過去のあしたにさようなら 見上げた空は、いつまでも遠い夕焼けの色。凪いだ風の中で、それでも踏み分けた草木は生を主張する。
「……鍾離先生。こんなところにいたの」
「おや……珍しい、客人だな」
そうしてひとり、ぼんやり佇む後ろ姿に。笑みを向ければ俺のものではない名が呼ばれて、そうして彼はわらうのだ。
誰が呼ばれているのかは、残念ながら聞き取れない辺り余程昔の友人なのだろう。もしくは俺が、理解したくなかっただけかもしれないが。
「久しいな。息災だったか」
「そりゃあもちろん。
……先生こそ、元気?」
「はは、何を言っている。これからこの地に、港をつくるのだと話したばかりじゃないか」
「そっか。そう、だったね。たくさん人が、増えるといいね」
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