今じゃないだろ階段の踊り場に立つ人物に気付いて、エマはぱちくりと目を瞬いた。赤と黒のドレスに、結い上げられた月白色の髪、冠を被った瑠璃色の瞳のその人は、じっとこちらを無表情に見下ろしている。
エマに倣って階段上を見上げたマーサがひそりと囁く。
「エマ、知ってる人?」
「う、ううん。分からないの」
仲間が増えるとは聞いてない。ハンターは新しい人が来るけど、男の人だった筈。踊り場の人物は、多分サバイバーの筈だ。短剣を腰に下げているけれど、その筈。
エマとマーサが見上げる先で、女性はゆったりとした動作で階段を降りてくる。さらさらと衣擦れの音をさせ、目の前まで降りてきた人物に、二人は既視感を覚える。でも近くで見ても、やはり誰かは分からない。
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