おはよう、ぼくのねむりひめ まぶたを閉じていても睫毛の先に光の粒が降り注いでいるのが分かる。朝の空気が頬を撫でるのが分かる。
今日は休日。学校はお休み。期末考査は先日終わったところ。後は冬休みを待つばかり。
肩のあたりが少し肌寒い。
ブランケットを引き寄せようとして、湖滝ちゃんは大きく目を見開いた。まどろみの淵を漂っていた意識が一瞬にして浮上する。なぜなら、すぐ目の前、鼻の先と鼻の先が触れ合うほどの距離に婚約者の顔があったからだ。
「おはようございます」
湖滝ちゃんと視線を合わせて、先輩くんがにっこり微笑む。
「おはよう……って、妾は、ええっと……」
「お忘れですか? 昨日、眉美さんのお部屋へ遊びに行かれたでしょう? 湖滝さんが洋酒入りのケーキをひと切れ食べてすっかり眠ってしまったと眉美さんから連絡が入ったので、私がお迎えにあがったのですよ。昨夜はよくお眠りになられていましたが、ご気分はいかがですか?」
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