雪とマフラーと五月雨廊下を横切っていくジャージ姿に彼女は思わず待ったをかける。
「五月雨!もしかして外行くの?」
「はい」
当たり前のようにそう返事をした男に彼女は頭を抱えた。昨夜から降り始めた雪はしっかりばっちり積もりに積もり、本丸の庭を美しく白に染め上げた。五月雨以外にも外に行くものはいたし、雪が好きなら楽しんだらいいと思う。防寒をきちんとするならば。
「……その格好で行くの?」
「はい」
「……」
五月雨は江揃いのジャージを着ている。流石に半袖では無いものの、上下ジャージだけ。他に防寒具は身につけていない。五月雨はかなりぎりぎりの時期まで半袖だったし寒さには強い方なのだろう。とはいえ絶対風邪を引かないわけではない。刀剣男士も風邪を引くことは今までの冬を経てきた彼女はよく分かっている。冷たさを感じないわけではないはずだし、何より見ているこちらが寒さを感じてしまう。
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