丘を下りたら 最終話の別バージョン***別バージョン***
「あの、兵士長」
「なんだ」
「えぇと、リアクションに困るのですが」
正直この後どうしたらいいものか分からない。
「なら、さっさと済ますか。ミカサ、エレンはいない」
先ほどまでの穏やかな表情とは違い、真剣そのもの、調査兵団の「リヴァイ兵士長」そのものの顔。どきどきと音を立てていた心臓が一気に停止した。エレンがいない、とは…?
「誰もエレンの姿を見ていないらしい。だが、俺とお前はあの丘でエレンを感じていた。推測に過ぎないが、エレンはあの丘か、またはまだあの世界にいるんじゃないか」
「じゃあ、エレンにはもう二度と」
「分からねぇ。俺やお前と違って、あいつは『普通』の状態で死んだわけじゃない。何が起こっているのか、何が起こっていても、おかしくはねぇ」
「どう、すれば」
「または、だ、俺たちに合わす顔がなくて雲隠れしているか、だ」
私を不安にさせないよう、ひと際声に力を入れて話す。そんなやさしさが、痛い。
しばらく何も発さない私に、リヴァイはぽりぽりと頭を掻いてチッと舌打ちをする。それがあまりにも懐かしくて。
「俺は最終的にミカサ、お前をエレンに返すはずだった」
「うん」
「その日が来るまでは、傍にいろ」
多分出会ってそんなに経っていない、私たちが調査兵団に入団したころの年齢だろう。彼と私の身長にそこまでの差はない。それが、ちょっと嬉しい。昔は「チビ」と言っていたが、結婚してからは逆がよかったな、なんて思った日も少なくない。彼より小さな体になって、すっぽりと抱きしめられたいと思った夜もある。
「兵…リヴァイ、エレンに会えた日が来ても、手を離さないでいてくれませんか」
リヴァイは巨人でも目撃したかのように目を見開く。
「エレンは命の恩人で、家族で、大切な人。あなたも恩人で…家族、で、大切な人。でも私は、あなたと離れたくない。エレンとは違う、愛、を教えてくれた、人」
若い姿の彼にこんなことを告白する日が来るとは、なんとも恥ずかしい。けど、今言わなければ、いずれ彼は私をエレンの元へ導き、その手を放すだろう。
「・・・いいのか」
「リヴァイこそ、いい、ですか」
その瞬間景色が開け、あの丘の風景が広がった。
目の前には大きなエレンの木。そして土や草に埋もれて小さくなってしまった墓標。
隣でリヴァイも驚いた表情をしている。
「エレン、俺はもう、その場所には行けねぇぞ」
隣で木を見つめながら突然リヴァイが話しかけるように口を開いた。
それに応えるよう、葉がかさかさと音を立てる。
「リヴァイ」
「あぁ。仕方ねぇな」
さすが夫、私の考えが分かったらしい。ため息交じりにそう言うと、再び目線を木に移した。
「エレン、俺とミカサからだ。これが最後だ。受け取れ」
リヴァイが話終わる前に木の根元にリヴァイから貰った花束を置いた。
「「エレン、いつか、また」」
二人声を合わせて最後の言葉をかける。胸がきゅっと締め付けられる。ここに来ればエレンに会えると思っていたのに。もし、生まれ変わりがあるならば、その時にまた会いたい。
丘の風景が遠ざかる。動いていないのに、まるで丘を下りているような感覚だ。
***別バージョン 下書き終わり***
これはこれで書けるかも・・・っと思ってしまった今日この頃。
でもエレンが可哀そうだから、支部で出してるのでよいか、な?
どちらにしても、リヴァミカはエレンが大事(大好き)です。
欲を言えば、支部の、リヴァイと合わせるバージョンとヒストリアと合わせるエレンバージョンの話も書きたかった。