ておくれ「た、質の悪い薬......ですか。」
ゴン、と重いものが頭の上に降ってきた心地だった。
同時に過去の記憶が思い起こされる。それは震えながら手を離した女性との最後の記憶。善しとしてきた事が毒にしかならなかった苦い記憶。
まやかしの苦さに舌が痺れたようで、情けない乾いた笑い声が吐き出されていた。
「はは......。そうなのかもしれないと納得してしまうのがお恥ずかしい限りです。」
「ええ、ですから気をつけた方がいいですよ。」
「そうですね。まさかこんな話をしてしまうだなんて、はじ......あ。」
どうにか認識のずれを感知できたように見えたのも束の間、あるいはこの男の馬鹿正直な性根が露見してしまった瞬間だった。
「思い返せば、甘やかしたい話もその理由も珠岡さんにお話したのが初めてです。」
「......え"っ」
「あはは、これまでは言うまでもなく......というのが私の悪癖なのかもしれませんね。善処するのでこの事は秘密にして、もしくは忘れちゃってください。」
「善しとしたら俺、いや周りにとって悪化しそうです。」
「うーん、では悪処?となると、どうなっていくと思います?」
知りませんけど......。
そう力無く呟いたのだと言う。