マリーさんがグレイとライネスとお茶会しようとしている話 その時、グレイは珍しく焦っていた。誰かに相談したくても彼女が一番頼りにしている師匠はマスターと共に出撃最中。
「アッドどうしよう」
カンテラのアッドに尋ねても知らねぇよとバッサリと切られるだけだ。んーっと悩みながら歩いていると曲がり角でどんっと人にぶつかりそうになって一歩下がった。
「わっすいません、あ!」
謝った後に相手がライネスだと気付いた。
「ライネスさん、すいません。お怪我はないでしょうか?」
「いや大丈夫だ。所でグレイどうしたんだ?とても慌てているみたいだが?」
「それがですね……あ!」
悩んでいたことに天恵が浮かんだ。
「あのライネスさんお時間ありますか?」
むしろ暇であってほしいそう願いながらグレイはライネスに尋ねる。鬼気迫った言い方だったのだろう。ライネスが少したじろぎでいるのに、グレイは気付かない。
「あぁ、別に今日は出撃命令も聞いていないが」
「で、では拙と一緒にお茶会に出てくれませんか?」
「お茶会?」
「お茶会です。お願いですグレイさん」
グレイがとても必死だったのだろう。ライネスが少しあっけにとられながら頷いたのを見た瞬間、グレイはありがとうございますといつも以上に大きな声でお礼を言ったのだった。
***
ライネスをグレイにしては強引につれて行ったのは食堂の一角。そこにいたマリーがいたのにグレイは駆け寄る。
「あのすいません急にもう一人一緒に来てしまいまして……!」
「あらあら構わないわ。皆でティータイムした方がずっとずっと楽しいもの」
道中で話していたのでライネスも事情を理解している。
「すまないね、私も噂の王妃のティータイムに参加してみたいとグレイに頼んだからね」
「まぁ噂だなんて、そんな大げさな物ではなくてよ。けど来てくれてありがとうライネス。ティーカップも増やさなくてはね、二人はかけてお待ちになってくださいな」
マリーはそう言うと優雅に歩いて食堂の奥へと消えていく。
グレイは手伝った方がいいのかとおろおろしていたが、ライネスは椅子に座った。
「グレイも座ったらどうだ?」
「で、でも手伝った方がいいかなと」
「多分大丈夫じゃないかな。むしろ手伝いに行ったら待ってていいのにとやんわりと断れると思う」
「そうですか」
「ほら座って待っていることにしようじゃないかグレイ」
「はい、失礼します」
ゆっくりと椅子を引いてからグレイはライネスの横に座る。背筋を伸ばして緊張しているグレイ。
「しかし王妃様の紅茶が飲めるなんてカルデアならではだねぇ」
「一人だと失礼なことをするかもと不安で……ライネスさんが来てくれてよかったです」
「暇だったしね。噂の王妃のお茶会に参加出来るなんて運が良い」
「……ありがとうございます」
ライネスの言葉が本心でも気遣いでもライネスが一緒に来てくれると言っただけでグレイは安心したのだ。何のことと首を傾げている。
「あらあらお二人とも仲良しね」
お盆を手に持ったマリーが戻ってきた。ティーカップが3つとティーポットと砂時計が載せられていた。
「確かあなた達は召喚される前から元々知り合いだったのよね」
「えぇ、まぁ彼女の師匠が我が愚兄の関係からですね」
「お兄様」
「師匠もライネスさんと同じ疑似サーヴァント……諸葛孔明さんです」
「あぁ! 孔明なら知っているわ、招待すればよかったわねぇ」
「えぇ、今度は我が愚兄も連れてくることにしましょう、なぁグレイ?」
ライネスがグレイにアイコンタクトを送った表情は、どこか悪い表情をしていた。グレイの脳内の師匠が苦い顔をしている気がした。だが、マリーの方を見たライネスは可愛らしい笑みに変わっていた。グレイに話を振られて、グレイは逆に慌ててしまう。
「え、あ、はい。師匠もいたら楽しそうですね」
想像する。師匠は苦い顔をしながらも、ライネスから逃げることは叶わず、マリーからも逃れることも出来ずに同席してくれるだろう。
師匠が楽しいと思うかは、微妙だがグレイはその光景を想像するだけで少しだけ(師匠には申し訳ないけれど)実現すればいいなぁと思ってしまった。
「ふふっ、なら次は三人に招待状を送りましょうね」
マリーがとても嬉しそうにしている。近いうちに次回のお茶会が実現してしまいそうな予感だ。
(すいません、師匠)
心の中で謝りながらも、グレイは一人で差そう割れた時よりも次回に楽しみになってしまう。
「楽しみです」
楽しみな気持ちがグレイの口からもこぼれでた。
「そうね。けど、今はこのお茶会を楽しみましょう」
そんなグレイを見たマリーがティーポットを手に取りながら答えたのだった。