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    meemeemeekodayo

    基本かくか受けで文章を書いている者です。たまに別ジャンル

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    meemeemeekodayo

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    現パロ遼嘉のナイトプールに入らない話

    ネオンのフラミンゴ腹の奥底にずしん、と響く重低音。湿度と気温のせいでシャワーを済ませたのに額には汗が浮かび着替えてきたシャツが肌に纏わりつく。慣れない環境だが日はとっくに沈んでいるから、昼間のような暑さはなくて比較的楽ではある。
    「中にDJブースがあってね。プールがやっている間はずっとこんな調子なんだ」
    張遼の耳元へ、背伸びした郭嘉が囁いた。それくらい近寄らないと話し声が聞こえない。ホテルを出て外の廊下を歩きだした辺りから音楽が聞こえ始め、足を進める度に大きくなってくる。しかし不快感はなく寧ろ気持ちを昂らせてくるような不思議な効果があった。隣の彼も同じようで歩きながらもどこかリズムに乗るような動きを見せている。
    手荷物は少ない。一室を取りチェックインを済ませ先に部屋へ寄ってきたから貴重品しか持ってきていない。郭嘉に至ってはスマートフォンしか手にしていなかった。
    暗い道を照らすライトは趣深いものばかりだが、少し先に見えた光は派手なネオンだった。僅かに塩素の匂いがしてくる。湿気が強まってきたと思えば目的地に到着したようで、慣れた様子で郭嘉が受付を済ませてくれた。
    「来たことがおありで?」
    「さぁ、どうだったかな」
    手際の良さや情報量の多さからして初めて訪れた様子ではない、そう感じた。とぼけているがきっと何度か来たことがあるのだろう。嫌悪はないが胸が若干焼けるような心地で、張遼はそれ以上何も言わなかった。
    日中家族連れでにぎわっているであろう老舗ホテルのプールは、夜になると大人だけのものになる。そもそも子供は入場制限がされているからどこを見渡しても家族連れらしき影はない。
    「お酒も飲めてしまうからね」
    「ああ、成程……しかしアルコールを摂取して入水するのは」
    「真剣に泳ぐ人なんて誰もいないよ」
    郭嘉が指をさす方向を見れば確かに水の中にいる人は少ない。プールサイドに並べられたチェアベッドにいる人の方が圧倒的に多く、泳ぐことよりも話したり飲んだりすることに重きを置いているようだった。
    「つまらない?」
    「とんでもない。少々驚いただけです」
    知らない世界だった。海やプールへ出かけた経験は勿論あるが夜間というのは初めてだ。規則正しい生活を送る張遼にとって夜遊びは縁のないものだったのだ。郭嘉と出会うまでは、の話だが。
    彼は度々張遼に対して「頼りにしている」と口にする。肉体労働的な意味でも精神的な面でもそう思ってくれているようだから偽りはないのだろう。「貴方といると世界が広がるよ」と微笑まれた日のことは、いつまでも経っても脳裏に焼き付いている。
    しかし張遼からすれば彼もまた知らない世界を教えてくれる存在であった。少々大袈裟かもしれないが、今だってこうして新しいものを見られたのだからあながち間違いでもない。
    「いや、大袈裟だよ」
    「……口に出ておりましたか」
    「ううん、でも何となく考えていることは分かるから」
    人の考えが読めるのかと、時折思う。素直に口にすれば郭嘉は高らかに笑ってから張遼の腕を引いた。
    「とりあえず座って、それからお喋りしよう。ね?」
    揺れる水面を素通りし空いた椅子へと向かう。ライトがあまり当たらない場所で足元は暗いがその分遠くを眺めたときの華やかさが際立っていた。
    郭嘉に促されて腰掛ければ彼もまた座り、両脚を伸ばしてベッドで眠るときのように体を横たえた。白い脚がしなやかに重なる。日に焼けることがないからと、部屋を出る前に着替えた彼は珍しくハーフパンツを履いていた。
    見慣れていると言えば見慣れているのに場所がそうさせるのか、また胸がちりちりと焼けるような気分だった。
    「郭嘉殿は」
    「うん?」
    「泳ぐおつもりはないのですか」
    「そうだな……貴方が入りたいのならば、付き合うけど」
    プールの向こうでネオンが輝いている。水の中にもライトがあるのか、定期的に色の変わるそれらはとにかく鮮やかで繁華街にも負けないくらい眩しく賑やかだ。
    そんな場所で彼が浮くはずがない。似合い過ぎている。髪も肌も格好も、そして柔らかく笑う顔も何もかもがナイトプールでよく映えていた。
    「いえ。入りたくなければ私もこうして話している方が、気が楽です」
    あまり他人に、彼を見せたくない。今まで散々人前に出て活躍してきた郭嘉だからこの期に及んで馬鹿々々しい考えだがそれでも張遼はこの場で彼を放つ気には到底なれなかった。
    変にその感情を隠す必要もない。思ったことをその通り口に出せば、郭嘉は軽く手を叩いて笑い寝転んだまま脚を組んだ。それから器用に頬杖をつき嬉しそうに目を細める。
    「貴方って人は贅沢だね。張遼殿」
    今一つ彼の言が理解できなかったが、機嫌は良いらしい。着ているパーカーのジッパーを下ろし張遼の手を軽く掴むとひどく甘えた声で「お酒が飲みたい」と強請ってきた。
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