【学パロ】一人の男として 「湊くんと仲良くなりたいんだよね」
「天沢さんからお願いしてくれない?」
そう言われ朱里は「はあ」と曖昧に頷くことしかできなかった。クール、しかし顔がいいことで有名な朱里の後輩である湊康平。学年は違うが文化祭実行委員にたまたま同じ時期でなったことにより朱里は康平と顔見知り、よく話す後輩、くらいの仲になっていた。そしてそのおかげというべきかせいというべきか朱里はこう言った頼み事をされることが増えていた。とはいえ、康平本人がそういうのを嫌うため「康平くんに聞いてみないことには…」と当たり障りのない返答をするしかないのだが。
はぁ、と重く深くため息を吐く朱里を顔色ひとつ変えず康平が見ている。
「元気なさげですね、先輩」
わけを話せば途端に康平は顔を顰めた。
「…またですか」
やんわりとお断りを入れたことを伝えても康平の眉間の皺は解消されない。
「天沢先輩は……、」
そう言って口をつぐみそしてまた康平は開いた。
「俺がそんなこと聞かれて…嫌じゃないんですか」
首を傾げる朱里にため息を吐くのは康平の番だった。
「…だから、だから…俺が、あんた以外の他の女といても嫌じゃないのかって聞いてるんだけど」
思わず語気が強くなる康平だったが言われ、じっくりと朱里は考えそしてぽつりと呟く。
「……ーー嫌かも、しれない」
と。
「…へえ、嫌なんだ?」
何故だか嬉しそうに康平は口角を上げた。
「なんで?なんで俺があんた以外といると嫌なんですか?」
先輩?と康平が聞けば困ったように朱里は視線を彷徨わせた。
「ま、いいや。今日はこれで我慢してあげます」
そう言って康平は朱里の頬にキスを落とす。驚き声も出ない朱里だったおかしそうに康平は笑う。
「あんた気づいてなかった?ただの懐いてる後輩だと思ってた?」
こくこくと頷く朱里をばか、と言って額を小突く。
「あんたのことは好きだけど懐いてるとかじゃなくてこういう意味に決まってんだろ」
言われ朱里は顔を赤くさせる。
「…意識した?」
頷く朱里に嬉しそうに康平は笑う。
「俺、あんたのこと諦めないから」
そう耳元で囁き逃げるように走る康平を朱里は追う。その心臓はバクバクとうるさいほど音を立てていたーー
-Fin-