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    ゆん。

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    ゆん。

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    フォロワーに書いた吉デン

    #吉デン
    yoshiden

    吉デン.







    「腹減った〜」
     ぐぅ、と腹から音が鳴る。目の前の机の上には真っ白な課題のプリント。デンジは力が抜けたように机に突っ伏す。ゴン、と頭を打ち付ける痛そうな音と、グシャ、と紙が揉みくちゃにされた音がした。色んな音を出せる男だな、と、どうでもいいことを思いながら、吉田は読んでいた本から顔を上げる。
    「その課題早く終わらせないと帰れないよ」
    「わかってるってのー」
     でも腹減ってんの! 死ぬ! と、デンジは小学生のように喚く。教室には他に生徒がいないのが幸いだった。
    「ああ。そういえば俺、お菓子持ってるよ」
    「は? それ早く寄越せよ!」
     吉田が鞄から取り出した赤い箱を、目を輝かせたデンジが早速取ろうとしてくる。掴まれる寸前で、吉田はその手を躱した。
    「ああああ?」
    「デンジ君、今日何の日か知ってる?」
    「はぁ?」
     口端を吊り上げて笑う吉田に、デンジは首を傾げた。今日……? 11月なことは知っている。でも日にちは何日だったっけ。
    「11月11日だよ、デンジ君」
    「それがどうかしたのかよ」
     世間の祝日や記念日なんて殆ど知らないデンジは、この日がどんな日かなんて考えたこともない。こうして今学校にいるのだから、休みじゃないのは分かるが。
    「それはね、このお菓子を使ってゲームをしなければいけない日なんだ」
    「ゲーム?」
     キョトンと目を瞬かせるデンジの顔を眺めながら、吉田は赤い箱から二つの白い袋を取り出す。中には細長いチョコレートのお菓子が入っていた。知らぬ者はいないような、有名なお菓子だ。
    「食いてえっ!」
    「まだダメだよ。これをこうして、」
     吉田は白い袋を開け、お菓子を一本口にする。そしてチョコレートがコーティングされた方を、顎でしゃくってデンジの方へと差し出した。
    「デンジ君はこっちから食べて」
    「は?」
     眉間に皺が寄り、流石のデンジも訝しげな表情になる。だがその目はお菓子から離れない。早く食いたいと、オレンジ色の美味しそうな目が語っている。吉田はクスリと唇を歪に曲げた。
    「どっちが多く食べれるか競うゲームなんだ」
    「ふうん……」
     吉田の説明にもデンジは僅かに逡巡を見せる。しかしそれも空腹の前では一瞬の躊躇いだったわ
    「ん、」
     パクッ、とデンジはお菓子の先端に齧り付く。口腔に広がるチョコレートの甘い味。と、思ったら、残りのお菓子は全て吉田が口の中に入れてしまった。
    「もう一回」
     促され、デンジはまた口を開ける。が、齧り付いた瞬間に、やはり残りは吉田の口の中に消える。吉田が口に咥えてからスタートするので、それは当然だった。
    「なんだよ、なんかお前ばっか食ってねえ?」
    「デンジ君が下手なんだよ、ほら」
     吉田は袋から取り出し、また口に入れる。今度は少し待機をしてくれるようだ。ガリガリガリっ、デンジは真っ先に食い付く。吉田は口に咥えていた部分だけを、歯の奥で咀嚼した。
    「ん?」
     デンジの唇に、ふに、と何かが当たる。やわらかい。
     ぽかんとして見れば、目の前には暗い吉田の目。まつ毛ながっ、とデンジは一瞬それに気を取られる。それでも頭の中の驚きよりも、食べ物を求める舌の動きが本能に勝った。
    「んっ、ぁ、」
     甘いチョコレート。チョコレートなんて贅沢品だ。贅沢なチョコレートに、贅沢なクッキー。美味しくて、もっと味わいたくて、デンジは舌を伸ばす。
     侵入した生温かな吉田の口の中。歯列を舐めて、舌が絡み合う。口腔の奥まで、チョコレートを求め、デンジの舌は蠢く。
    「……ぷはっ、」
     やがて、唇を離した。吉田の口の中のお菓子はドロドロに溶けてしまって、息も苦しかった。デンジはホッと息を吐く。
     目の前の吉田の唇は、脂物を食べた後みたいに唾液で濡れていた。それを赤い舌が舐め取るのを、デンジは何故かドキッとして凝視した。
    「すごいね、デンジ君。口の中のまで持ってかれるとは思わなかった」
     吉田は目を眇めて笑うと、チョコレートが付着したデンジの口端を親指で拭ってやる。
    「俺の勝ちだなァ!」
     残りも寄越せよ、とデンジは顔をくしゃくしゃにして嬉しそうに笑った。もうその手には吉田から奪ったお菓子があり、直ぐに何本も取り出して一気に口に咥えている。パキパキとお菓子が折れる豪快な音がした。
    「……馬鹿な子ほど可愛いってほんとだな」
    「なに?」
    「なんでもないよ」
     吉田は親指をぺろりと舐めると、口端を吊り上げて笑った。



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