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    hidaruun

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    hidaruun

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    さみさに♀/雨さに♀

    #さみさに
    onInformationAndBeliefs
    #雨さに
    inTheRain

    雪とマフラーと五月雨廊下を横切っていくジャージ姿に彼女は思わず待ったをかける。
    「五月雨!もしかして外行くの?」
    「はい」
    当たり前のようにそう返事をした男に彼女は頭を抱えた。昨夜から降り始めた雪はしっかりばっちり積もりに積もり、本丸の庭を美しく白に染め上げた。五月雨以外にも外に行くものはいたし、雪が好きなら楽しんだらいいと思う。防寒をきちんとするならば。
    「……その格好で行くの?」
    「はい」
    「……」
    五月雨は江揃いのジャージを着ている。流石に半袖では無いものの、上下ジャージだけ。他に防寒具は身につけていない。五月雨はかなりぎりぎりの時期まで半袖だったし寒さには強い方なのだろう。とはいえ絶対風邪を引かないわけではない。刀剣男士も風邪を引くことは今までの冬を経てきた彼女はよく分かっている。冷たさを感じないわけではないはずだし、何より見ているこちらが寒さを感じてしまう。
    「ちょっと待ってて」
    彼女はすぐそこだった自室に飛び込むと箪笥を開けては閉めて何か無いかと探る。流石に上着はサイズ的に無理。みちみちどころの話ではない。袖すら通るか怪しいものだ。となると。
    「はい。これつけてって」
    部屋から廊下に戻ると冷えびえした気配が体を取り巻くから、よくこんな薄着で本丸の中とはいえうろうろしているなと思う。これで外に行くなんて正気の沙汰では無い。
    「襟巻きですか」
    「これもこもこで、めちゃくちゃあったかいから。ほら」
    「?」
    「屈んでよ」
    巻けないでしょ、と催促すればキョトンとしていた五月雨が瞬きふたつ。パァッと嬉しそうな笑みに切り替わる。
    「首輪をつけてくださるのですか」
    「首輪じゃない」
    膝を曲げて首を下げて彼女が巻きやすい姿勢になってくれた五月雨にくるくるとマフラーを巻いていく。もこもこに包まれる五月雨はなんだか可愛らしい。更に可愛さを追加しようとリボン結びでマフラーを纏める。ぽんぽんとりぼんを軽く叩くと彼女の触れたそこを辿るように五月雨もそっとリボンを撫でた。
    「頭もご一緒にいかがですか」
    「行きません」
    「ふふふ。では、後で季語を届けに参りますね」
    マフラーに埋もれた向こうで目を細めて笑う五月雨を見て、これもきっと季語だと思いながら「待ってるね」と彼女は手を振った。
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    hidaruun

    DOODLEさみさに♀/雨さに♀
    食事を持ってきてくれる五月雨「やっと解放された……」
    深くため息をつき、彼女は壁に背中を預けてもたれ掛かる。豪華なシャンデリアのぶら下がる華やかなホテルの宴会場の端で、周りの楽しげな様子を彼女はぼんやりと眺めていた。
    審神者五年目研修会、という政府の大きな研修会に参加した。強制参加と言われてげんなりしていたけれど同期との交流は新鮮で楽しかったし、一週間みっちりと座学やら実技やらいろんな研修を行ったのは疲れもしたが大変為になったと思う。その打ち上げだと言われて連れてこられたのがこの宴会場だ。まさかこんな豪華なところでやるとは思ってもみなかった。立食パーティーのような形ではあったけれど、座学のレポート発表会でうっかり良い成績を残してしまった彼女は政府のお偉いさんやら先輩審神者はもちろん、同期からもたくさん声をかけられてしまい食事どころではなくなってしまった。近侍は研修の間、毎日交代するように言われていたのだが今日は五月雨だった。レポートの中身もよく知らない五月雨を巻き込むのも申し訳なく、他の刀剣男士も自由にしていたので五月雨にも「好きにご飯食べてきていいよ」と伝えた後はひたすらお喋りに巻き込まれて、それがようやく終わったのがつい先ほど。
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