五月雨が天井裏にいる話木目の天井に審神者は目を向けた。何か染みがあるわけでも埃が溜まっているわけでもないそこをじいっと見つめる。
彼女はあそこが開くことを知っている。なんなら、今あの上に刀剣男士が一人いることも。
「五月雨」
呼びかけても反応は無い。だがしかし、「いる」と彼女はよく知っていた。
今朝、外に少し用事があった。本当にちょっとそこまでの用事。門から出て通りを少し行って一つ曲がったくらいのところにポストがあるのだ。郵便を二つほど投函したかった。ただそれだけ。つっかけを履いてぱっと行ってぱっと戻って来ただけのほんの五分にも満たない時間だったと思う。それなのに玄関に戻ると眉を寄せた五月雨が「何故、置いていったのですか」と立っていた。
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