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    inugoyagoyagoya

    @inugoyagoyagoya

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    inugoyagoyagoya

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    猫の日ということで、🦐🦈の🦐が猫耳獣人にうつつを抜かす話。

    はじめまして、おはようございます。
    挨拶は大事ですよね。監督生と申します。
    突然ですが本日は何の日かご存じですか?
    そうですね。にゃんにゃんにゃんで猫の日ですね。
    たくさんのご回答ありがとうございます。
    皆さんは猫、好きですか?
    僕は好きです。ええ、とても。
    かわいいですよねー。あのフォルム。きゅるるんとした目。人の家の室外機の上でひなたぼっこをするあの図々しさ。でも気安く触らせてくれなくて、近づいたら「邪魔なやつが来たぜ」って睨んで去って行くふてぶてしい感じ。
    たまりませんよね。
    さて話は変わるんですが、皆さんは猫耳、好きですか?
    猫ではなくて、猫耳、ですよ。頭のうえにちょんと生えてる三角のお耳。音に反応してピクピク動いて、ふわふわの毛に覆われてるあれ。
    僕は好きです。大好きです。

    さて、またまた話は変わるんですが、僕は今食堂にいるんですよ。
    「ーーのさ、課題あとで映させてよぉ、監督生♡」
    話のほとんどを聞いてなかったが、まぁ最後の一文から察する必要もなくろくでも無さそうな内容なので、猫なで声で甘えたように肩に擦り寄るエースに中指を突き立て、舌を出す。
    「気持ち悪い声出すんじゃねぇよ。飯がまずくなんだろ」
    猫は好きだけれど、猫なで声はいらん。
    「はぁああ?キモいじゃなくて可愛い声だろ?この声をおかずに飯を食えや!!」
    仕返しと言わんばかりにエースに頭をうりうりと締め付けられるが、僕の視線は一点に集中。
    うるせぇ!頭を揺らすんじゃねぇ!視界がぶれるでしょーが。
    視線の先には同級生に囲まれてゲラゲラと笑いながらお昼ご飯を食べるフロイド・リーチその人の姿がある。
    フロイド・リーチ。リーチ兄弟のやばいほうと呼ばれるウツボの人魚。気分屋で、天才。人を殺したことがありそうな男ランキングの上位保持者にして、僕の恋人。
    僕の、恋人(嘘ではない。決して)。
    僕の視線に気づいてないフロイドは、時折隣にいるジェイドのことを肘で小突きつつ大きな動作で話をする。
    その姿を収めながら彼の頭、正しくはおでこより上を隠すように手で覆ってみる。
    うん。……うん。
    三角のお耳がもし頭についたとして?毛並みは髪と同じターコイズブルー?
    パタパタと覆った手を上下に動かしてみる。
    ……。
    …………ええやんけ。
    「まーじーで、オレを無視してまで何見てるわけ?」
    やかましなぁ。ほっといてくんねぇかなぁ……あ、フロイドがこっちに気付きそう。
    反応が乏しい僕に飽きたのか、視界の端に映るエースがそのまま僕の視線をたどる。
    そして、ははぁんと隣で悪い顔をして
    「猫の日、猫耳、にゃんにゃにゃーん」
    とボソリと耳元で囁く。
    エースの言葉が妄想とリンクしてぎくりと肩をふるわせて隣をみれば、ニィ…とわっるい顔をする。
    「お前、猫耳ほんとに好きな〜。あの猫の先輩見過ぎじゃね」
    あの、と指さすのはフロイドと同じテーブルにいる2年の猫の獣人の先輩。
    ちがわい!!そっちじゃねぇよ!!
    心の中で否定するけど、猫の先輩じゃなくてフロイドを見ながら猫耳姿を妄想してました。という説明するわけにもいかないので、賢い僕はお口にチャックしてパックのお茶を飲む。
    「……」
    「でもさ、虚しくないわけ?野郎の猫耳を見てもつまんねぇだろ」
    だから、僕は恋人の…。
    とは説明できない……。ただ、猫耳に飢え過ぎて野郎で抜いてると思われるのも腹立つので、エースの座ってる椅子を蹴ってもう一度中指を立てておく。
    「だぁああ!そうやってすぐに中指たてんのやめろよ。育ちのほどが知れんぞ」
    それをエースは右手で包みながら怒るがニヤニヤ顔は変わらない。くたばれ!!
    「うるせぇな!じゃあクソみたいなこというのやめろよ」
    「んな怒るなって!!かわいそーな監督生にオレが慈悲の心をあたえて…」
    「いらねーよ。エースこそ俺の慈悲の心(課題を終わらせたノート)が必要なんだろ!!」
    掴まれた中指はなかなか抜けなくて、そのままぐいっとエースが肩に首を回す。
    近い!あつい!鬱陶しい!!
    そしてジタジタと離れようともがく僕の耳元でぼそっと呟いた。
    「発情ネコちゃんのにゃんにゃんプレイ♡」
    ……。
    は?
    抵抗をピタリと止めて、顔を下に落としたまま視線だけでエースを見る。
    ニマニマニタニタ笑ってるエースは
    「一心不乱の本気交尾♡発情ネコちゃんのにゃん♡にゃん♡種付け24時♡」
    ゆっくりと読み聞かせるようなスピードで下品なAVのタイトルと繰り返す。
    やめてください。お昼時ですよ。そしてここは食堂ですよ。
    そう注意して殴りつけてやりたいのに口から出たのは
    「何、それ」
    欲望に忠実な僕の言葉。
    それにエースが綺麗な顔で微笑んで
    「この前、サバナクローのやつから借りたAV。女優さんが猫の獣人でさァ。めっちゃヨかったの♡なー?デュース」
    僕達の前に座って静かにしてたデュースに話しかける。
    あ、ばか。んな下品な話をデュースに振るなよ!!
    「あ、……うん、そーだ、な」
    ほらめっちゃ顔真っ赤にしてんじゃん!!
    話題に入りたくないから静かにしてたんだろーが、可哀想だろ!!
    と叱ってやりたい。
    「リアル猫耳やんけ」
    ほんとこの口はろくでもねぇな。
    というか、そっか。ここはワンダーランド。
    人魚いれば妖精も獣人もいるわけで。
    そう。つまり……
    やめとけばいいのに好奇心が止まらない。
    「……リアル猫耳でにゃんにゃん鳴いたり、すんの?」
    一番気になる部分を聞けば、エースがちょっと真面目な顔をして、まじでヤベェよ?なあ?とデュースに同意を求める。
    デュースは、んっと咳払いしてそれからきょろきょろとあたりを見渡したあと(多分同じ寮の先輩がいないことを確認したんだろう)顔をずいっと出して声を潜めた。
    「あれはにゃんにゃん。なんてもんじゃない。……なんていうか、本当に交尾って感じだ。途中女優さんが物足りなくなったのか主導権を奪ってしまうし……」
    「あー、あのシーンね。オレはそーゆー趣味ないから飛ばしたけど、女の子にリードされたいタイプの人間にはハマるよなぁ」
    二人とも普通に顔がいいから、真剣な表情をしてるとそれなりにかっこいいんだけど話してる内容は猥談だ。
    ……さいてーだ。
    「ほーう?……ちなみに耳とか尻尾ってさぁ、感じてるときどうなるの?動くの?」
    そしてそれに乗っかる僕も同じ穴のムジナってやつ。
    「動く動く。つかさ、何ていうの?気持ちいい時は耳がぺしょんって下がるからガチで感じてんだなぁってわかりやすくて!」
    「まーじか!」
    やっべぇ、猫耳に対する解像度がどんどん上がるわ。
    ……いや、獣人のクラスメイトもいるし元の世界にいた頃に比べたら解像度は段違いよ?でもさ、セックス中のことはわかんないじゃん??野郎しかいないこの学園で、想像したくないじゃん。
    ……ていうか、そっかぁ。気持ちがいいと耳が下がっちゃうのかぁ……。
    さっそく得た知識をそのままに、ベッドの上で強請る猫耳フロイドを想像してみる。
    ぺたんとしたお耳とぴるぴる動かして、きっと気持ちよすぎて尻尾もピンとしちゃってて、それで蕩けきった声で強請るんだ。
    『……んにゃ、あ♡こえみちゃ♡もっとぉ……♡』って。
    んーー。
    ……大変、えっちですねぇ。
    「おい、監督生。よだれがでてるぞ」
    「……はぇ?」
    「昼間っからトリップとかさすがだなぁ〜」
    デュースの声に気づいて、慌てて垂れてたよだれを拭く。
    その様子にエースがクツクツと肩を揺らして、それからずぃっと手を差し出す。
    「そんな猫耳に飢えてる監督生に、慈悲深ぁいオレがDVDを貸してやるよ。お前の妄想の参考資料としてさァ。……そのかわり、……まぁ賢いお前ならわかるよな?」

    -・-・-・-・-

    「やったねぇ……」
    手の中にあるのはエースから借りた件のAV。
    今日提出の課題を映させてあげることを対価に、借りてしまった資料映像。
    だが後悔はない。
    「これは猫耳革命といっても過言ではないな…」
    どうあがいても解像度70%だった妄想がリアリティーをもって120%のクリアなものになるんだもんな。
    しみじみとクソみたいな独り言を呟きながら、テレビの前にソファーを動かして一応ティッシュとゴミ箱をもってくる。
    資料映像だけどね!?万が一誤作動したときのためにね。
    静かな部屋の中で一人誰に聞かせるでもない言い訳をする。
    グリムには例え天地がひっくり返っても寝室に入ってくんな。と釘を刺し、ゴースト達には男を磨くから部屋に入ってこないでほしい。と伝えてある。
    玄関にも寝室の扉にも鍵をかけた上でカモフラージュ用のアクション映画のパッケージを開いて『一心不乱の本気交尾♡発情ネコちゃんのにゃん♡にゃん♡種付け24時♡』と書かれたDVDを再生プレーヤーに入れる。
    AV特有の安っぽいロゴ。ブラックスクリーン。
    そして……、
    ぱっと画面が明るくなって町中の映像が流れてカメラ役の男優がレンガ造りの建物の前で猫の獣人である女の子と出会う。
    テレビに映し出される女優さんは少し身長の低い可愛い系の顔立ちでおっぱいが大きくて、
    「まじのマジで猫耳じゃーん。天然物」
    真っ白な猫耳が男優の声に合わせてヒクヒクと動いた。
    「はぇ〜、かわゆ〜い」
    無意識に蕩けきった声が出る。
    緊張してるのか女優さんの耳はピンっと立っていて一つ一つの音を拾うように忙しない。
    なるほどねぇ、猫耳って前・後ろって結構可動範囲広いんだ。ふーん。
    一応個人の中の名目は資料映像なので、観察も怠らない。
    「猫耳い〜な〜。人間の耳より薄そー、噛みたーい」
    しょうもない感想とともに冒頭の雑談部分を飛ばして、服を脱がせるところから改めて再生する。
    『ん♡……もう?……せっかちなんだからぁ♡♡』
    ゆるふわあざとい薄ブルーのニットワンピを脱がしつつ、じゅるじゅると艶かしい音を立ててキスをする二人。
    時折女優が、ん♡ん♡と鼻から抜けるような吐息を漏らして大変にえっちぃが、ぶっちゃけそんなものはどうでもよく、
    「ほわぁぁ〜!!まじで耳がぺたんってなっとるぅぅう〜〜!」
    感動!!!
    エースのことを疑ってた訳じゃ無いけど、すっげぇぇ。
    体の体温が無条件でぶわわっと上がる。
    「え〜〜!かわいい〜〜!!やっぱ猫耳……」
    さいこーーー!!!!
    僕はその場で拳を突き上げ、そう叫び出たかった。
    でもできなかった。なぜかって?
    ……シャラリ。
    僕の耳元で聞き覚えのある軽やかな音がして、体が石になったように固まってしまったから。
    「なぁに?こーゆーのが趣味なの?小エビちゃん」
    続けて聞こえた甘い声にサァァァと身体中の血が引いていく。今しがた上がったばかりの体温が一気に下がる。

    あれ?鍵、しめたよね?僕。だから、さ。ここには誰もいないはずで。あれあれ??
    ……あ、そっか。ゴーストだ。ゴーストがいたずらしに来たんだ。
    精一杯の現実逃避をして頭を無理矢理納得させながら、一縷の望みにかけてぎぎぎっと声のするほうに顔をむければ
    「おこんばんわ〜、おじゃましてます♡」
    と僕の恋人であるフロイドがにっこりと微笑んだ。
    その笑顔すごくかわいいね!ボーテ!100点。
    …………どうして僕の頭ってこういう時までポンコツなんだろーね。

    -・-・-・-・-

    「……あと、えっと。お疲れ様です!!えへへっ!!今日はお仕事じゃないんですか?」
    怖すぎてまともに顔を見ることが出来ず、差し障りのない会話を続ける。
    浮気を疑われた主婦か?主婦じゃねーけど!!
    「うん。なんかねー、そーゆー気分じゃないからサボっちゃった」
    「あっはは!気分じゃないなら仕方ありませんねー」
    後で怒られるのは先輩かなー?僕かなー?……僕だろうな。
    ……つか、どうやって入った。鍵かけてあったはずなのに。
    慌てて寝室なドアを見たら鍵がこじ開けられてて、隙間からグリムが怯え切った表情でこちらをのぞいでる。
    のぞいて、い、
    『んにゃ♡ぁっ♡、♡!』
    静かな部屋に女の人の喘ぎ声が響く。
    「あかーーーん!!!!」
    グリムに見られたらまずい!!監督生としてまずい!!
    女優の喘ぎ声と乱れる姿が映るテレビをぶちりと消して、
    「グリムぅ〜?どうしたの〜?大丈夫〜」
    何事もなかったかのように笑顔を作って、怯えるグリムを抱きかかえてわざとらしく頬擦りをすれば
    「そいつが来てんのにお前が全然気づかないから、俺様が代わりに出たんだゾ。そしたら、ダメだって言われてたのにここの部屋に来て、鍵を無理矢理……。……お前一体何をしたんだゾ?」
    とこれまた小さな声で教えてくれる。
    「何も!!ね?何もしてないですよね?フロイド先輩!」
    グリムを抱いたフロイドに向き変えれば、彼は無表情のままちょうどテレビからDVDを取り出してる最中で。
    その行動になんとなーく嫌な予感がしたけれど、感情が読めなさすぎて下手に動けない監督生はフロイドの名前を何度が呼ぶだけにとどめる。
    「……チッ!!」
    舌打ちしました????今、この人舌打ちしたよね??
    書かれている題字を冷ややかな目で見ながらDVDを両手で持つフロイドに
    「や、あの。それエースから借りたモノでして…といってエースのモノじゃなくて、別の人から借りたやつを又貸しさせてもらってるっていうか…だから、それを壊されるとすごく困るっていうか」
    割られたらマジで洒落にならない。と今までにないくらいペラペラと舌を動かす。
    「……」
    「あ、あの、フロイド先輩?」
    グッと力が込められているのを察して、藁にも縋る思いで
    「それ、返して欲しーなぁー」
    と手を差し出す。
    けれど、フロイドはそんな監督生の手をチラリと一瞥して、
    それから
    ……パキン。
    「」
    DVDを容赦なく真っ二つに割った。

    カランカランと二つの破片が地面に転がり、ゆらりと動いたフロイドが監督生のほうに向き直る。
    「あは♡割れちゃったぁ♡」
    悪気はなかったのだと、甘い甘い声で笑いながらフロイドが謝る。
    しかしごめんねぇ。と謝る語尾の音は低く下がり、目は笑っていない。
    「ヒッ……」
    腕の中にいたグリムがそんなフロイドの姿をみてジタジタと暴れ出す。
    「っちょ、グリム暴れない……で、ってまって!!」
    恐怖の容量が越えたのか床に着地した瞬間、グリムは止まることなくそのまま4つの足で全力ダッシュ。
    そのまま薄暗い廊下に消えていった
    「逃げんなって!ばか、まって、置いてかないで!!グリム!!」
    必死な声も虚しく部屋に一人取り残された監督生は、知らない間に近づいていたフロイドに腕を絡められそのままソファーに連れていかれる。
    ひっ、ひっ、ひっ。
    軽い呼吸困難を起こしかけながら無表情のフロイドを真正面から見つめる。
    何その表情!何その感情!
    わっかんねぇ!!
    僕わかんない!ジェイド先輩じゃないからわかんないよ!!
    なんだ?ここは謝るのが最適解?でも浮気でも何でもないんだよ?ちょっと今後の妄想のためにAV見てただけじゃんか!!
    しかも妄想に出てくる主役は目の前のあなたですよ!フロイド・リーチ!!
    僕はもうあなたでしか抜けないんです。僕の息子はあなたにしか反応しないんです。
    僕の中ではあなたが猫耳っこであり、隣のエロい団地妻であり、生意気な幼馴染であり、性に貪欲なお姉さんなんです。
    だからほんと許してください。
    ほんの出来心だったんです。
    「小エビちゃん」
    ずっと黙ってたフロイドに呼ばれてビクリと体が震える。
    いや……はい。すいません。
    僕はソファーから降りて床に膝をつきそのまま頭を下げた。

    「大変申し訳ございませんでした」



    土下座したまま静止すること数分。
    いつでも極楽にいけるように心の中で般若心経を唱えていた頭上からフロイドの呆れたような声が降ってくる。
    「小エビちゃん何してんの?」
    「フロイド先輩にお詫びを……」
    「お詫び?なんで?なんで謝んの?謝るっていうのは悪いことをした人がするんだよ?小エビちゃんはなにか悪いことしたの?」
    いや、圧がすっごい……。
    怖すぎて顔をあげることができないのでフロイドの表情を読むことも当然できないんだけど、めっちゃ怒っている、と思う。
    ので、
    「フロイド先輩を放って猫耳娘にうつつをぬかしていました。大変申し訳ございませんでした」
    ここは誠心誠意謝る。
    別にうつつを抜かしてたわけではないんだけれど、フロイド視点では確実にそう見えていたであろうからここではあえて言い訳したり修正したりはしない。
    非を認め、今はただただ謝る。
    僕はいま深く深く、フロイド先輩はご存知ないかもしれないですけどマリアナ海溝より深く反省しております。
    ええ、本当に。
    「……ふーん?じゃあ……なに?小エビちゃんはオレよりあの猫女が好きなわけ?」
    少しの沈黙の後、正面に立つフロイドの気配が動きトントン……と苛立ちげに踵がなる音が響く。
    猫女ってそんな妖怪みたいに言わなくても……と思うがぐっと低くなる声のトーンとひりつく空気がガチなのですぐさま、いえ!と否定する。
    「俺が好きなのは、猫女ではなく猫耳です」
    「ねこみみ」
    僕の言葉をつたなく繰り返すフロイドに、勝機を見いだす。
    「はい、猫耳です」
    説明するタイミングはここだ、ここしかない。
    視線はオンボロ寮の古い床の一転を見つめ、
    「あの薄い耳が音に反応し動く様が好きなんです。そしてあの映像は猫耳について造詣を深めるために参考資料としてエースから借りたものになります」
    とバカ丁寧な口調で話す。
    ここで話しすぎてはいけない。興味を僕から逸らしてはいけない。
    ここでのフロイドの飽きは僕の命に関わる。
    いのち、に……。
    ってなんでこんなことになってんだ?
    ……たかがAV見たってだけでなんでこんな目に合わなきゃいけないわけ。ここは地獄か?……まぁ地獄みたいなもんか。
    一人でこの状況の面白さに狂い、つっこみ、心の中でくつくつ笑う。
    あほらしいなぁ。
    自業自得で地獄に転がり落ちた僕はそろそろ怒られてる状況にも疲れてきて、赦しを与えてくれる神にも罪人を罰する鬼にもなりえる恋人の出方を伺うためにそろりと顔を上げる。
    「……しりょう?どういう意味?」
    お、悪くない反応じゃーん。
    視線の先で綺麗な靴のつま先が僕の方に向けられる。
    どうやら話を聞いてくれるらしい。
    僕はまたまた頭を深く下げて、
    「フロイド先輩に猫耳が生えたらどうなるかなって思って」
    とやけくそ気味に本当のことを話してみる。
    「は?」
    わあ声のトーンが一気に氷点下。
    「100点満点の反応っすね。その新鮮な感情のままもう少しだけ僕の話を聞いてもらってもいいですか」
    何もしらない同級生が聞いたら失神するレベルのフロイドの冷たい視線を、たはは。と受け流しつつことの経緯と、己の猫耳愛、さらにこのAVを参考にフロイドで妄想しようとしてたことまで洗いざらい話す。
    我ながら何を言ってるんだ。
    でももう、どうでもよかろう。
    浮気を疑われるくらいなら(浮気ではない)、崇高な妄想のための参考資料でした。とクレイジーだけれども確かな真実を打ち明けたほうがいい。

    「……というわけでございます」
    「きも」
    結果、恋人であるフロイドから【気持ち悪い】という至極真っ当な意見をもらい、さっきとは別な意味で大変申し訳ございません。と頭を下げるはめになった。
    へ、へへ。自業自得とはいえ心が折れそうだぜ……。
    「付き合ってる相手がこんな、とかひきましたよね。すみません。でも、この性癖にかんしては矯正してどうにかなるってこともなさそうっていうか。まじで猫耳は男のロマンっていうか。ですんで、あの、ほんと、どうぞ、イヤになったらいつでも捨ててください」
    わかってるよ。
    フロイドの彼氏としてある程度の時間を過ごしてきた僕は、彼の性癖がいたってノーマルであるってことも理解してる。
    AVも男女がふつーにイチャイチャ甘ーいセックスしてるものが好きだってことも理解してる。
    だからさ!だからこそ、それゆえに、自分の欲望を押し付けたりせず!現実のフロイドを汚すことなく!妄想ですませようとして……ってこういう発想が気持ち悪いんだよね。はい、すみません。
    ……捨ててくれてもいいですよ。と自分で提案しておいてなんだがこれでもし本当に捨てられたらやりきれないので、その場合はこの場で腹を掻っ捌いて今回の騒動の発端であるエースの枕元に立ってやろうと思う。
    「……」
    黙っているフロイドをよそにエースへの恨み辛みを脳内で吐き出しつつ、ぐりぐりと床に頭を擦り付ける。
    もし僕がゴーストになっても、変わらず優しく接してくれるかな?たとえ別れたとしても普通の後輩として仲良くしてほしいな。
    「……はーぁ」
    どでかいため息!????
    捨てられる未来がいよいよ現実味を帯びてきて、ビクつきながら床に置いてる手に力をこめる。
    フロイドの審判はいかに……!?!???
    「…………いや、捨てねーケド。小エビちゃんの性癖がイカれてんのは前から知ってるし」
    勝訴ぉぉぉぉぉおおおおお!!!!!
    天から降ってくる声に身体中が湧き立つ。
    脳内では霞ヶ関にある裁判所から真っ黒い服をきた僕が『勝訴』と書かれた紙を広げて報道陣に見せびらかす。
    「ありがとうございます。ありがとうございます…………!!」
    脳内報道陣に向けてのメッセージが声から漏れ出てたらしい。
    天から二度目のきもい。という率直な言葉を承り、
    そして、はぁーあ。と本日何度目かになる大きなため息と共にフロイドの気配が動く。
    顔上げてよ。と今までとは違い少し近い距離からの声に恐る恐る顔を上げると、無表情だった時とは違って少しだけばつの悪そうにきゅうと口元を結んだとても可愛い恋人が僕に目線を合わせるようにしゃがんでいた。
    「……猫の獣人のほうがいい、とか、猫女のほうがいい、とか、そーゆーわけじゃないなら、それでいいから。オレもう、怒って、ないから」
    ……あー。
    慈悲深い女神って本当にいるんだな。
    …………まぁフロイドは男であり、女神ではなくオクタヴィネル寮に属してるウツボの人魚なのだけれど。
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    inugoyagoyagoya

    MEMO猫の日ということで、🦐🦈の🦐が猫耳獣人にうつつを抜かす話。はじめまして、おはようございます。
    挨拶は大事ですよね。監督生と申します。
    突然ですが本日は何の日かご存じですか?
    そうですね。にゃんにゃんにゃんで猫の日ですね。
    たくさんのご回答ありがとうございます。
    皆さんは猫、好きですか?
    僕は好きです。ええ、とても。
    かわいいですよねー。あのフォルム。きゅるるんとした目。人の家の室外機の上でひなたぼっこをするあの図々しさ。でも気安く触らせてくれなくて、近づいたら「邪魔なやつが来たぜ」って睨んで去って行くふてぶてしい感じ。
    たまりませんよね。
    さて話は変わるんですが、皆さんは猫耳、好きですか?
    猫ではなくて、猫耳、ですよ。頭のうえにちょんと生えてる三角のお耳。音に反応してピクピク動いて、ふわふわの毛に覆われてるあれ。
    僕は好きです。大好きです。

    さて、またまた話は変わるんですが、僕は今食堂にいるんですよ。
    「ーーのさ、課題あとで映させてよぉ、監督生♡」
    話のほとんどを聞いてなかったが、まぁ最後の一文から察する必要もなくろくでも無さそうな内容なので、猫なで声で甘えたように肩に擦り寄るエースに中指を突き立て、舌を出す。
    「気持ち悪い声出すんじゃねぇ 9042

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    inugoyagoyagoya

    MAIKING魔獣化した🦐の続き
    ⚠️🦐の魔獣化
    特殊な職業が出てくるので注意。

    最初は↓
    https://twitter.com/inugoyagoyagoya/status/1336172280448045060?s=20
    🦈が魔獣化した🦐と再会してどれだけたったか、あるとき学園に黒服を着た人達がやってくるの。
    いつもへらへらしてる🎭が表情を固くして対応しているから🦈は気になって
    「あいつら何者?みんな同じ服黒服着ててウケる」って🐬に聞くんです。
    そしたら🐬もその隣にいる🐙も固い顔して「対魔獣処理委員会です」って言うんです
    対魔獣処理委員会。凶暴化した魔獣の扱いに特化した専門の部隊。
    「…え?🐱ちゃん、なにかしたの?」
    🦈はね、この時点で黒服の奴らがなんのために来たのか、なんとなくわかっちゃうんですよ。
    でも信じたくないから、しょうもないことを言っちゃう。
    「なに?いつも盗み食いばっかしてるけどさぁ〜、だからってさ…」
    「🦈」
    それを🐬が遮るんです。
    「🦈。あの方達は別の魔獣を探しているんだそうです」って。
    「ここ最近学園近くで大型の魔獣が目撃されているんです。街も近くにありますし、万が一暴れられたら危険とのことで駆除されるそうですよ」
    駆除、その二文字が🦈の心をぐさりと抉るんです。
    でも、まさか。それが、こえびちゃんのことだとは、でも…。
    何も言えない🦈のことを🐬は数秒観察 2657