ターナーさんの散々な1日 過去編ネロの家は有り体に言えば貧しい家庭だ。唯一の肉親である母親は、昼も夜も仕事に明け暮れているのでネロの生活とはほぼ交わらない。母親にも休日はあるのだろうが、どこで何をしているのかネロは知らない。
ネロがブラッドリーと出会ったのは小学生のときだ。その日のことは今でもはっきりと思い出せる。
夕暮れ時、ネロは公園で一番高い場所―――ジャングルジムの頂点に座って夕日が沈むのを眺めていた。すると、
「おい!」
「……?」
下から声がして、ネロは地面の方を見る。誰かがすごい速さでジャングルジムを登ってくるのが見えた。ネロがいる場所の1段下まで登ってきた少年は、少し怒ったように言った。
「そこは俺様の場所だ!」
どけ、と言いたいらしい。
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