英雄の英雄ドラキュラに関する書物が集められたエルゴス内の研究施設は、グリモアオブソウル(GoS)に関する設備を除けばほとんど図書館と言って差し支えない。一般的な物語から家系図から、禁書、偽書とされた史書までも。
有角は長い指で書物を繰っては、確かめながら呟く。
「…年、クリストファー・ベルモンドの子孫、シモン・ベルモンドがドラキュラを討つ……」
ぺらり。
頁を捲った指は時折すらりと細い顎に添えられ、ふむ、と頷いては再び頁に伸びる。
「…ジュスト・ベルモンドの時代に疑似悪魔城の復活……のち、リヒター・ベルモンドは…」
ぺらり、ぺらりと捲るたび、記述は脳に染み渡っていく。
有角はここに至り改めて、自分の関わらぬドラキュラ絡みの戦いが存外多いことを知った。脈々と血と決意を受け継ぎ、傍系や血族でない者の力も結集した人々の希望の歴史。
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