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    somakusanao

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    不謹慎な話の続き。今日はドラケン

    #ココイヌ
    cocoInu

    『禁じられた遊び』⑤龍宮寺堅「九井一という男は存在しません」

     ある日、警察を名乗る二人組の男がD&D MOTORSにやってきて、そう言った。龍宮寺にではない。彼らの目的は九井のおさななじみである乾青宗だった。
     佐野万次郎が死んだ。
     梵天は打撃を受け、その後釜を狙い、大きな抗争が起こった。幹部の数人が亡くなったとされ、確認が急がれている。そのひとりが九井一だった。
     だがしかし。
    「九井の戸籍はでっちあげたものだということが分かりました。父親とされる九井××と九井一のDNAから、親子関係は認められない。赤の他人です。九井××から見知らぬ子供の身柄を引き取っただけだという証言もある」
     乾は一言もしゃべらない。代わりに龍宮寺が「じゃあ、いったいどこのだれなんだ」という羽目になった。
     それを調べに来たんです、と警察は言った。
    「小学生時代、彼と一番親しかったのはあなただと伺っています。昔のことで、むずかしいとは思いますが、彼の出生や出身地にまつわる話を聞いたことはありませんでしたか」
     乾はやはり反応をしない。龍宮寺が「おい」と促すと、ようやく口を開いた。
    「ココはそんなへまをしない」
     警察は顔を合わせる。
    「それは……不審な点がなかったということですか」
    「なかった」
    「転入前の学校について聞いたことは?」
    「聞いたことない」
    「小学校の後も、あなたとの付き合いがいちばん長い。特定の地域について九井から聞いたことは」
    「ない」
     取り付く島もないとはこのことだろう。乾をよく知っている龍宮寺は慣れているが、警察は色めき立っている。乾と九井が所属していた黒龍は犯罪ありきのチームだった。九井や芝大寿がうまくやっていたので証拠は残っていないが、警察に目をつけられていただろう。そもそも乾に対する心象がよくない。その上この対応だ。不快に思うのは同然だろう。だが、乾は犯罪者ではない。共犯者でもない。善良な市民である。厳しく問い詰めたいところを、ぐっとこらえているのが手に取るように分かった。
    「近隣で万引き等の軽犯罪を繰り返していた少年がいたことがわかっています。彼がいなくなった時期と、九井一が警察に保護された時期がおなじです。おそらく彼が九井一でしょう。××というところのアパートですが、九井から聞いたことはありますか?」
    「聞いたことはないが、近所だな。うちから歩いて十五分くらいのところだ」
     はじめてまっとうな反応に、警察が頷く。
    「ヤクザが住んでいると噂があって、親や教師から近づくなと言われていた」
    「そのようですね。じっさい××組の者が女のもとに出入りしていたようです。彼女は子供を産んだことを認めました。その子供は行方不明になっている。おそらくその子供が九井一だと思われます」
     乾は反応しない。警察が溜息をつく。
    「ヤクザの父親に情婦の母親、子供は幼いころから犯罪を繰り返していた。九井一は根っからの悪人ということですか」
     乾が顔をあげ、まっすぐに射抜く。
    「テメェ、ぶっ殺すぞ」
    「は、」
    「ココは悪人じゃねぇ。オレの、」
     そこで乾は区切りをつけた。咄嗟に龍宮寺は口を挟む。
    「親友で幼馴染だろ」
     乾が龍宮寺を睨む。噛みしめるように、「そうだ」と言った。
    「ああ、そうだ。親友で、幼馴染だ」
    「でも、こいつのところに会いに来てはいません。あいつの最後の良心なんだと思います」  
    「なぜそれがわかるのですか」
     二人組の警察の、年嵩のほうの男が聞いた。龍宮寺はちらりと乾を見る。
    「今まで誰にも言ったことはありません。こいつにも黙っていましたが、この店を開くときに、九井から電話がありました。開業祝いに金を送る、と」
     警察がはっと息を飲む。喉から手が出るほど欲しかった九井一の形跡だ。
     乾がじろりと龍宮寺を見る。龍宮寺は肩をすくめただけだ。
    「ほんとうに送られてきたんですか?」
    「俺の親代わりをしてくれた人が経営するソープ店の名義で送金がありました。開業のため、店長から金を借りたことは確かです。でも店から送金なんてありえません。だいいち店の口座番号とは違う。店長にも聞きましたが、知らないとのことでした。九井から金を送ると一方的に言われていました。だから、九井からの金だろうと思いました」
     年嵩の刑事が若い刑事を見る。その足で銀行に確認に行くのだろう。
     ふたりが帰っていくまで、乾はずっと黙ってカマイリソいた。

    「ドラケン」
    「なんだ」
    「おまえに頼みがあるんだ」

     龍宮寺はゆっくりと頷いた。おまえのすきにすればいいよ。



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    somakusanao

    DONEココイヌちゃんがチェーン系列のフード店でデートするお話です。⑤カラオケ店
    カラオケ店はフード店じゃないというごもっともなつっこみは、心の中でお願いします…
    ココイヌデート⑤カラオケ店「九井さん! 来ました!」

     キッチンに衝撃が走った。
     九井さんは、べつにこのチェーン系列カラオケ店のマネージャーでもエリア長でもなんでもない。一般人である。たぶん一般人ではなく、おそらく関東卍會の、げふんげふん、いや、うん、それは確証がないし、考えないことにして、一般人ということにしておく。
     身なりからして金を持っているであろう彼だが、なぜかときどき当店をご利用される。そしてキッチンのストックを空にしていく。なにしろ九井さんはよく食べる。めちゃくちゃ食べる。マジであの細い体のどこに入っているんだというくらいのブラックホールだ。
     そのうえ九井さんはメニューをいろいろと楽しみたい方で、「トマトの海賊風チキンみぞれ煮バゲット添え」なんていう当店で三カ月に一回も出たことのないメニューも頼む。そのたびにキッチンはレシピはどこだと探す羽目になる。しかも、九井さんはたいてい一時間でご退室される。つまりスピード勝負なのだ。
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    somakusanao

    DONEパラレルです。タケミっちがイヌピのお嫁さんになるパラレルですが、ココイヌです。パラレルなので、書きたい放題です。たぶんバジさんをはじめて書きました。たのしいです。
    思った以上にタケミっちの話になってしまった。
    かみさまのくに 川端康成の有名な小説の書き出しに「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった」とある。オレが鳥居をくぐり抜けたら、そこは神様の国だった。
     オレもね、おかしいなと思ったんだよ。こんなところに鳥居なんてあったっけ?って。
     そのときオレはバイトに遅刻しそうになって、携帯片手に走っていた。30分にタイムカードを押さなきゃいけないのに、携帯が示す時刻は27分。ちなみに職場まではバスに乗って20分。バス停にすら辿り着いていない。どうやったって無理だ。どこでもドアでもない限り無理だ。そんなオレの目の前に飛び込んできたのが鳥居だった。こんなところに鳥居なんてあったっけ?

    「あ、しまった」

     鳥居に気を取られたせいか、オレの手から携帯がすっぽ抜けて、鳥居の奥に飛んでいった。今日日、携帯がないとなにもできない。遅刻の連絡さえできない。オレは慌てて携帯を取りに行った。携帯しか見ていなかったから、鳥居をくぐり抜けたことに無自覚だった。
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