かみつきこい ——約束しましょう。大人になったら、君を迎えにいきます。
ゆびきりげんまん。うそついたら、はりせんぼんのます。この語源の由来は、遊女が客に不変の愛を誓う証に、小指を切断していたことかららしい。麻酔なんてものがない時代に小指を切って差し出す上に、誓いを反故にした場合は、百万回殴られ、針を千本飲まされる。諸説はあるがその後に『死んだらごめん』という続きもあるらしい。春を鬻ぐ女たちが、真っ当な恋をするにはそれだけ命懸けだったのだろう。
一時間に一本しかないバスに揺られながら、悠仁はそんなことを思い出した。この地に悠仁が舞い戻ってくるのは、実に五年ぶりである。十五まで慈しみ育ててくれた祖父が亡くなってから、悠仁は遠縁にあたる寺の家に預けられた。祖父が亡くなる前のことは記憶が曖昧だが、祖父は死ぬ間際に悠仁に告げた。
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