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    さかばる

    恐るな。性癖を晒せ。

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    さかばる

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    強奪した(……)リクエストで書かせていただいた海外デートするななごです。
    ただ私はギリシャに行ったことがないのでこう、ふんわりとした描写なのは勘弁してください……。

    #七五
    seventy-five

    白と青と糸杉と愛 青い海に、白い街並み。そのコントラストが美しい。眩しい太陽に照らされて風景と同じ色合いを持ちながらより美しく輝く人が自分の名を呼ぶ。
    「な〜な〜み〜っ。ねぇ! お土産に石鹸売ってるって! 硝子に買っていけばいいかなぁ?酒は流石に持って帰れないし」
     心なしかいつもよりはしゃいだ声を出す五条さんが此方に向かって手を振ってくる。私達は今、ギリシャに来ていた。
     
     
     事の発端は些細な事だった。
     いつもの様に五条さんが夜、私の部屋に押し掛けてきてリビングでダラダラと過ごしていた。ただ、珍しく今日は本を持参している。
    「珍しいですね。本を持ってくるなんて」
     五条さんが私に見せるように掲げた本のタイトルから推察するにギリシャ神話関連の本のようだった。
    「うん。仕事で必要になるかもしれなくて」
     その言葉に顔には出さないが少しムッとする。恋人の家で仕事をするのはどうなのだろうか。しかし、すぐに止める事は出来ない。この人が動かなかったら何人もの人間が死んでしまう。そう思ったらそっと温かいココアをテーブルに置くしか出来なかった。あと三十分続ける様なら本は取り上げよう。そう決めて。いつでも直ぐ行動が起こせるように五条さんの隣に座り、付けたままだったテレビを見る。テレビの四角い枠の中に映っていたのは青い海に白い家々を半袖シャツにジーンズで歩くリポーターの姿だった。場面が変わって朽ちた神殿に変わる。パルテノン神殿だ。
    「ギリシャか……。いいですね」
     たまには海外に行ってのんびり観光したい。そんな思いでなんとなしに呟いた言葉だった。それを聞いた五条さんが自分の顔をジッと見つめて、それから本に目を落として何か考えていたことなんて知らずに。
     
     
    「七海。三日後、海外出張ね」
    「……はい?」
     五条さんが家に来た夜から一週間が経って高専内のロビーで顔を合わせた時そう告げられた。海外出張の予定なんて聞いていない。思わず顔を顰めてしまう。
    「全く聞いていませんが」
    「だって三十分前に決まった事だもん」
     盛大にため息をついた。相変わらず勝手な事だ。五条さんはニコニコ笑っている。アイマスクで見えないが目も嬉しそうに細められているはずだ。決定は覆らないが何故、と理由は聞いておく。
    「だってオマエこの間ギリシャいいですねって言ってたじゃん? 丁度向こうからの依頼があったからさ、付き添いって事で七海を指名しちゃった♡」
     アイマスクした顔の横でダブルピースをして笑う五条を睨む。
    「私の任務は?」
    「僕が片付けたから心配無いよ。だからギリシャ行こ!」
     五条さんは私の手を握りブンブンと振ってくる。自分は内心複雑だった。また、五条さんは無茶なスケジュールを組んだのではないかという心配とふと呟いた言葉を気にして海外行きをセッティングしてくれた嬉しさがせめぎ合っている。どちらをどうしたらいいのか分からず、ため息で気持ちを吐き出す。どの道ギリシャ行きは決定事項なのだ。
    「……良いレストラン探しておきます」
     さっすが七海!わかってるぅ〜と五条さんは手を握ったままジャンプして喜んでいる。まぁ。この人が喜ぶのならばいいか。素直に自分も喜ぶ事にした。


     そうして飛行機に乗ってギリシャへ、観光兼任務として五条さんと二人でやって来たのだった。
     二人ともいつもの仕事着では無く、ラフな服装だった。五条さんは黒のアイマスクをサングラスに変えて白いシャツに黒いズボン、上に黒の薄手のロングカーディガンを羽織っている。日焼けすると大変だからとカーディガンは羽織らせた。自分も半袖シャツにチノパン、靴は二人揃ってスニーカーとかなり気が緩んだ格好だった。空港を出ると眩しい太陽が降り注ぐ。太陽の光が日本とは違う気がするのは気のせいだろうか。しかも高温多湿の日本に比べると湿度がなく、余り暑さを感じない。
     燦々と照らす光が目に刺さるためサングラスを持ってくれば良かったと若干後悔しているところに一人の男が近づいてきた。挨拶をして話したところ、任務という事もあり我々の出迎えらしい。その呪術師は五条さんに顔を向けると目を見開いた後、うっとりとした顔をする。五条さんを初めて見た人間によくある反応だ。今回は一目惚れや邪な感じではなく、美しい芸術品を見たような反応なのでコホン、とひとつ咳払いだけをする。成程、これだけでも今回来た意味があった。後で言い含めて置かなければ。何かあるとは思えないが五条さんに注意するように言うべきだろう。咳払いを聞いた呪術師は慌てて自己紹介をする。ギリシャ出身の呪術師で黒い髪と褐色の肌がギリシャを照らす太陽によく似合っている。その呪術師が運転する車に荷物と一緒に後部座席に乗り込むと、なめらかな動きで車が発進した。テレビで見た通り、可愛らしい白い壁の家々の景色が流れていく。荷物は後でホテルに置いていってくれるそうだ。運転をしながら現地の呪術師が穏やかな口調で話しかけてくる。
    「ようこそ。ギリシャへ。そして任務を引き受けてくれてありがとうございます。我々は貴方達を歓迎します。なんでも聞いてください。オススメのお土産でもレストランでも」
     どうやら我々を好意的に見てくれているらしい。ミラー越しに見た顔は白い歯を見せて笑っていた。
    「それで。今回の任務は呪物の破壊と聞いたけど、どういう代物なの?」
     五条さんを見ると体を背もたれに預けてだらしない格好だが表情そのものは真剣だった。仕事に関しては基本的には真面目な人なのだ。
    「……糸杉です。呪力が原因なのか、他の要因があるのか枯れない糸杉です。糸杉は冥界の王の象徴の一つです。死への恐怖が呪いに変わり、触れたものは死ぬとされています。毎年封印をし直しているのですが、日本のゴジョウサトルなら壊せるかもしれない、と」
    「ふぅん。ま、僕最強だからね。場所は?周囲に人がこない広い場所。指定通りにしてくれた?」
    「ええ。それはもちろん」
    「じゃあ大丈夫でしょ。ねぇ。ギリシャってどんなスイーツがあるの?」
    「はぁ……」
     五条さんの軽い調子に運転している呪術師は戸惑うような声を上げる。一応、フォローに入る。
    「こんな調子ですが、この人の強さは本物ですよ」
     珍しいスイーツ巡りも海外出張の醍醐味だよね〜と鼻歌混じりで言う五条さんを睨む。フォローする身にもなって欲しい。
     時折同行する事もあるだろう補助監督には同情を禁じ得なかった。
     
     車で到着した現場は広い丘で現地の呪術師が数名、結界を張っていると説明された。確かに人工的な呪力の流れを感じる。それ以外に人は全く居ない。
    「あちらが例の糸杉です」
     五メートル四方に呪術師が立ち、何やら印を組んでいる。恐らく結界だろう。その真ん中に例の糸杉がぽつんと置いてあった。想像していたものよりもずっと小さく一人で抱えられそうな大きさだ。鉢植えでもなくただ無造作においてあるだけだがその葉は青々として瑞々しい。しかし、同時に禍々しい呪力も感じる。確かに一筋縄では行かないのが分かる。五条さん以外にはだが。
     五条さんはちょっとコンビニに行くような軽い足取りで結界に近づき呪物を観察する。それから結界を解くように指示をした。
    「大丈夫でしょうか」
     褐色の呪術師が心配そうに眉を寄せている。そんな男に自分が言う事はただ一つだった。
    「大丈夫です。あの人が負けるなんてあり得ません」
     五条さんは結界が解かれると直ぐ糸杉の前まで歩き立ち止まる。こちらからは五条さんの背中しか見えない。五条さんを黙って見ていると糸杉がひとりでに宙に浮き、そのまま糸杉は小さく潰されていく。五条さんの術式だ。糸杉が五条さんの術式に耐えきれなくなったのかボキリと音を立てて折れる。折れた糸杉はそのまま塵となって流れていった。
     五条さんはこちらに振り向き笑顔で手を振る。
    「なんか、意外とあっさり終わっちゃった! 最悪空に向かってふっ飛ばそうと思ったけど必要無かったみたい。七海ぃ。腹減ったぁ」
    「嘘だろ……」
     隣の呪術師が呆然とした顔で五条さんを見ている。他の呪術師も同様だ。
    「言ったでしょう。負けるなんてあり得ないと。ところで、良いレストラン教えて頂けませんか?現地の方のお墨付きが欲しいです」
    「はは……。とんでもないな。なんでも聞いてください。彼を敵に回したくはない」
     褐色の呪術師は笑顔で戻ってくる五条さんを横目で見て言う。
     それに関しては全く同意しかなかった。と云っても我々が道を外さなければ敵になること等無いだろうが。
     
     
     海にせり出したテラスのお陰で視界には地中海の青が広がり、白いテーブルクロスが映えている。そのテーブルには日本では中々見られないような料理、味付けも香りも日本に慣れ親しんだ体には新鮮だ。現地ならではの料理を味わうのは旅行の醍醐味だ。正確には旅行ではなくて出張だが。自分はワインを、向かいに座る可愛い恋人は葡萄ジュースで乾杯した。時間帯がずれているのかレストランには自分達以外の客は居ない。五条さんも含めてこの景色を独占できるのは気分が良い。
     海が近いから魚介が美味く、ロブスターは絶品だった。羊肉もよく食べられるらしくラムチョップも柔らかくジューシーだ。特に気に入ったのはねっとりとした塩気の強いチーズが乗ったサラダだ。表情に出ていたらしく、五条さんによっぽど気に入ったんだねオマエと笑われてしまったが、笑う顔が可愛かったのですぐに許した。そんな五条さんはデザートのパイを甘くて美味しいと言って食べている。パイを食べる五条さんを見つめていたら此方の視線に気がついたらしく
    「七海も一口食べる?」
     フォークでパイを切りながらと聞いてくる。その言葉に悪戯心がむくむくと膨れ上がった。レストランには自分達しか居ないし、旅で気分が浮かれているのも自覚している。身を乗り出してフォークではなく五条さんの右手を掴み、五条さんの持っていたフォークでパイを取りそのまま口に入れる。どうだと思って五条さんを顔を見ようとするが、五条さんの顔を確かめる前に突き抜けるような甘さが脳を直撃する。
    「あっまっ!」
     思わず叫んで五条さんの手を離し、テーブルの水を飲み干す。甘いパイ生地に甘いシロップがこれでもかとかけられて噛む度に甘さが染み出してくる。なんとか耐えて飲み込むと即座にブラックコーヒーを頼む。コーヒーが来る間にワインで相殺するがそれでも口の中にシロップの甘さが残る。
    「なんですかこの地獄みたいな甘さは」
    「え……美味しいじゃん……あんな風に味見しといて文句言うなよオマエ」
     それきり顔を真っ赤にして無言でパイをぱくぱく食べる五条さんを信じられないと思って見てしまったが、レシピだけは検索しておこうと思った。
     
     
     腹ごなしに通りにある土産物屋をあれやこれや言いながら物色して、今は五条さんと二人並んでビーチを歩いている。近くで聞こえるザザ……という波の音が心地いい。潮風が五条さんの白い髪をふわふわと揺らし、陽の光がキラキラと輝かせている。綺麗だと思って見ていたら、周囲も同じらしく五条さんを見て顔を赤らめたり、うっとりとした目で見つめてざわざわとしていた。面白くなくて黙っていると何を勘違いしたのか五条さんは腕を掴んで私の体を引っ張って人目につかない建物の影まで移動する。そして私の耳元で囁く。
    「七海、ここなら誰も見てない?」
    「……? ええ。誰もいませんね」
     不思議に思うが、周囲を確認して言うと五条はにっこりと可愛らしく笑った。
    「七海! 僕に抱きついて」
     そう言われたので腰を抱いて体を密着させると五条さんは口を尖らせる。
    「僕が想像してたのと違うけど、まあいいや。じゃ、行くよ」
     一瞬、内臓が浮き上がる浮遊感の後、その直後に見えたのは眼下に広がる地中海の美しい青と白い建物、海に浮かぶ島々だった。五条さんが術式で空を飛んだようだ。足元のはるか下に海が広がるが不思議と不安感はない。すぐ隣に五条さんを感じるからだろうか。
    「見ろよ! 七海。こんな景色僕じゃないと見せられないぜ」
    「ええ。本当に美しい景色ですね。ありがとうございます」
    「……」
     地中海の真っ青な海に太陽が反射して綺羅綺羅と光る様子を魅入っていると腰を抱かれたまま五条さんが何故だか眉を下げポツリと話し出す。何かを窺う表情だ。
    「もう少し、七海はここに居る? 僕は明日には帰るけど一ヶ月くらい研修ってことで七海は残ること出来るよ。ほら、前に海が見える所に住みたいって——」
     少しだけ、寂しそうな顔であんまりにも的外れな事を言うから五条さんの口を自分の唇で塞いでやった。触れるだけのキスをして、唇を離す際に五条さんが掛けている真っ黒なサングラスを外す。五条さんは驚いたように目を見開いている。
     地中海よりも蒼く、澄んでいて光を反射しなくても綺羅綺羅と輝く瞳をじっと見つめる。自然と口角が上がってしまう。
    「私の欲しい蒼はここにありますから」
     その言葉の数秒後、五条さんの目が緩々と細められ頬が薔薇色に染まる。
    「僕はオマエならいつでも柘榴をいくらでも食べてやるよ」
     五条さんはうっそりと笑うとお返しとばかりに私の頬に口付ける。
     足元の海は穏やかに波打っていた。
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    さかばる

    DONEこちらもリクエストを強奪したお話です。
    雪山で裸で抱き合うってこれで合ってます!?ついでに七五っぽくないですね?これ。いや、七五は少年の頃は線が細く繊細そうな(中身は違う)七海が大人になって溢れる大人の色気を醸し出す男になるのが趣だから・・・・・・。
    ホワイトブレス 五条が任務に向かったのは冬の、雪が降り積もる村だった。
     村で何人もの死体が出ているという報告。そして人間でないモノ、恐らくは呪霊の目撃情報が寄せられた。その呪霊の祓除に担任の夜蛾から五条は指名されたのだった。隣には一つ下の後輩、七海がいる。この任務、五条が指名されたというより、七海のサポート役ということで振られたのだろう。夜蛾にはなるべく七海の自由にさせるよう予め言い含められている。五条はその事に不満は無かった。七海は良い術式を持っているし戦闘センスもあるので鍛えたら強くなりそうだった。ここは先輩として見守ってやろうという気持ちである。ただ、
    「さっみぃ〜〜!」
     真冬の夜で今も雪が降り続くこの現状が問題だった。補助監督の運転する車を降りて高専の制服の上に防寒着にマフラーを身につけたが寒いものは寒い。放っておくとサングラスの奥のまつ毛が凍りそうな気がする。
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