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    ゆか@yuk930

    書きたいところだけを書くために作ったアカウントなのに、いざ書いてみたらやっぱりダラダラと長くなってしまう。好きな子は右に置く習性があります。

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    ゆか@yuk930

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    書きたいとこだけ。

    #ヒュンポプ
    hyunpop

    桜と満月ときみとポップの言う「良い場所」は城からかなり離れた山奥であった。人の手の入っていない森の中にルーラで運ばれた面々は、目の前に広がる光景に感嘆の息を漏らした。盛大に咲きほこる桜の木々を背に、ポップがへへんと自慢げに胸を張る。

    「すっげーだろー? 俺も見つけた時はビビったぜ」
    「こんな素敵な場所を見つけられたのだから、ポップくんのサボり癖も捨てたもんじゃないわね」
    「サボってた訳じゃねえよ!ちょっと息抜きに飛び回ってただけで……」

    目をそらすポップに、まあ今回は目こぼししましょう。とレオナが笑う。そうして、夜桜の宴が始まった。



    姿が見えない。ヒュンケルが気がついたのは、宴が始まってから随分と時間が経ってからだった。夜も深い時間。少し風が出てきて、ひんやりとした空気が桜の花を散らしていく。

    手酌で呑んでいた盃を干してしまうと、しっかりとした足取りで立ち上がる。改めて周りを見渡しても、やはり大魔道士の姿がない。

    皆の中心で笑顔を振りまいているかと思えば、こうやっていつの間にか消えている。いつか、誰にも告げずにどこかへ行ってしまうのではと、時折考えては胸が騒ぐのだ。

    急くように木々の間を抜けて進み、舞い上がった花弁を追って視線を上げれば、闇夜に浮かんだ真っ白な満月の中に探していた背があった。

    「……ポップ」

    思わず零れた名前は殆ど口の中で。だから聞こえたはずも無かろうに、まるで応えるように月の中のポップが振り返った。

    「よぉ、楽しんでるかよ」

    高い空の上に浮かんだまま生意気な笑みで見下ろされて、ヒュンケルは衝動のままに手を差し出した。目を瞬いて首を傾げる大魔道士を、決して逃さぬように視線を絡めたままで。

    「ポップ」
    「……な、んだよ」
    「降りてきてくれないか」




    射抜くような視線でありながら、零れた言葉は震えてこそいなかったが存外に弱く、あまりにも頼りなげに響いた。その真剣な表情が無ければ笑い飛ばしていたことだろう。

    健気に差し出されたままの手に戸惑っていると次いで更に弱い声がお願いだと呟いた。このままでは泣き出すんじゃないかと、有り得ない想像に背を押され思わず握りしめるようにその手を取った。

    鍛錬を欠かさない武人の硬い掌の感触に、そういや今日はグローブを外したままだった。と思い出す。手を引かれて音もなくヒュンケルの目の前に降り立てば、ほんの小さく息をついてその肩から力が抜けたようだった。掌は離されないまま。つい、とヒュンケルの親指が手の甲を辿る動きに大袈裟に背が跳ねた。

    「冷えているな」
    「そっ、そうだな……風に、当たりすぎちまった」

    ひっくり返った自分の声が無様で、耳を塞いでしまいたいのにヒュンケルはポップの手をそっと握ったままでいる。
    月明かりの下、舞う花弁を背景に、銀髪を靡かせる美丈夫から目が離せない。なんだかおかしい。これは月と桜が魅せた夢ではないか。
    ポップが幻惑を疑い始めた矢先、ふいにヒュンケルが軽く身をかがめた。掴まれた指先に唇が触れるのを、ポップはぼんやりと見下ろした。どこもかしこも硬く冷たそうなこの男に、こんなにも柔らかく、温かな箇所があるだなんて知らなかった。

    「どこにも行くな」
    「は、え?」
    「……そばに、いさせてくれ」

    今度は冷たく感じるヒュンケルの掌が頬に触れる。思考が全く回らない。ポップは知らなかった。アメジストに映り込む自分が、こんなにも惚けた顔が出来るだなんて。目の前の兄弟子が、こんなにも自分に執着を向けているだなんて、全く今の今まで知らなかったのだ。




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