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    shi_na_17

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    付き合いたての半ロナ、巻き込まれドラルクを添えた話

    #半ロナ
    half-lona

    半ロナバレンタイン2024 バレンタインのチョコの許容範囲って、どこまでだろう。
     茶色ければいいのかな。いや、茶色だとなんかアレだ、ちょっと良くないので、チョコレート味。例えば、チョコレートまんとか。チョコレート味だし、茶色いし、バレンタインの時期限定だし。広い意味でなら、チョコレートと言っても過言ではない……?
    「だとすれば別に……初めてのチョコレートって訳でもない訳で……だから……そんなに……」
    「全部言ってるぞクソゴリラ」
     ドゴッ。反射で声のする方に振り抜いた拳はクソ雑魚吸血鬼を砂にする。目撃者がいなくなれば全ては無かった事になる。故に、俺のクソデカ独り言も無かった事に。
    「なるかボケ」
    「クソッ……!!」
     生き返る時に幾らか記憶失くしてくれたらいいのに。つかまた言ってた。ちょっとテンパってる。いやちょっとじゃなくて、だいぶ。
    「チョコレートまんをチョコに含めたとして、恋人になってから初めてのバレンタインだってのは変わらないだろうに」
    「ーーーーーー!!! もう言うなよ!! 意識しちゃうだろっっっ!!!!!」
     小声。あくまで小声で。
     頭を抱えるここは、大型スーパーの催事場、がよく見える冷凍食品のエリアだ。だってなんか、あの中ちょっと突っ込んでいけないんだもん。その……恥ずかしくて…………。
    「意識しないようにするから逆に意識するんだろう。もういっそ思い切って初めてのバレンタインだと気合を入れて突っ込んでいけば案外いけるかもしれんぞ」
     なるほど。意識しないようにするからこそ意識してしまうのであれば逆に意識すれば……って、どういうこと?
    「てめぇ適当な事言ってんだろ」
    「あ、バレた」
     真面目な顔して!! 腹が立ったのでもう一度殺したら、砂山と化したドラ公は盛大な溜息を吐きながら頭から復活してくる。俺もシンヨコ市民も皆見慣れた光景だが、初見の人からすると相当にホラーだろう。
    「冗談はさておき。実際、意識しないようにするから意識してしまう、っていうのはあると思うが」
     まぁよく言うよな。転ぶなって言われると転ぶようになるとかさ。でも、さぁ……?
    「そもそも意識しないように意識するってなに? 気を付けないように気を付けるようなもんだろ。どうすりゃいいんだよ。俺はとにかく今日中にバレンタインのチョコを買ってこなきゃいけないんだよ!! わかってんだろてめぇも!!」
     毎日毎日同じように連れ回されてて理解してなかったら驚くわ。いや毎日毎日連れ回してる俺もどうかと思うけどな。
    「わかってるわかってる。君は漸く出来た恋人にチョコを買いたくてこの半月この催事場に通ってて、今日がそのバレンタイン当日なんだろう。なら、ほれ。買ってこいときめきのゴリラ」
     ときめきのゴリラってなんだよ。変な称号を付けるんじゃねぇ。
    「簡単に言いやがって……!! 買って来れてたら今頃こんなところで悩んでねぇんだよ……!!」
     しかもこんな寒々しいところで!! だってここが一番催事場が良く見えるんだもん。仕方ねぇじゃん!!!!
    「じゃあほら。君の言ったようにチョコレートまんだってチョコレートの一種だよ。だからそんなに気にする事もないさ。ほら、買っておいで」
    「じゃあっつったろお前!!!! そもそも、散々言われた後そんな事言われたってはいそうですかって思える訳……っ!!」
     ねぇだろうが!! と、言いたいが……言いたいが、しかし。
    「でも…………そう、だよな」
     チョコはチョコだ。チョコレートまんだってチョコって言ってんだからチョコに決まってる。だってチョコって自分で言ってんだし。だからあれはチョコだ。例え奢った相手が半田だけじゃなくてカメ谷にも送っていたとしても、今回のこれは初めてのバレンタインチョコって訳じゃねぇ。って事は、そんなに緊張しなくても、良いって事だ。
    「よし……俺は…………いける!!!!」
     俺はやればできる子だ!! 兄貴も昔よく言ってくれたし!!!
    「行ってくる!!!!!」
     財布とエコバッグを握りしめて、走り出す。こういうのは勢いが大事だ。
     散々眺めて、第三候補だったチョコの缶を引っ掴む。金色の星みたいに、キラキラしたチョコ。あいつの瞳みたいだって、ずっと思ってた。ちなみに第二、第一候補は売り切れてた。だってバレンタイン当日の夜だもんな。そりゃほぼ売り切れてるわ。
    「これ、おねがっ……い、します」
     ちょっと噛んだけど、ちゃんと言えた。向こうのほうでドラルクがなんかニヨニヨしてるのが腹立たしいけど、レジのお姉さんはそっちを見てくすりと笑って、微笑みながらレジを打ってくれている。なんか良い感じに罰ゲームかなんかと勘違いしてくれたのかもしれない。あいつを殴るのは、とりあえず後に回しても良いかもしれない。

    「あのゴリラ、ちゃんと買えてるんだろうな……」
     これで買えてなかったら目も当てられない。でもまぁ、ちゃんとレジに行ったみたいだし、大丈夫だろう。多分。これで買えなかったら純情通り越してヘタレもいい所だ。まぁ、元々ヘタレな感は否めないけれども。殊恋愛事に関しては。
     このゴリラ、顔は良いのにアホだしバカだしデリカシーは無いしでバキバキのDTだったので、全くもってこういった事に関しては輪にかけてダメだった。
     だからまぁ、同居人としてはダメなところもそのまま好きだと言ってくれる相手が恋人になってくれて良かったと安心していたりはする。多少、その愛し方が明後日の方向を向いてるとは思うが、明後日を向いていようが愛は愛だ。問題は無かろう。多分。
     問題は相手もかなり拗らせていて、同じくバキバキのDTだという事くらい、だろうか。君達変なとこ似てるんだから。巻き込まれる側の身にもなって欲しい。めんどくさいったらない。
     ぴこん、とスマホがメッセージが来た事を知らせる可愛らしい音を鳴らす。
    『まだか』
     まだかじゃないわ。ちょっと時間稼ぎしろだとか言ったと思ったら、今度は急かしてくるんだから。なんだっけ? 手の込んだチョコフォンデュを用意するから……だっけ? クソゲーと名高いストラテジーRPGの初回限定版スペシャルエディションをくれるって言うから引き受けたけど、それにしたって任せる仕事が多すぎる。2人揃って無茶振りが過ぎる。チョコフォンデュは経験があるからすぐ終わるとか言ってたのに、大きくし過ぎて組み立てに時間がかかるとかバカだと思ったし、今まさにレジでわたわたしてるヘタレも大概だ。っていうか、チョコフォンデュの経験って訳がわからん。いや知ってるけど。いつかのセロリフォンデュの事を言ってるんだろうけど。
     なんてうだうだしてる内に、ゴリラが顔を真っ赤にしながら帰ってきた。手にはしっかりと紙袋が握られて……いや潰すなよ?! あんなにしっかり握ってて、お前自分の握力わかってるか?!
    『今から帰る』
     送信、と。なんか極秘ミッションを言い渡されたスパイみたいな気持ちになってきた。
    「どらこぉ……これで大丈夫かなぁ……!!」
     これでターゲットがアイスを落とした5歳児が如く情けなく泣き喚くゴリラでなきゃ、最高なのに。
     なんて思いつつ、大きく溜息を吐く。
    「大丈夫大丈夫半田君なら君が選んだものなら何でも嬉しいでしょ」
    「はっ、半田とかっっっっ!!!! つかなんだよ、俺が選んだものならなんでもって?! 選んだのがバカだって事かよ……!!!!」
    「声デカッ」
     ナスナスと砂になりながら、出入り口に向かっていくロナルド君の背中を見やる。
     その耳は、未だに真っ赤に染まっていた。
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