終夜/祝福のつもり 「――ぐっ、ぅ…!」
のしかかる重みと、直後ドッ!と胸にかかる衝撃。ネロ自身の心臓に突き刺さるはずだった魔物の爪は、ネロを正面から抱きしめたブラッドリーの背中に深々と突き立っていた。
「ブラッド……?」
ズッ、ズッとブラッドリーの身体から爪を引き抜こうとする魔物も、そいつが誰かの魔法で吹き飛ぶのも、何もかも音声のないスローモーションに見えた。ネロの耳にやっと音が戻ってきたころ、ブラッドリーの背に恐る恐る回した両手には――鮮血。
「……っ!《アドノディス・オムニス》!!」
フリーズしかけた心を叱咤するように、ネロは呪文を叫んだ。
ブラッドリーが運び込まれた4階の空き部屋の扉を音もなく開き、身体を滑り込ませるように入る。
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