初恋デッサンと神隠し「いおくんも絵、描きたいの?」
ふと、そう声を掛けられたのは、突然の事だった。
お昼の午後13時。
熱中症にでもなってしまうかのような日照りの中、僕はいつものように、白い服を着た青年を斜め後ろから、彼がキャンバスに色を置いていく様子を眺めていた時にそう声を掛けられた。
「………なんで?」
「だって、ずっと自分が絵を描いてるのを後ろで見てるから……。
本当は描きたいんでしょ?」
「別に、違うよ。
今は家事も全部終えちゃったし、皆さんからも何にもお願いされてないから大瀬さんの絵を見てるだけ。」
「………いおくんはもっと有意義な暇潰しを覚えたほうが良いよ?」
まったく、余計なお世話だ。
…最近の大瀬さんは、以前とは少し変わった。
6528