夏の終わり、君との始まり。 昼過ぎからの曇天は、日が沈む頃には叩きつけるような豪雨へと変わっていた。大粒の雨を伴う強風が洗面所の小窓を揺らしている。
しとどに濡れた髪をタオルで拭きながら、ダイは細く開けた窓から厚い黒雲を窺った。今日は一日快晴との予報だったため、すっかり油断してしまっていた。外に干した洗濯物は全滅で、傘を持たずに外出したダイも濡れ鼠である。
「じいちゃん、怒るだろうなぁ」
同居する祖父ブラスの怒り顔が目に浮かぶ。町内会の会合があると言っていたが、そろそろ帰宅する頃合いだ。洗濯物は仕方ないとは言え、全身ずぶ濡れの姿を見られたら最後、家の中なのに雷を落とされてしまう。注意力が足りない証拠だと、いつものように孫の手でぴしりとはたかれてしまうだろう。
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