三途の川を渡れずとも 「凛!」
焦ったような五右衛門の声に思わず顔を上げ、その顔を見てほっと息を吐いた。
「凛、あんた怪我したって…」
「ちょっと足を捻っただけよ。大したことない」
『なんてこと言ってますが、ご主人様歩けないんですよ。だから、段差に座ったりしてるんです』
「Hari!」
『ご主人様が嘘を吐くのが悪いんです』
Hariにバラされてしまい私は黙って睨むことしかできない。
「確かにお嬢は嘘吐きだな。素直に話してくれたらいいのに」
「だって…」
「…心配かけたくなかった?」
「…迷惑でしょ、こんな…」
「まさか。好きな女の助けになることで迷惑なんて思うはずないだろ、むしろ頼ってくれ」
…そう、知っていた。五右衛門がこう言う人だと言うことを。
902