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    moko_tasogare

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    お見合いごっこ1反屋 「はぁー…」
     自室に戻る廊下を歩きながら、黒鷲隊の反屋壮太が疲れた様子でため息をついた。
    椎良 「壮太!どうしたんだ?ため息なんかついて」
    五条 「何か悩み事?」
    反屋 「いや、昨夜から俺、西の城に潜入して偽の噂を流すっていう任務をしてただろ?」
    五条 「ああ、殿が戦を仕掛けそうだからその前に敵を混乱させとこうっていう作戦の。」
    反屋 「それが、事前に他の隊員から聞いていた以上に相手の奴ら、疑い深くて。俺が"街の方で流行り病が広がっているから殿様を連れて東の方へおさまるまで避難していた方がいい“という感じで城主に近い者に偽の情報を吹き込んだんだが…」
    そう言って反屋はまた一つ大きなため息をつく。
    椎良 「なかなか信じてもらえなかったのか?」
    反屋 「そうなんだよ…!あいつら、それはどこの情報だ、どんな病か、なぜ南でも北でもなく東なのかって質問責めにされて。いつもなら適当にそれっぽいこと言って納得させるんだけど、矢継ぎ早に5人係で言われると流石にうまい言葉が出てこなくなって…。それで何とか納得させて作戦に移せたのが今朝ってわけ。」

    確かに反屋の目元にはうっすらとクマがあり、昨晩潜入してから今朝までずっと疑い深い奴らに説明をしていたようだ。その辺の平民や権力だけある馬鹿な武士たちに信じ込ませることは簡単だが、城主の側近ともあればなかなか手強いようだ。

    反屋 「ったく、しつこいあいつらにもだけど、こんな簡単な任務に手こずる自分にもがっかりだよ。何年黒鷲やってるんだって」
    五条 「壮太に事前に相手の情報を知らせたのって確か入隊後間もない新人だったよな?事前調査がしっかりされないと、狂いが起きるからなー」
    椎良 「ああ。壮太だけの責任じゃないよ。ま、俺らももっと交渉術や説得術は練習しとかないとなー」

    そしてそのまま角を曲がれば部屋に着くというところで「ねえ」と声をかけられた。昨晩は手こずったが仮にもタソガレドキの忍び。3人のうち誰も気づかないほど気配を消して声をかけられるのはただ一人で…。

    三忍 「組頭!!!」
    振り向き咄嗟に礼をする三忍にやあ、と軽く手をあげる雑渡。
    雑渡 「ねえ、どんな相手でも、どんなことを聞かれても平然と答える訓練つけてあげようか?」
    三忍 「え!?そんな訓練があるのですか!?」
    ぜひ!!と目を輝かせる三忍に雑渡は訓練というにはニヤニヤした様子で、ついておいでと先を歩いていった。



    諸泉 「はぁー、午後の業務の予定はー…って!!何ですかこれーーーー!!」
    雑渡 「うるさいよ尊奈門」
    諸泉 「いやだってこれ!てか、ここ私と高坂さんの部屋ですよ!?何で皆さん集まってるんですかーー!!」

     昼食を食べて自室に戻ってきた尊奈門は戸を開けた途端、入ってきた光景に目を丸くする。尊奈門と高坂が寝たり書類仕事をしたりするだけのさほど広くない部屋に、雑渡をはじめ、山本、高坂、それに押都と三忍が座っていた。そして右手側と左手側にそれぞれ文机が向かい合うように並べられており、尊奈門の私物は部屋の隅に雑にまとめて置かれていた。

    五条 「すまない尊。実は我々はもっと相手を巧みに納得させる術を学ばないといけないと思って」
    押都 「組頭のご提案だそうだ。」
    諸泉 「えっと…全く話が見えないんですが…」
    雑渡 「まあ座りなよ。つまり、説得術を学ぶためには、お見合いごっこがいいんじゃないかと思ってね」
    諸泉 「ますます話が見えません…」

     尊奈門がクラクラする頭を押さえながら空いていた山本の隣に座ると、その頭を撫でてやりながら、すでに説明を受けたらしい山本が補足説明をしてくれた。
    ①黒鷲が珍しく任務に手こずった
    ②原因は事前調査不足と、疑われ問い詰められた際にうまく切り返しが出来なかったこと
    ③どんなことを聞かれても平然と答えなければ偽の噂を流すという任務はできない
    ④よってお見合い

    諸泉 「いや、ですからあの…最後がわからないのです…」
    雑渡 「お見合いというよりも、相手の両親に挨拶に行こうごっこかな?」
    諸泉 「は?」
    高坂 「尊奈門!!お前組頭に向かってその返事は何だ!!!」
    諸泉 「わわわ!高坂さん手裏剣を握らないでください!てか、高坂さんも何で私室にやすやすとこんな大勢招き入れちゃうんですかー!」
    高坂 「あ“?組頭のなさることに疑問などない!!」
    再び立ち上がって懐に手を入れて武器を持つ高坂から尊奈門は慌てて距離を取り謝罪をする。組頭命、組頭教徒である高坂の逆鱗に触れた場合は、どんなに理不尽でもとりあえず謝っておくこと。尊奈門が長い付き合いの中で身につけた術だった。

    雑渡 「まあまあ、落ち着いて。つまりわかりやすく言うと、結婚をする際、大体男は女の実家に行って、その両親に許しを貰いに行くだろう?それが優しい人ならいいけど、多くの場合は、娘が欲しければ私を倒していけ気質な父親が多い。」
    諸泉 「そうなんですか?」
    雑渡 「ねえ陣内?」
    山本 「…まあ、そうだな…」
    押都 「それは経験上、ですかな?」
    山本 「…黙秘する」

    大変だったんだろうな…と一同が唯一の既婚者である山本を気の毒そうに見つめる。
    雑渡 「結婚を許してくれない義父と、どうしても認めてほしい男。さて、この場合男はどんな対応をする?」
    諸泉 「…認めてもらえるように説得するでしょうね」
    そう答えてすぐ、尊奈門は、あっ!という顔になり、雑渡の質問の意図がわかったようだった。
    諸泉 「つまり、この挨拶に行こうごっこは、手強い相手をどう説得し攻略するかの練習になるというわけですね!」
    雑渡 「はい正解。よくわかったね」
    内容はどうであれ、滅多に雑渡から褒められない尊奈門は嬉しそうに先輩たちの方を見る。対して先輩四人は、おめでとー(棒)というふうに拍手を送っている。

    雑渡 「武術や座学と違って、五車の術やこの手の説得、交渉術は訓練が難しいからね。実戦あるのみ、慣れるのみ、というわけだ」
    雑渡の言葉に、先程とは打って変わって、高坂と三忍は割れんばかりの拍手で「さすがです組頭!!」と拍手をしている。
    小頭二人は、無茶苦茶な理由な気もするが、部下が楽しく訓練をできるのならそれでいい、といった雰囲気だ。

    椎良 「それで、どうやって練習をするんですか?」
    反屋 「今のお話だと、少なくとも父親役と男役に分かれるということでしょうか?」
    諸泉 「じゃあ、残りの人は見学ですか?」
    今部屋には7人いる。父親役と男役、それに母親役と娘役を加えても3人は余るはずだ。
    しかし雑渡はニヤッと不敵に笑いながら一枚の紙を取り出した。
    雑渡 「ふふ、実はもう配役は決めてるんだよ。まず第一戦は…」



    続く
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