一回だけアキにタバコを吸わせてほしいとねだったことがある。
パワ子ちゃんが夜中に泣いて叫んで暴れるのを俺とアキでどうにかなだめすかして、体力を使い果たしたアイツが眠ったのを見届けて。ふたりでなんとなくベランダに出た。吐く息が白くなり始めた頃だった。
あの頃のアキは、ただでさえ少ない自分の持ち物を整理するのにハマってた。もう使わないもんを捨てたり、あんまり着てないまましまってあった服を俺にくれたりした。
今になって考えりゃ、それが別にマイブームでもなんでもなかったっつーのは俺でも分かることだけど、そん時の俺にはその程度の行動だったし、なんかしゃれた服もらえてラッキー、とかそんな感じのことを思っていた。
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