タイトル未定「あぁ?餓鬼の捜索任務だと?」
「あぁ、剣士含む全隊士への通達だとよ」
討伐任務帰りの汽車の中。同期の隊士から聞かされた、餓鬼の捜索任務通達。
一緒に受け取った文書を確認すると、藤襲山から現れた身元不明の餓鬼を保護し、御館様に引き渡せとの内容だ。
「…ったく、餓鬼を探せって……俺らのやることかねぇ?こんな……その辺歩いてりゃ目立つような珍妙な格好の餓鬼…、警官にでも任せりゃいいだろ。お前もそう思わね?」
「…食うか話すかどっちかにしろ 、阿呆が」
「お前、一言多い・・・」
まだ、横で戯れる同期の声を右から左に受け流し、餓鬼についての詳細を頭に叩き込む。
歳の頃は、おそらく、7つか8つ。
碧色の髪。
髪型は、ざんばらとしているが、双鬢を三ツに編んでいる。
服装は脚の露出の高い洋装。
ワラジムシやダンゴムシに似た蟲…。
読めば読む程、どんな餓鬼だ。
「獪岳…!」
一般人の目撃談では、手帳程の大きさの板のようなものを持っており、それを撫ぜつついたり、耳に当てたりしている姿。
夫婦や、男女で歩いている者の顔を覗き込んだり、着物を引いて引き止めたりし、目当ての人物でないと判断すると、直ぐに頭を下げて立ち去る姿が目撃されており、まるで親を探しているように見受けられるとの事…か。
「…獪岳!!」
「何だ!うるせぇな!…、!!」
無視しても執拗に名を呼びつづける同期に 苛立ち、視線を報告書から離すと、つい先程まで誰も居なかった向かいの座席に、まるで初めからいたかのように、捜索・保護対象が眠っていた。
「この子供、もしかして鬼か…?!」
「…いや、その線は無さそうだ。見ろよ、こいつ藤の花を衣囊に入れて持ち歩いてたみたいだぜ。まぁ、ここまで萎びてりゃ最早効果も無いだろうがな…。」
餓鬼が眠っている間に、場当たり的に身体調査を進める。
八重歯はあるが、牙というほどの物は無し、爪も鋭くはなく、人間の子供の其れ。
最初の目撃情報から数えて約一週間、路上で生活していたであろうことを前提としても、肌艶が良い事から元はある程度の階級層の餓鬼だったことが伺える。
だが、それらを差し引いての一番の問題は…
「ギィイ~!!」
軋るような鳴き声を揚げながら、床にひっくり返ってワキワキと等脚をバタつかせている餓鬼の頭程の大きさの巨蟲だ。
餓鬼の人相書きに蟲を連れてるとは、書いてはいたがこんなにでけぇとは聞いてねぇ。