懐かしき調べ 莫家荘に邪祟退治をするためにやってきた藍思追と藍景儀をはじめとする藍家の子弟達が西院で迎え撃つべく準備を進め、手筈通りに位置に着いた頃には陽が落ちていた。
庭を囲むように屋根の上に立ち、招陰旗を手に景儀と並んでその時をいまかと待ち構えていた時だった。張りつめた空気の中、気配に集中するように目を瞑っているとどこからか何か曲が聞こえてくる。これは笛の音だろうか。音は聞き慣れないが、この旋律はどこかで聞いたことがあるような気がする。
「景儀、この曲どこかで……もしや姑蘇の調べか?」
いつどこで聞いたのかは分からない。分からないながら、旋律が胸に響く。
「どこかで聴いたことがある」
「そんなはずないだろ。こんな下手な曲、聴いたことがあるわけない」
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