パプリカはティファニーブルーの辻褄合わせ/尾月 妙だ、と思った。
仕事を終えて帰宅し、家の扉を開け、玄関に同居人の革靴が揃えられているのを確かめ、目の前の廊下を突っ切った先にあるリビングの扉を見て、そう思った。
同居人はリビングの扉だけは開き放しにする癖がある。暖房や冷房を使う時は注意するが、他は特に開けてようが閉めていようが気にならないから何も言わない。
もう暖房は必要のない春の終わり。夏までは少し遠いから冷房も要らない。
ぴったりと律儀に閉じられた扉は平らな木目で帰宅した小汚いサリーマンを迎えている。
珍しいな、よりも、妙だ、の感想が勝った。
脱いだばかりの革靴を一回り大きい革靴の際に並べ、先に左側の自室に向かう。スーツをハンガーに掛けてTシャツとスウェットに着替えると、漸く肩の力が抜ける。
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