無題「クロ、いるか……って何だコレ」
根地の作業部屋に顔を出したフミは、開口一番そんなことを呟いた。壁際には高く積まれた段ボール、床には何枚もの紙に小道具が。
彼の部屋が散らかっているのはユニヴェールにいた頃からそうだが、今日は特にひどい。足元には無数の台本やらメモやらが転がっていて、入っただけで転びそうだ。
その台本の海を超えた部屋の奥に、根地は座っている。
「やあ、高科氏。僕に何か用かい?」
「よくこんな部屋で作業できるな……入るぞ」
フミは持ち前の体幹を駆使して僅かな足場を踏み中へ入っていく。根地はどうやらこの散らかった部屋で次の台本を書いていたらしく、パソコンには苦悩の跡が見られるメモが大量に貼られていた。
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