現実逃避、非逃避。「うわーーーーー!!!」
犬飼の絶叫が家中に響き渡る。止めた記憶の無いアラームが勝手に止まっていて目を覚ましスマホを見ると、8時27分と表示されていた。学校のHRが始まるのは8時30分。遅刻確定。これはやばい、と青ざめる。一限の開始15分までに着ければその授業は欠席扱いではなく遅刻扱いになるので、それまでには頑張って着きたいところ。
…なんて色々考えている暇など一切無い。
「めちゃくちゃ遅刻じゃん!ちょっ…!明理ちゃん!何で起こしてくんなかったの!?」
「アラーム鳴っててもずっと寝てて、うるさかったから勝手に切ったわよ。アンタが悪いんだからね〜。」
「まじで最悪!」
バタバタと狭い家中を走り回り、最短速度で身支度を終わらせる。いつも丁寧にセットしている髪の毛は櫛で数回といただけでふわふわのままだ。ゆっくり鏡を見ている時間など犬飼には残されていなかった。
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