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    oio_oi3

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    ⚠️なんでも許せる方向け
    ☑︎平和世界線
    ☑︎先天性女体化夫婦曦澄♀
    ☑︎捏造子有

    #曦澄
    #先天性女体化
    congenitalFeminization
    #先天性女体化曦澄
    #江澄
    lakeshore
    #女体化
    feminization

    I was born (You Are My Sunshine:妊娠中江澄と虞紫鳶、江楓眠夫婦)You are my sunshine

    「産みたいのです」
     己に悪しくも似た意志の強い瞳で娘は言った。今はその気質が憎らしくすらある。
     子を宿してから悪阻はひどくなるばかり。医者に妊娠の中断をすすめられるほど苦しみながら強情を張る娘に虞紫鳶は苛立っていた。
     未だ見たこともない孫と、今目の前で息も絶え絶えの己が産んだ子と、どちらを優先するかなど考えるまでもなく明白だ。
    「阿澄、貴方の命が危険なのよ。これ以上は見過ごせないわ」
     汗で額に張り付いた髪を後ろに流してやれば娘は隈の浮いた目元を細めた。
    「母上」
     か細いながらも芯の通った声だ。
    「母上」
     虞紫鳶がそこにいるのかと、たしかに聞いているのかと確かめるように二度も呼ばれる。愛娘の声をよく聞こうと顔を近付ければ胸元に手が伸ばされた。そのまま病み細った指が力強く衣を掴む。赤子が手に触れたものをその幼い力のめいっぱいで握りしめるように江澄も確かに強く母の衣を握る。
    「母上」
     見開かれた大きな紫紺の瞳は今にも溢れ落ちそうだ。
    「母上」
     何度も、何度も呼ばれる度に江澄の言葉を待つ。しかし彼女から言葉は出ない。昂る感情と相反して口を噤むのは幼い頃からだった。泣き過ぎて赤い顔で涙を流す。
     昔は何故そう口が回らないのだと怒り言うことが纏まるまでそこにいなさいと放っておいたものだ。しかし今となっては小さな頭の中で目まぐるしく考えていたのだろう。小さな口から言葉が紡がれるのを待っていてやれば良かった。江澄の母は自分しかいないのだから。そんな過ぎた時を悔やむ。
    「母上」
     江澄の呼ぶ声に力が宿っている。その一声に全てを込めるような。
    「私は、私が、藍渙の子を産みたいのです」
      膨らんだ腹に手をあて江澄は全身全霊をかけ血を吐くように言葉を吐き出す。
    「藍渙の子がいるのならそれは私の子でないと嫌だ」
     その意志の強い瞳で戯れではないと示す。
    「だが阿澄、お前の命は危ない。今この時もだ」
     江楓眠は常と変わらぬ物分かりのいい顔で幼子に諭すように言う。
    「私達はお前を失いたくない。わかるね」
     江澄は眉を顰めた。涙はもうその青白い頬を伝っている。ひとつゆっくりと瞬いてから父から視線を外す。
    「母上」
     助けを求めるように一層強く胸元の衣を握られる。苦痛に背中を丸めようとして腹を気にして体を思うように曲げられず息を深く吐き出すことで耐える娘の背中を江楓眠が撫でる。
    「先の跡取りの為に阿澄を失えない」
     それを聞いて娘は泣いた。こんなにも泣くのは本当に幼い頃以来だ。
    「どうして」
     小さく呟いた声。
    「私はこの子を産みたい。誰の許可もいらない。私が産む。私の子だ。いらないなんて思わない」

    「父上、どうしてあなたがいらないと言うんですか。この子は私の子です」

    「あなたが私を愛しているというのならそれと同じように私もこの子を愛している。失えない」

    「この子をどうしても諦めろというなら、もしも私の意思に反してそうしたなら私は蓮花湖に身を投げる」
     江澄が必死に言い募るのを虞紫鳶は静かに聞いていた。
    「子を十月十日胎で育てるのは母にしかわからないこと。あなたが私の子であってもあなたの子を諦めろなんて言っていいことではなかったわ」
     江楓眠もようやく思い至り悲痛を噛み締めながら黙る。
    「もし私たちがあなたを失うことになっても」
     意志の強く見返してくる紫紺があまりにも鏡の中の自分に似ていてどうしてこうも似たのかと憎らしかった。
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    takami180

    PROGRESS長編曦澄17
    兄上、頑丈(いったん終わり)
     江澄は目を剥いた。
     視線の先には牀榻に身を起こす、藍曦臣がいた。彼は背中を強打し、一昼夜寝たきりだったのに。
    「何をしている!」
     江澄は鋭い声を飛ばした。ずかずかと房室に入り、傍の小円卓に水差しを置いた。
    「晩吟……」
    「あなたは怪我人なんだぞ、勝手に動くな」
     かくいう江澄もまだ左手を吊ったままだ。負傷した者は他にもいたが、大怪我を負ったのは藍曦臣と江澄だけである。
     魏無羨と藍忘機は、二人を宿の二階から動かさないことを決めた。各世家の総意でもある。
     今も、江澄がただ水を取りに行っただけで、早く戻れと追い立てられた。
    「とりあえず、水を」
     藍曦臣の手が江澄の腕をつかんだ。なにごとかと振り返ると、藍曦臣は涙を浮かべていた。
    「ど、どうした」
    「怪我はありませんでしたか」
    「見ての通りだ。もう左腕も痛みはない」
     江澄は呆れた。どう見ても藍曦臣のほうがひどい怪我だというのに、真っ先に尋ねることがそれか。
    「よかった、あなたをお守りできて」
     藍曦臣は目を細めた。その拍子に目尻から涙が流れ落ちる。
     江澄は眉間にしわを寄せた。
    「おかげさまで、俺は無事だったが。しかし、あなたがそ 1337

    takami180

    PROGRESS恋綴3-2(旧続々長編曦澄)
    転んでもただでは起きない兄上
     その日は各々の牀榻で休んだ。
     締め切った帳子の向こう、衝立のさらに向こう側で藍曦臣は眠っている。
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     いつかの夜も、藍曦臣が隣にいてくれればいいのに、と思った。せっかく同じ部屋に泊まっているのに、今晩も同じことを思う。
     けれど彼を拒否した身で、一緒に寝てくれと願うことはできなかった。
     もう、一時は経っただろうか。
     藍曦臣は眠っただろうか。
     江澄はそろりと帳子を引いた。
    「藍渙」
     小声で呼ぶが返事はない。この分なら大丈夫そうだ。
     牀榻を抜け出して、衝立を越え、藍曦臣の休んでいる牀榻の前に立つ。さすがに帳子を開けることはできずに、その場に座り込む。
     行儀は悪いが誰かが見ているわけではない。
     牀榻の支柱に頭を預けて耳をすませば、藍曦臣の気配を感じ取れた。
     明日別れれば、清談会が終わるまで会うことは叶わないだろう。藍宗主は多忙を極めるだろうし、そこまでとはいかずとも江宗主としての自分も、常よりは忙しくなる。
     江澄は己の肩を両手で抱きしめた。
     夏の夜だ。寒いわけではない。
     藍渙、と声を出さずに呼ぶ。抱きしめられた感触を思い出す。 3050

    takami180

    PROGRESS恋綴3-5(旧続々長編曦澄)
    月はまだ出ない夜
     一度、二度、三度と、触れ合うたびに口付けは深くなった。
     江澄は藍曦臣の衣の背を握りしめた。
     差し込まれた舌に、自分の舌をからませる。
     いつも翻弄されてばかりだが、今日はそれでは足りない。自然に体が動いていた。
     藍曦臣の腕に力がこもる。
     口を吸いあいながら、江澄は押されるままに後退った。
     とん、と背中に壁が触れた。そういえばここは戸口であった。
    「んんっ」
     気を削ぐな、とでも言うように舌を吸われた。
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    「ら、藍渙」
    「江澄、あなたに触れたい」
     藍曦臣は返事を待たずに江澄の耳に唇をつけた。耳殻の溝にそって舌が這う。
     江澄が身をすくませても、衣を引っ張っても、彼はやめようとはしない。
     そのうちに舌は首筋を下りて、鎖骨に至る。
     江澄は「待ってくれ」の一言が言えずに歯を食いしばった。
     止めれば止まってくれるだろう。しかし、二度目だ。落胆させるに決まっている。しかし、止めなければ胸を開かれる。そうしたら傷が明らかになる。
     選べなかった。どちらにしても悪い結果にしかならない。
     ところが、藍曦臣は喉元に顔をうめたまま、そこで止まった。
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