狼獣人タルと龍人先生 出会い編きゅーん…きゅーん……きゅーー…
赤や黄色に色づいた葉の山で、1匹の幼い狼が体を丸めて泣いている。
大きな三角耳をぺしゃりと伏せて、自慢のふわふわな尾は細かい土や葉塗れで汚れていた。
この幼獣は村の周りで兄姉と遊んだ後、1人で探検するのが大好きな元気な狼だ。
足腰も強くなり探検する範囲も徐々に広がり、迷子にならないようにと口酸っぱく言われいたのだが、
見たことのない色をした蝶を追いかけることに夢中になりそれを見失ってしまった時にはすでに遅く
周りが全く見たことのない景色の場所まで出てしまったことに気が付いた。
壮大に広がる草原や秋で色づいた木々、花、鳥たちの可愛いさえずり、澄んだ川が緩やかに流れる音。
1年の半分が雪で覆われるところに住む幼い狼にとってはすべてが目新しい景色だ。
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