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    last_of_QED

    @last_of_QED

    ディスガイアを好むしがない愛マニア。執事閣下、閣下執事、ヴァルアルやCP無しの地獄話まで節操なく執筆します。デ初代〜7までプレイ済。
    最近ハマったコーヒートーク(ガラハイ)のお話しもちょびっと載せてます。

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    last_of_QED

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    皿の上の鰯、それは愛する主人のために。
    執事閣下🐺🦇御馳走とはなにか。

    #ディスガイア
    disgaea
    #執事閣下
    deacon
    #フェンヴァル
    fenval

    御馳走の作り方【御馳走の作り方】



    「また鰯かよ! ボクは魚は嫌いだって言ってるだろ!」
    「お前らの分はついでだ。ヴァル様が『同じ釜の飯を食わせたい』と仰るから作ってやっているが……まさかそのご厚意を無下にする訳ではないだろうな?」
    「いや美味しいのよ? 美味しいんだけどこう鰯続きで喜ぶのはアンタのご主人様ぐらい……って……うん?」

     隣の席から此方を見やり、プリニー帽の少女は首を傾げた。此処は泣く子も黙る魔界のどん底、地獄。仲間たちとの賑やかな食卓に、にわかに静寂が訪れる。

    「なんかヴァルっち……具合悪い?」
    「……お口に合いませんでしたか?」
    「なっ、なんのことだ。美味いぞイワシは。味付けも申し分ない」

     そう言った割に、皿の上の鰯ソテーはほとんど減っていなかった。誤魔化すように一口、その身を口に運ぶ。バターの香ばしさは勿論のこと、香草が鼻を抜け、臭みは消えている。安価な魚は良い料理人により工夫され、風味豊かに調理されていた。

     正直なところ俺は血を絶ってからというもの、鰯であれば何であろうが──極端に言えば生でも──好んで食べたが、飽きが来ないようにと慮ってフェンリッヒはこれまで、様々調理を施してくれた。隙あらば料理に血を含ませる抜け目のなさはあるものの、それは悪魔ゆえ。根は世話焼きな狼男で、結局は主人を大切に想ってくれているのだろう。
     それが伝わってくるからこそ、時にどうしようもなく胸が詰まった。俺自身は血を飲めなくなったことに微塵も後悔はない。しかし、暴君の力に惚れ込んで忠誠を誓ったはずのフェンリッヒのことを思うと、あまりにも不憫だった。申し訳ない気持ちも、ないと言えば嘘になる。だが、それを救い上げてやるための選択肢を堕ちた俺は最早持ち得ない。
     魔界政腐の再教育を大方終えた今なお、地獄に居座る俺に文句も溢さず仕え、甲斐甲斐しく世話を焼き、鰯を調理してくれる……そんな従者の忠義には頭が上がらない。

     フェンリッヒが調理をすれば、どんなに質素な鰯であったとしても皿の上は御馳走に思えたものだ。全てを呑んで。それでも俺に尽くそうというその覚悟が、皿の上の彩りから、取り除かれた小骨から、分かってしまう。これを御馳走と言わずして、なんと言うだろうか。次はイワシがどう調理されるのか、気付けばそれが地獄に堕ちてからの俺のささやかな楽しみになっていて……フェンリッヒとは本当に善き絆で結ばれたと、改めて思う。

     フェンリッヒの作ってくれる鰯料理。そんな御馳走の皿に俺がほとんど手を付けられないでいるのには、当然訳があった。咀嚼したものをごくんと飲み込むのに、随分と時間がかかったように思えた。

     身を乗り出したフーカが俺の額に手を伸ばし熱を計り始める。ヴァル様に気安く触れるな、とフェンリッヒがたしなめるが言うことを聞く小娘ではない。

    「熱あるんじゃない?」
    「Aウイルスにも屈しなかったお前が……? 大丈夫なのか?」

     フーカが熱を案じれば、向かいの席で死神の少年は顔色を変えて心配を口にする。
     Aウイルス。アクターレ獄長を発端とした脅威の病原体が魔界中に蔓延し、全ての悪魔がアクターレ色に染まろうとしたことがかつてあった。フーカ、デスコ、エミーゼル、フェンリッヒ。この場にいる俺以外の全員が一度はアクターレになっている。その強力なウイルスさえ跳ね除けた俺が、風邪を引くなどあり得ないことなのだ。

    「何を言うか、俺は健康だ。イワシを食べているからな」
    「その大好物のイワシを残してるって……これはヴァルっちさんの一大事なのデス!」

     大袈裟だ、何でもないと弁解する最中、手が滑りナイフを落としてしまえばお節介な仲間たちは一層俺の体調不良を疑った。遂にはフェンリッヒまで側へと駆け寄ってきて、俺の肩に触れる。

    「閣下、本当にどうなさいましたか。体調が優れないのなら少しお休みになっては……」

     触れる手を払い除ければ指先で熱がピリと弾けたような気がした。

    (触るな、身体が、熱い……)

     此処にいても騒ぎ立てられるだけだと察した俺は、一同へ休息を取ると告げ、食卓を後にする。幼子でもあるまい、これが風邪でないことなど自分が一番良く分かっている。
     自室へと戻る途中、拠点を見回りしていたプリニーたちに監視を務めるよう命を下し連れ立って、自室の扉前へと配備した。

     灼熱を思わせる夕暮れ時のような最果ての陽。それが煌々と差し込む長い廊下の突き当たり、ようやく辿り着いた部屋の内側から鍵を掛け、一呼吸置く。ドアに寄り掛かるようにしてその場にへたりと座り込めば自身の内側でどっと熱が増したのを感じた。
     調子が優れないのは今朝からだ。理由は薄々分かっている。シモベとの半端な接触のせいに決まっているのだ。

     昨夜、たまには酒でもと部屋に誘われ、ワインをいくらか飲んだところまではまあ、よかった。2000歳を超えた大人が2人、酒の嗜み方ぐらいは知っている。誓って泥酔などしていないし、互いに程良くほろ酔いだったはずなのだが。
     ……むしろほろ酔いだったからこそ、なのだろうか。日付が変わるよりも前に、誘(いざな)われるようベッドにもつれ込んだのだが妙なことにいつもとは少々勝手が違った。
     フェンリッヒが手を出してこなかったのだ。いや、これは言葉の綾で、正確には手は出された。手から先が、なかったのだ。

     「触れても良いですか、ヴァル様」
     夜の帳、フェンリッヒは俺に触れようとする時、必ずそう問い掛けて許可を求めた。俺はと言うと、いつも曖昧な返答ではぐらかしてきた。良いぞと受け入れてしまえば悪魔の本分が許さぬ気がしたし、好きにしろと投げやりに放つには俺はこの男に思い入れを持ち過ぎた。
     やはり昨夜もそんな問答から始まったのだが、フェンリッヒは胸の杭に口付けるところから始め、丁寧に時間をかけて左右の蕾に触れていった。緩く指先で転がされたと思えば今度は突然強く捻られて、その意地の悪い緩急につい息は上がった。
     手先のただそれだけで翻弄される己の性感にいたたまれなくなると同時に、目の前の男の手技を忌々しく思う。整った顔立ちを考えれば経験は少なくなかろうが、あまりにも手慣れたその指付きは少しの嫉妬を覚えるほどだった。
     胸に受けた快感にもじ、と脚を閉じればやや兆した自分の雄を内股に感じて顔が火照る。逃げ腰のくせ、それなりに感じてしまっている自分を認めたくはなかった。背後から抱き抱えるようにして腰を引き寄せられれば、衣服越しに硬いものが尻に当たったがシモベは何も言ってこない。当然、勢いに任せて服を脱がせてくるような素振りもなかった。

     押し付けられるものから逃げるように身体が前のめりになれば、逃がさんとばかりに壁際まで詰め寄って来るくせ、俺が溺れてしまうまでは追い詰めない。爪先で弾かれ胸に走った快感にのけ反って声を漏らせば触れる手は律儀に止まって。
     ……何を考えているのやら、そんな調子でフェンリッヒは愛撫だけを俺に落として、然るべきところまで行為を続けなかった。指紋がベタベタと残るほどに触れておいて決して俺を暴こうとはしなかったのだ。当然、彼自身も満足出来ていないはずだ。それなのに、何故なのか。
     向こうから出してきた手を此方が引き止めるのも釈然とせず、半端な状態で戯れを終わらせてしまったのが此度の不調の原因なのだろう。何にせよ、机上の食事に手を付けるだけ付けてぐちゃぐちゃに掻き乱しておいて、挙句口を付けないとは一体どういう了見だ。

     どうすればこの火照りはおさまるのか。昨夜を思い出しながら自分の身体にぎこちなく指を這わせてみるが、どうにも上手くいかない。触れ方がいけないのか、それとも。燻るばかりで、熱は身体のうちに留まったままだ。
     もどかしい。苦しい。
     ──あの時、フェンリッヒは俺の身体にどう触れていただろうか。闇雲にこんなことをして、俺は一体何を求めている? 俺はシモベに、"何をされたい"のだ?
     認めたくない問いと、その答えが頭の中に浮かんできては、都度打ち消すように、首を振った。いっそのこと、これが風邪ならどれだけ良かっただろうか。

     ままならないものだな、自然と口からこぼれ出てから、風邪と思い込んで眠ってしまおうと決めた。そも、吸血鬼は昼間は棺桶に入り、夜活動するものだ。言い聞かせながら棺へ入り、その蓋を閉めかけた時だった。見覚えのあるグローブの手が、重厚な蓋を押し留める。にこりと笑う従者が此方を覗き込んでいる。

    「フェンリッヒ?! 何故お前が此処に……」
    「我が主人のことが心配で居ても立っても居られませんでした」
    「そうではない、監視のプリニーがいただろう」
    「ああ、それでしたら買収済みです。ヴァル様が追加で召し上がるはずだった分のイワシソテーで」

     主人の使い魔さえも買収する悪魔ぶり、流石はフェンリッヒと言ってやりたいところだが鍵はどうしたのだ、鍵は。俺の部屋にプライバシーはないのか?! 大袈裟に騒ぐ俺を静かに見下ろす狼男の目に邪な色が滲むことに気が付けば、不思議と喋る口は止まり、また、奥のほうから身体が疼き出す。

    「それに、どうやらお困りのご様子。このシモベがお手伝い致しましょうか? ──お望みなら、昨晩の続きをしても良いですよ」
    「!」

     俺に許可を求めてこなかったのは恐らくこれが初めてだ。無遠慮に伸ばされる手を拒めないのはどうしてか。服の上から触られたところから、篭っていた熱が弾けて「気持ちいい」に変わっていく。自分でなぞることでは何も感じなかったというのに、この男に触れられるとどうしてこうも気持ちが昂るのか。いつも不思議な気持ちで身を委ねていた。しかし今日は、待ち焦がれていたはずのこの心地良さが、少し怖い。
     ぎゅっと目を瞑れば前髪を掻き上げ、額に口付けが落とされる。フ、と柔らかに笑う気配がして、上から声が降ってくる。

    「そんなに緊張していては『お風邪』は治りませんよ、閣下」

     いっぱいいっぱいの自分を前に余裕を見せるフェンリッヒ。ムッとして腕へと牙を突き立てる。血を吸うつもりは毛頭ないので結果として甘噛みとなったそれは、フェンリッヒに火をつけた。
     棺の底へぐいと押し付けられ、首を噛まれれば痛みが走る。首元を噛まれる吸血鬼がこの世に在って良いのだろうか。
     狼男にとかく言っても仕方なかろうが、牙の立て方がなっていない。本来の吸血はほとんど痛みを伴わない。それどころか快感すら与えるようになされるものだ。……吸血ではなく、食い殺そうと言うのならこの噛みつき方は正解ではあるのだろうが。
     噛むならもっと上手く噛まんか、従者の腹を蹴り上げ、突き放す俺にそれでもフェンリッヒは迫る。

    「それでしたら閣下、私に正しい牙の立て方を教えてください」

     長い銀の髪を掻き分け首元を顕にする従者に反射的に喉が鳴る。
     400年。これだけの期間血を絶っても、吸血鬼の本能は潰えない。けれど、俺は血はもう吸わないと心に決めている。約束は、決して違えない。
     しかし、一瞬。たった一瞬の揺らぎがあった。それは、身体の奥底から込み上げる飢餓感によるものだと嫌でも分かった。狼男の金色の瞳に映る飢えた顔の自分が、今此処にいる俺自身を見据えていた。チョーカーでフェンリッヒの喉元までくいと引き寄せられれば理性が崩れ落ちて行く。

    「よせ、駄目、だ……」
    「ヴァルっちー! 大丈夫?」

     ドアをノックする音で、2人の間にピリと緊張が走る。フェンリッヒが咄嗟に寝床の棺から距離をとると間髪入れずに騒がしい声とその主が飛び込んで来る。

    「お見舞いに来たデス!」
    「イワシエキスなら飲めるか? 風邪の時にこんなの飲んだらもっと具合悪くなりそうだけど……」

     ノックが出来る様になっただけ小娘を褒めてやらねば。もしこのノックが無ければ……いや、それよりも、俺は何に魅入られていた? 俺は何をするところだった?

    「あれ、フェンリっちいたんだ。相変わらず過保護ねー」
    「当然だ。我が主人、ヴァルバトーゼ様の身に何かあっては困るからな」

     何事もなかったかのよう、従者は飄々と言葉を交わす。そのすぐ隣からエミーゼルがこちらの様子をうかがっている。いくら平静を装っても、表に現れる変化は子供の目さえ誤魔化せない。

    「ヴァルバトーゼお前、汗が……着替えたほうが良いんじゃないか? 暖かくしないと……」
    「フェンリっち、手伝ってあげなさいよ!」
    「デスコたち、もしかしてお着替えのお邪魔になってるデスか?」

     きゃいきゃいと盛り上がる3人が選り取り見取りの差し入れを置いて部屋を出て行く素振りを見せた時、理由も分からないままに、咄嗟に呼び止める自分がいた。

    「待て、お前たち。その……折角見舞いに来たのだろう、着替えは後でいい。もう少しだけ、いてくれないか」

     仲間たちは、しばらくきょとんとした顔で固まっていたが、俺の意図するところが言葉そのままの意味だと分かると、嬉しそうに顔を輝かせた。

    「……お姉さま。デスコ、なんだかとってもキュンとしたデス」
    「今此処にアルティナちゃんがいないのが悔やまれるわ……」
    「こんな風に引き止められたら、幾ら悪魔でも放っては帰れないな!」
    「……流石は閣下、人徳ですね」

     濡れタオルだ鰯粥だと大はしゃぎする3人をよそに此方へと目配せする従者の瞳は、他の者には気付かれぬほどささやかに、しかし変わらず妖しい色を携えていた。


    fin...


    ++++++++++++++++++++


    多くのデ4プレイヤーが、フェンリッヒが主人にイワシ料理を振る舞う妄想をしたことがあると思うのですが、とある気付きが今日ありました。
    圧倒的な暴、その力と信念に魅入って暴君へと忠誠を誓ったフェンリッヒ。しかし肝心の主人の力は血を絶ったことでほとんど失われてしまった。代わりに摂取しているのがイワシ。裏を返すとイワシさえなければ閣下は生きる為に最早血を吸う他ないのです。魔力みなぎるヴァルバトーゼを知るフェンリッヒは、イワシという代替物をあまり好ましく思っていないのではないかな。
    一方で、主人の命を繋ぎ止めた唯一無二の特別な栄養食であることもまた事実。リッヒはイワシに複雑な気持ちを抱いてるんじゃないか。
    それを踏まえると、イワシを美味しく調理するという行為は、なんだかとんでもない愛の証に思えてしまうのです。仮に食べ過ぎて飽きたりして?イワシすら摂れなくなってしまうようなことがあっても最期まで閣下は血を飲まないだろうとリッヒは気付いていて。だからせめて主人にイワシだけはいつまでも美味しいと、好きでいてほしいと、暴君の面影を振り払って、願って、料理の腕を振るうんじゃないかなとか。(全て私の妄想ですごめんなさい)

    けれど、綺麗事だけでは終わりません。此処は魔界。悪魔は見返りを求めます。「己の腹も満たさなければ」。

    fin.とするつもりでしたが、「御馳走様」を言うまでがお食事ですよね。続きは妄想してください。私も妄想します。お粗末様でした。
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    💗💗🐟💗💗🎂💕🐟❤💖❤❤❤❤🐟💞💕💕💕💕💕💕💕💕💕❤❤❤❤🌋
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    last_of_QED

    BLANK【5/24 キスを超える日】ほんのり執事閣下【524】



     かつてキスをせがまれたことがあった。驚くべきことに、吸血対象の人間の女からだ。勿論、そんなものに応えてやる義理はなかったが、その時の俺は気まぐれに問うたのだ。悪魔にそれを求めるにあたり、対価にお前は何を差し出すのだと。
     女は恍惚の表情で、「この身を」だの「あなたに快楽を」だのと宣った。この人間には畏れが足りぬと、胸元に下がる宝石の飾りで首を絞めたが尚も女は欲に滲んだ瞳で俺を見、苦しそうに笑っていた。女が気を失ったのを確認すると、今しがた吸った血を吐き出して、別の人間の血を求め街の闇夜に身を隠したのを良く覚えている。
     気持ちが悪い。そう、思っていたのだが。
     ──今ならあの濡れた瞳の意味がほんの少しは分かるような気がする。

    「閣下、私とのキスはそんなに退屈ですか」
    「すまん、少しばかり昔のことを思い出していた」
    「……そうですか」

     それ以上は聞きたくないと言うようにフェンリッヒの手が俺の口を塞ぐ。存外にごつく、大きい手だと思う。その指で確かめるよう唇をなぞり、そして再び俺に口付けた。ただ触れるだけのキスは不思議と心地が良かった。体液を交わすような魔力供給をし 749

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

    last_of_QED

    DOODLE主人に危機感を持って貰うべく様々なお願いを仕掛けていくフェンリッヒ。けれど徐々にその「お願い」はエスカレートしていって……?!という誰もが妄想した執事閣下のアホエロギャグ話を書き散らしました。【信心、イワシの頭へ】



    「ヴァルバトーゼ閣下〜 魔界上層区で暴動ッス! 俺たちの力じゃ止められないッス!」
    「そうか、俺が出よう」

    「ヴァルっち! こないだの赤いプリニーの皮の件だけど……」
    「フム、仕方あるまいな」

    何でもない昼下がり、地獄の執務室には次々と使い魔たちが訪れては部屋の主へ相談をしていく。主人はそれに耳を傾け指示を出し、あるいは言い分を認め、帰らせていく。
    地獄の教育係、ヴァルバトーゼ。自由気ままな悪魔たちを良く統率し、魔界最果ての秩序を保っている。それは一重に彼の人柄、彼の在り方あってのものだろう。通常悪魔には持ち得ない人徳のようなものがこの悪魔(ひと)にはあった。

    これが人間界ならば立派なもので、一目置かれる対象となっただろう。しかし此処は魔界、主人は悪魔なのだ。少々横暴であるぐらいでも良いと言うのにこの人は逆を征っている。プリニーや地獄の物好きな住人たちからの信頼はすこぶる厚いが、閣下のことを深く知らない悪魔たちは奇異の目で見ているようだった。

    そう、歯に衣着せぬ言い方をしてしまえば、我が主人ヴァルバトーゼ様は聞き分けが良過ぎた。あくまでも悪魔なので 7025

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    CAN’T MAKE十字架、聖水、日の光……挙げればきりのない吸血鬼の弱点の話。おまけ程度のヴァルアル要素があります。【吸血鬼様の弱点】



    「吸血鬼って弱点多過ぎない?」
    「ぶち殺すぞ小娘」

    爽やかな朝。こともなげに物騒な会話が繰り広げられる、此処は地獄。魔界の地の底、一画だ。灼熱の溶岩に埋めつくされたこの場所にも朝は降るもので、時空ゲートからはささやかに朝の日が射し込んでいる。

    「十字架、聖水、日の光辺りは定番よね。っていうか聖水って何なのかしら」
    「デスコも、ラスボスとして弱点対策は怠れないのデス!」
    「聞こえなかったか。もう一度言う、ぶち殺すぞアホ共」

    吸血鬼の主人を敬愛する狼男、フェンリッヒがすごみ、指の関節を鳴らしてようやくフーカ、デスコの両名は静かになった。デスコは怯え、涙目で姉の後ろに隠れている。あやしい触手はしなしなと元気がない。ラスボスを名乗るにはまだ修行が足りていないようだ。

    「プリニーもどきの分際で何様だお前は。ヴァル様への不敬罪で追放するぞ」

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    「違うってば!むしろ逆よ、逆!私ですら知ってる吸血鬼の弱 3923

    last_of_QED

    DONEしがない愛マニアである私が原作の奥に想い描いた、ディスガイア4、風祭フーカと父親の話です。銀の弾は怪物を殺せるか?【銀の弾など必要ない】



    白衣が揺れる。頭をかいてデスクに向かうそのくたびれた男に私は恐る恐る声を掛ける。

    「パパ、お家なのにお仕事?」

    男はこちらを振り返りもしない。研究で忙しいのだろうか。それとも、私の声が届いていないのだろうか。
    父親の丸まった背中をじっと見つめる。十数秒後、その背がこわごわと伸び、首だけがわずかにこちらを向く。

    「すまん、何か言ったか?」

    この人はいつもそうだ。母が亡くなってから研究、研究、研究……。母が生きていた頃の記憶はあまりないから、最初からこんな感じだったのかもしれないけれど。それでも幼い娘の呼び掛けにきちんと応じないなんて、やはり父親としてどうかしている。

    「別に……」

    明らかに不満げな私の声に、ようやく彼は腰を上げた。

    「いつもすまんな。仕事が大詰めなんだ」

    パパのお仕事はいつも大詰めじゃない、そう言いたいのをぐっと堪え、代わりに別の問いを投げかける。

    「いつになったらフーカと遊んでくれる?」

    ハハハ、と眉を下げて笑う父は少し疲れているように見えた。すまんなあ、と小さく呟き床に胡座をかく。すまん、それがこの人の口癖だった。よう 3321

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    地獄の教育係、ヴァルバトーゼ。自由気ままな悪魔たちを良く統率し、魔界最果ての秩序を保っている。それは一重に彼の人柄、彼の在り方あってのものだろう。通常悪魔には持ち得ない人徳のようなものがこの悪魔(ひと)にはあった。

    これが人間界ならば立派なもので、一目置かれる対象となっただろう。しかし此処は魔界、主人は悪魔なのだ。少々横暴であるぐらいでも良いと言うのにこの人は逆を征っている。プリニーや地獄の物好きな住人たちからの信頼はすこぶる厚いが、閣下のことを深く知らない悪魔たちは奇異の目で見ているようだった。

    そう、歯に衣着せぬ言い方をしてしまえば、我が主人ヴァルバトーゼ様は聞き分けが良過ぎた。あくまでも悪魔なので 7025

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    DONER18 執事閣下🐺🦇「うっかり相手の名前を間違えてお仕置きプレイされる主従ください🐺🦇」という有難いご命令に恐れ多くもお応えしました。謹んでお詫び申し上げます。後日談はこちら→ https://poipiku.com/1651141/5571351.html
    呼んで、俺の名を【呼んで、俺の名を】



     抱き抱えた主人を起こさぬよう、寝床の棺へとそっと降ろしてやる。その身はやはり成人男性としては異常に軽く、精神的にこたえるものがある。
     深夜の地獄はしんと暗く、冷たい。人間共の思い描く地獄そのものを思わせるほど熱気に溢れ、皮膚が爛れてしまうような日中の灼熱とは打って変わって、夜は凍えるような寒さが襲う。悪魔であれ、地獄の夜は心細い。此処は一人寝には寒過ぎる。

     棺桶の中で寝息を立てるのは、我が主ヴァルバトーゼ様。俺が仕えるのは唯一、このお方だけ。それを心に決めた美しい満月の夜からつゆも変わらず、いつ何時も付き従った。
     あれから、早四百年が経とうとしている。その間、語り切れぬほどの出来事が俺たちには降り注いだが、こうして何とか魔界の片隅で生きながらえている。生きてさえいれば、幾らでも挽回の余地はある。俺と主は、その時を既に見据えていた。堕落し切った政腐を乗っ取ってやろうというのだ。
    2926