春の嵐一ノ瀬銀河×朝日奈唯
「銀河君、頼まれた楽譜持ってきたよ」
バスのドアを開けて中を覗いても、肝心の銀河君の姿がない。
鍵がささっていないとは言え、車のロックをかけないままどこかに行くなんて
不用心にも程があると言うものだけど銀河君のことだ、きっとカップ麺のお湯を求めて菩提樹寮の台所にでも行っているのだろう。
自分で楽譜を頼んだくせに、本当そう言うところはちっとも変わってない。
いつもふらりと現れて、そして気が付けばふらりとどこかへ行ってしまう
ふわふわと掴みどころのないまるで雲のような存在、それが一ノ瀬銀河と言う人間だ。
「毛布も出しっぱなしにして……」
座席に乱雑に置かれた毛布を畳もうとした時、テーブルの上に散らばった譜面に沢山の注釈が書き加えられていることに気が付いた。
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