その傷に爪を立てて さよならだ、と愛之介は呟いた。
はじめは、ほんの気まぐれのつもりだった。
目当ての少年の隣に居座る、気に食わない存在が目障りで、少し遊んで手酷く捨ててやろうと気まぐれに手を出した。
近づいて触れてみれば、存外悪いものでもなく。態と煽るような言い方をすれば、ムキになって噛み付いて来る子供が。組み伏せれば、意外にも健気な面を覗かせる子供が。少しばかり、可愛げがあるのではないかと。そう思えてきて。
毒されている。
個別のメッセージ画面を開き、ふと何度も繰り返される呼び出しとそれに応じるやりとりを見て、そんな考えが過った。
そんな馬鹿なことがあるか。思わず、スマートフォンを握る手に力が入り、みしりと本体が音を立てる。
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