋にやってきた。
「明日は君の番だ」
暦に王子の夜伽の順番が回ってきた。
体の準備はできている。しかし、感情はどうするべきか。
気に入られたら、暦は王子だけのものになる。気に入られなくとも、教育係の必要がなくなるのだから、忠と会う理由はない。
最後の夜、二人の決断は……
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