赤い指が身体を滑る。首から腕、胸、腹。じわじわと追い立てられ、カイは小さく息を吐いた。
「なぁ、カイ」
ゆったりとしたいつものリズムは崩さない。それでも色が滲む。抗えない、目をそらせない、艶めかしい声。
「……フミ」
「これ、嫌だった?」
フミが、指に纏う赤を見せつけるように手を差し出した。白く細くしなやかで、それでいてしっかりと強さのある男の手。
カイはその先にある赤を見た。深く深く、人を引きずり込む赤。俺から、フミを見えなくする赤。
「あぁ……、嫌だ」
やっと言える、と思った。息が苦しくて仕方なかった。フミの鮮やかで深い瞳とはまるで違う、その人工的な赤色を見た時からずっと。
「誰かがお前の手に触れたというのも、誰かの色がお前を隠しているのも、嫌だ」
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